大阪地方裁判所

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 暑くなり、熱中症の危険が高まる中、小学校の校外学習時の水分補給が課題となっている。

 特に低学年は体格が小さいため大容量の水筒を持たせにくく、途中で水筒が空になるためだ。学校の対応を巡り、民事裁判も起きている。(上万俊弥)

 小学校の校外学習では、児童が熱中症となる事故が各地で起きている。

 愛知県豊田市では2018年7月、1年の男児が公園から学校に戻った後に熱中症で死亡した。22年6月にも、福井市で3年の児童20人が熱中症の疑いで搬送された。

 低学年の児童が大きな水筒を持てない場合、教員が予備の飲み物を持参することが多い。大阪市立小学校のある校長は「予備もなくなったら、教員がポケットマネーで飲み物を購入している」と話す。

 児童に現金を持たせ、校外学習中に飲み物を買わせる方法もあるが、NPO法人「日本こどもの安全教育総合研究所」の宮田美恵子理事長は「紛失や釣り銭管理のトラブルなど教員の負担が大きくなる。教員が予備の飲み物を一定量用意しておく対応が有効だろう」と語る。

 事前に対策を検討しても、実際の判断は難しく、大阪府八尾市立小学校では、保護者と学校側の間で民事裁判が起きた。

 市立小の女児とその両親が23年、遠足後に熱中症になったとして、市に慰謝料など220万円の損害賠償を求め、大阪地裁に提訴した。

 4月24日付の判決によると、この市立小では22年5月下旬、1年生の遠足が行われた。女児は小柄で、体力を心配した母親は前日、教員に「水筒のお茶がなくなったら、持たせた現金で飲み物を買ってほしい」と申し出た。教員は「よほどのことがあれば」と返答。その後、校長らと話し合い、女児の様子を見て購入させるかどうか判断することを決めた。

 当日は、学校から遠足先の公園まで電車を利用して移動。歩いた時間は片道で計50分弱だった。

 学校へ帰る道中、教員が水分補給を指示。女児は水筒のお茶を飲んだ後、「お茶を買って」と求めたが、教員は、しんどそうな様子がなかったことから認めなかった。女児は帰宅後、38度の発熱で救急搬送され、熱中症と診断された。

 判決はまず、遠足中の気温が20〜25度を超える程度で、環境省の指標で「熱中症を発症する危険性のある状況」だったと指摘した。

 その上で、学校側が遠足の往路・復路とも、途中で各2回の水分補給を指示し、予備のペットボトル1本を持参していたと言及。女児が飲み物の購入を申し出た際の口調は大きな声でハキハキしていたことも踏まえ、「学校の対応と判断に不合理な点はない」と結論付け、請求を退けた。

 判決後、女児の母親は「同じ事故が起きないよう、子どもの安全にどう向き合うべきか、学校側に考えてほしい」と語り、控訴した。八尾市教育委員会は「当方の主張が認められたと受け止めている」とコメントした。

 この女児が遠足に行ったのは5月だった。

 日本気象協会の泉沢里帆さんは「5月は熱中症に注意が必要な時期」と話す。気温が高くなる日がある一方、体が暑さに慣れていないためだ。適切に水分補給をしながら、軽い運動や入浴で汗をかき、体を慣れさせる「暑熱順化」が重要だという。