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配線と電動ルーフに不調…

「電気系統の交換だけで数千ポンドかかり、ルーフ機構を動かす12本の油圧シリンダーの交換にも同じくらいかかるでしょう」

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英国在住のザグ・ジーさんは、1993年式メルセデス・ベンツ『SL 500』の修理費用について話してくれていたのだが、途中からまるで、まだ何も起こっていないかのように振舞った。筆者は、はっと気付いた。彼の奥様が耳を澄ませているのだ。


ザグ・ジーさんのメルセデス・ベンツSL 500    AUTOCAR

「妻がすぐそばにいるんです」とザグさんは小声で囁き、こう続けた。「でも大丈夫。妻にはバレていますから」

まあ、もし知らなかったとしても、今この記事で知っただろう。

ザグさんが語る愛車の配線交換の話は、文字通り衝撃的だ。一部のR129型SLでは、配線を覆うプラスチックの被覆が生分解性なのだが、彼がその事実に気付いたのは不調をきたし始めた時だった。

「プラスチックが乾燥して脆くなり、ボロボロになっていることに気付いたんです。配線がむき出しで、ハーネスを交換するしかありませんでした」

その後、電動式折りたたみルーフにも問題が生じた。

「12本の油圧シリンダーがルーフを上下させています。開けてみると、中はまるでセントラルヒーティングの配管のようでしたよ。すべてに不具合があり、交換しなければいけませんでした」

「配線とルーフの問題を解決するには費用がかかりましたが、とても満足感がありました」

美しいツートーンボディ

中国で育ったザグさんは、少年時代からメルセデス・ベンツを所有することを夢見ていた。

「わたしは1980年代の生まれで、1993年に英国へ移住しました。当時の中国では高級車を見かけることはほとんどありませんでした。だから英国に来て、ポスターでしか知らなかったクルマたちが目の前にあるのを見た時は、とてつもなく興奮しましたね。『こんなクルマ、一体どうやって手に入れられるんだろう?』と思っていました。そしてようやく手に入れられたんです。今でも夢を見ているような気分ですよ」


ザグ・ジーさんのメルセデス・ベンツSL 500    AUTOCAR

ザグさんのSL 500は、もともと日本で新車登録され、その後シンガポールへ輸出されてから、2015年に英国へと渡った。

「2022年に、走行距離5万6000kmの状態で購入しました」とザグさんは言う。

「それから1万6000kmほど走らせました。これはマイナーチェンジ前のモデルで、フロントに3つずつ通気口があります。わたしは、ちょっと無骨な雰囲気のあるマイナーチェンジ前のSLの方が好きです。わたしのクルマのようにツートーンカラーの個体が多くありました。一見、分かりにくいかもしれませんが、ボディの下半分は少し濃いめのシルバーなんです」

優雅な快速クルーザー

ザグさんはガレージを持たないため、自宅前の路上に駐車しているという。

「冬の間は、保護のためにカバーをかけ、代わりにE39型BMW 5シリーズを運転しています。SLと同様、BMWも日本からの輸入車です。日本の輸入車は、英国のクルマよりも状態が良いので気に入っています」


ザグ・ジーさんのメルセデス・ベンツSL 500    AUTOCAR

「昨年、妻とこのクルマでイタリアまでドライブしました。まったく問題なく、最高のドライブになりました。SLがアウトバーンや欧州大陸の高速道路のために設計されたクルマだと実感できましたね。とても快適で、運転しやすかったです」

彼のSL 500は、最高出力322psを誇る32バルブの5.0L V8エンジンと4速オートマティック・トランスミッションを搭載した後輪駆動モデル。ザグさんは、「パワーはリニアで、急激な加速感はありません」と語る。

「現代の高速道路の流れにも遅れを取らない非常に速いクルマですが、ゆっくり走っても楽しい、非常に品格のあるクルマです」

いつか手放すつもりはないのだろうか? そう尋ねると、ザグさんは一瞬もためらうことなく「絶対に売りません」と答えるのだった。