本を読むのが苦手な文学研究者が愛用する勉強技法。25分集中+5分休憩=30分1セットのポモドーロ・テクニックで勉強量を可視化せよ!
〈今年こそ「勉強を手に入れる」。挫折を繰り返すあなたに贈る、学習の質を変えるための思考のレッスン〉から続く
勉強が続かないのは実は意志の弱さではなく、時間の質のコントロールにあるのかもしれません。文学研究者で、ベストセラー『アカデミックライティングの教科書』(光文社)の著者・阿部幸大さんが推奨するのが、25分集中+5分休憩=30分のサイクルで知られるポモドーロ・テクニック。集中するための方法論としてのみならず、「自分の努力を正確に記録する道具」としても優れている、と語ります。
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「勉強を手に入れたい」、そう願う人の背中を後押し、着実に階段をのぼるための心構え・道具立てを可能にしてくれるエッセイ連載。初回スタートです。
※本連載は『勉強を手に入れる』と題して書籍化される予定です
リアルな勉強量が記録によって可視化される
ポモドーロ・テクニックという勉強法があります。
一般的には、25分間勉強や仕事に集中し、5分休む、この30分サイクルをまわすというものです。このテクニックのポイントは、疲れるまえに強制的に休憩を挟むことで、ぶっ通しで作業をするよりも長く深い集中を可能にする、ということにあります。
ポモドーロ・テクニックは、生産術のテクニックとして、もっとも有名なもののひとつでしょう。
このポモドーロ・テクニック、うまく使える人はそれで何時間も作業できるのだと思いますが、わたしは集中力の欠如ゆえなのか、理由はわかりませんが、これを使っても、連続した仕事は4セット2時間が限界です。そのくらいなら、ポモドーロなしでもやれるっちゃやれます。
にもかかわらず、このポモドーロ・テクニックを、わたしは長年愛用してきました。
なぜか。
それは、記録に便利だからです。
ポモドーロ・テクニックを使う際の注意点は、「25分は決めた作業に集中する」こと、そして「休みの5分はなにもしない」ことです。
たとえば「この本を読むぞ」と決めたら、25分間はPCもスマホも、あるいは窓の外すら見ずに、本を読むことに全神経を集中する。逆に、休みの5分は、その本をいっさい読まない。きっぱり切り上げて、強制的に休む。
これはわたしが考えたのではなく、ポモドーロ・テクニックの一般ルールなのですが、これがじつは非常に便利なのです。

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このような性質ゆえに、ポモドーロの25分は、純粋に「この本を読んだ時間」として計上可能になります。それゆえ、スマホをちらちら見ながらだらだらと勉強した場合と違って、「リアルにどのくらい勉強したのか」を正確に数字で把握できるんですね。
本を読むのが苦手なら、継続可能な目標を立てればいい
では、記録しやすいと、なにが良いのでしょうか。
これがタイトルにあるもうひとつのキーワード、「日記」と関係してくるのですが、そのまえに、ちょっと脱線させてください。
わたしは本を読むのが苦手です。活字を目で追うのも苦痛だし、長い時間を読書に費やすのは、海外旅行とならんで、人生でいちばんやりたくないことのひとつです。
しかし、わたしは研究者という職業柄、たくさん本を読まねばならないタイミングがあります。学生時代にも大学のカリキュラム的に猛勉強を強いられた時期がありますし、いまでも、論文執筆のためにガーッとやる期間がある。
そういう「辛いけど頑張らないといけない」とき、わたしは、がむしゃらに頑張るということは絶対にやりません。なぜなら、そのように目標を雑に設定すると、自分が「頑張った」のか「頑張らなかった」のかの判断が曖昧になり、ちょっとした失敗で自己評価がブレて、気分に影響してしまうからです。
ではどうするか。「確実に達成可能な目標」を立てるのです。
アメリカに留学していたころ、博士課程の3-4年目に、大量に研究書を読まねばならないことになりました。こうなることは留学前から知っていて、わたしは「ついに来たか」という感じでこの困難に立ち向かいました。
アメリカの博士課程は2年で授業が終わるのですが、わたしは3年目以降も幸いにしてティーチングの義務を免除されており、この頃はコロナまっさかりだったこともあって、ガチでヒマでした。
にもかかわらず、わたしは、たとえば「10時間読む」とか「1日1冊」といった目標は立てなかったのです。なぜなら、これだと、できない日が間違いなく出てくるからです。10時間が長すぎるのもそうだし、本の硬軟に応じて読めるペースは変わります。いつか確実に失敗する。
目標を立てて失敗すると、自分を責める気持ちが出てきてしまう。それだと長続きしません。安定もしない。2年というのは長期戦ですので、継続可能性が最優先事項です。気まぐれでうまくいった日に10時間ドカンと勉強するよりも、習慣づくりが鍵になる。
そこでわたしが立てた目標は、「2時間」でした。それで、その日のノルマはクリア。その2時間で100ページ読もうが、2ページしか読めなかろうが、関係ありません。計測は時間で統一してしまう。
当時、わたしはこの4セット2時間を、午前中に終わらせていました。じっさいは、そのあと午後に勉強しないわけではないのです。ただし、それは、やってもやらなくてもいい。1日の最低ラインは2時間。あとは自由。この死守なら、当時のヒマな自分になら、確実に達成できました。
高い目標を立てる前に「自己評価」を修正せよ
この背景には、自分の失敗経験があります。
わたしは浪人時代、朝6時に起きて、毎日10時間勉強するという目標を立てていました。12時間だったかもしれません。まぁともかく、それを達成できたことは、1日くらいはあったかもしれませんが、ほぼ皆無でした。
いま考えれば、そんなんおまえにできるわけねーだろ、という感じですが、当時の自分は「それくらいやらないとダメだ」と焦っていたのです。
で、問題は、そうやって高い目標を立てては失敗し、その失敗で、たえず自分を責めてしまっていたことです。浪人時代はわたしにとって、勉強そのものよりも、この自責がキツかった。
「東大に入るぞ!」みたいな大目標はいくら無謀でもいいのですが、その達成には日々の小目標をこなすことが必要で、こっちはもっと具体的である必要があります。それを10時間に設定してしまった。そして、失敗しても、「でもやらなきゃ」と思い込んで目標の修正ができなかった。
わたしは当時の自分の失敗の原因を、「目標が高すぎた」というふうに分析していません。この問題の本質は、「自己評価が高すぎた」ことにあると思っています。
なんども高い目標を立てて失敗しつづけるということは、「いまの自分にはその目標を達成する能力はない」という明白な現実を直視できていないことを意味します。
当時のわたしは、「俺にはできるはずだ」と思い込みつづけてしまった。「できるわけないのに」ではなく、じっさい「ずっとできていない」という厳然たる事実があったのに、やっぱり変えられなかったのです。
上記の経験から学んだことは、目標のまえに、まず自己評価を修正することでした。
自分には10時間は無理。では、どのあたりなら自分にもコンスタントに達成可能なのか。では、10時間で失敗していたころ、浪人時代のわたしは、実質的に毎日どのくらい勉強できていたのでしょうか?
そう、正確にわからないのです。
ここに、勉強時間を純粋に計上できるポモドーロのメリットがあります。それは、現時点での日々の達成度を正確に把握し、そのうえで適切な目標を設定・修正することを可能にするツールなのです。
日々の記録を日記につければセルフ・モニタリングが可能に
さて、脱線が長くなりました。じつは、ポモドーロの本領発揮は、ここからです。
そもそも、浪人時代のわたしも留学時代のわたしも、ずっと1日2時間の勉強では困るのでした。じっさいは、もうちょっとやらないといけない。では、どうやって増やすか。
ポモドーロ・テクニックを用いると、たとえば2時間という最低ラインから、1セット、2セットと、すこしずつ増やしてゆくことが容易になります。なんといっても1セット30分(25分)という手軽さがいい。「今日はあと1セットやっちゃおうかな」というモチベーションもわきやすいです。
それはそうなのですが、そんなことはみなさんわかっていると思います。
ここで提案したいのは、その日々の記録を日記につけることです。
留学時代のわたしは結局、2時間の目標達成が安定して、すぐに午後にも4セット2時間の勉強を追加して、4時間を基本セットにしていました。どの日も午後に4セットはやれていたからです。これでもまだヒマでしたが、これ以上ノルマを増やすことはしませんでした。
「日記」と言っても、その日の出来事について感想を述べるわけではありません。何時から何時までなにをしていたかを記録するだけです。
ざっくりでいい。何時に起きて、何時から何時まで勉強して、何時に寝たか。ほかの細かい行動はどうでもいいのでスルーです。
このように記録していたので、わたしはポモドーロの開始時間をつねに00分か30分に決めていました。こうすると日記が書きやすいほかに、もうひとつ利点があって、わたしは作業中にタイマーが視界に入ると気が散るのですが、開始時間を時計にあわせると、チラっと時計を見るだけで残り時間がわかるからです。
おまけ。日記に感想は要らないと書きましたが、ただし、その日の調子のようなことは簡単に記録するといいです。なぜなら、記録してゆくと、4時間の日があったり、8時間の日があったりするわけですが、そこで8時間できた調子のいい日はなぜ調子がよかったのか、その条件を前日の行動などから推測できるかもしれないからです。
ポモドーロ・テクニック。その本質は、作業を時間に換算し、かつ30分という単位を固定することで、計上を可能にすることにある。そして、それを日記として記録することで、リアルなセルフ・モニタリングが可能になる。
今回はそういうお話でした。
(阿部 幸大)
