宮内庁の公式インスタグラムより

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「皇室って、結局いくら税金を使っているの?」この疑問は、皇室に関心がなくても一度は耳にしたことがあるはずだ。

豪華な儀式に、広大な皇居。日常生活ではまず想像しない世界がそこにある以上、「相当なお金がかかっているのでは」と思うのも無理はない。

しかし、皇室のお金を正しく理解するには、「ざっくり大金」というイメージをいったん横に置く必要がある。実際の皇室のお財布事情は、法律と制度にがっちり縛られ、かなり細かく管理されている。数字を追ってみると、その実像が見えてくる。

令和6年度(2024年度)の皇室費は、約101億4200万円だ。これは国の一般会計の中に含まれ、国会で審議・決定される、れっきとした予算である。ただし、ここで誤解しやすいのが、「この100億円がすべて皇族の生活費」という見方だ。実際にはそうではない。皇室費は、性格の異なる三つの財布に分かれている。

天皇・皇后両陛下らの日常生活に使われる「内廷費」

もっとも注目されるのが内廷費だろう。これは天皇・皇后両陛下、上皇・上皇后両陛下、そして内廷に属する皇族(愛子内親王が該当)の日常生活に使われるお金だ。

金額は年額3億2400万円。実はこの金額、1996年度から約30年近く一度も変わっていない。5人分の生活費、衣類費、食費、私的な交際費、研究活動、宮中祭祀に関わる費用など、すべてここから賄われる。単純計算すると、一人当たり年間6000万円強になるが、ここには住居費は含まれない。皇居や御所は国有財産で、家賃という概念がないからだ。

一方で、警備費、建物の維持管理、職員の人件費なども含まれない。あくまで「生活の中身」に限定されたお金だと考えた方がいい。

なお、内廷費は支給された時点で「御手元金」となり、宮内庁の経理からは外れる。使途の詳細を一つひとつ公表する義務はなく、所得税も課税されない仕組みになっている。

宮家に支給される「皇族費」

次が皇族費だ。これは天皇家以外の皇族、いわゆる宮家に支給されるお金で、「皇族としての品位保持のための費用」と位置づけられている。令和6年度の皇族費総額は約2億6400万円。皇族の人数や構成によって変動するが、これも法律に基づいて算出される定額制だ。

例えば、秋篠宮家は4人家族で、令和6年度は約1億2250万円。常陸宮家は約4575万円、高円宮家は約3690万円といった具合に、家族構成で差が出る。

一人あたりに直すと決して少額ではないが、ここから衣装代、公務に付随する準備、職員的な補助費用などを賄う必要がある。皇族は職業を自由に選べず、副収入も原則として得られないため、活動資金の性格が強い。

儀式、祭祀、管理費、電気代など9割以上を占める「宮廷費」

皇室費の中で最も金額が大きいのが宮廷費だ。令和6年度は約95億5400万円。皇室費全体の9割以上を占める。この宮廷費は、完全に「公のお金」である。具体的には、国賓・公賓の接遇、宮中の儀式、祭祀、外国訪問、地方訪問(行幸啓)、皇居や御所、庭園の維持管理、文化財、美術品の保存、皇居の電気代や修繕費に使用される。

例えば、皇居の電気代だけで年間約7億円規模になることも報じられている。

ここまで見てきた皇室費約101億円に加え、宮内庁の運営費がある。令和6年度の宮内庁運営費は約119億5700万円で、その大半は職員の人件費だ。さらに、警察庁予算に含まれる皇宮警察費が約83億円。これらを合算すると、いわゆる「皇室関連予算」は年間約300億円規模になる。

もっとも、この金額には警備、行政、施設管理といった国家機能の一部が含まれている。皇族個人が自由に使える金額とは、まったく別物だ。300億円という数字だけを見ると、大きいと感じる人も多いだろう。一方で、国家予算全体が100兆円を超える中では、割合としては0.03%にも満たない。

皇室のお金をどう評価するかは、価値観の問題でもある。ただ、数字を追ってみると、「無制限に贅沢をしている存在」というイメージが、かなり単純化された見方だということは分かる。

皇室は「日本の象徴」という役割を果たす代わりに、自由な経済活動や職業選択を大きく制限されている。その中で維持される制度として、今の皇室のお財布事情がある。感情論だけでなく、数字や仕組みを知った上で考える。それが、皇室という存在を現実的に理解するための、いちばんの近道かもしれない。

文/志水優 内外タイムス