子どもが突然「キレる」のはなぜか…「愛着障害」の専門家が解き明かす”急に暴力的になる”深い理由
「暴言、暴力をくりかえす」「構うと要求がエスカレート」「注意すると逆ギレ」「褒めたのに怒る」そんな手ごわい“不適切行動”をする子が激増している。その原因が「愛着障害」にあることをいち早く指摘したのが、米澤好史氏だった。わかりにくい「愛着」の概念から、独自の愛着障害論、そして効果的な支援の方法まで、渾身の力で書き切った新刊『愛着障害スペクトラム こどもの気持ち&支援スキル大全』より見どころを抜粋して紹介する。
急に暴力的になり収拾がつかない
【急に暴力的になった子の気持ちを漫画で読む】
子どもの気持ち→急激に嫌な気持ちになって大混乱
突然起こる攻撃行動なので、以前、これを衝動的攻撃と捉えて、ADHDの特徴と誤認するケースが専門家も含めて多かったのですが、よく見ると衝動的攻撃行動とは全然違う特徴を確認できます。
激しい攻撃行動が急に始まり、それが比較的長時間(平均30分くらい)持続する、しかも止めようとするとかえって激しさを増す……というのは、ASD+愛着障害タイプに特徴的な行動のひとつです。
攻撃の対象は人だけではなく、モノであることもあります。以前、嫌な目にあわされた人が眼鏡をかけていたことから、眼鏡を見ると誰かれなしに眼鏡を集中攻撃してしまうというこどもや、黄色い服を着ている人を誰かれ構わず攻撃してしまうこどももいました。
こども自身は、急激にわきあがる嫌な気持ちに突き動かされ、なぜ・何をしているのか、混乱してわからないまま攻撃に及んでいるのですが、よく観察してみると、次のような特徴を見つけることができます。
●フラッシュバック的
攻撃が「フラッシュバック的攻撃」であること、これが第一の特徴です。フラッシュバックとは、あるきっかけで、過去の嫌な出来事や感覚が、それを今まさに経験しているかのように、ありありとよみがえる現象です。
フラッシュバックを経験している瞬間、こどもは冷静な判断ができません。このため、初対面の人が攻撃行動の被害を受ける場合もあります。
大人の「ダメ!」という言葉、呼び方、友達につけられたあだ名などに強い拒否感があるこどもは少なからずいますが、たとえば「ダメ!」という言葉にトラウマがあり、強く嫌っている子がいたとしましょう。すると、初対面の人がうっかり「ダメ!」と言ったせいで、そのこどもが何の前触れもなく攻撃行動に出る場合があります。
周囲からは、何の脈絡もなくいきなり攻撃が始まったように見えます。しかし、こども自身は嫌なことを経験しているのと同じ状態にあるため、よく観察すると攻撃行動の前後で表情が一変しているのがわかるはずです。
そのような表情の急激な変化が、ASD+愛着障害タイプの攻撃行動か否かを見分ける手がかりになります。
●執拗
特定の対象にくり返し行われる「執拗な攻撃」である点も、ASD+愛着障害タイプの攻撃行動の特徴です。攻撃そのものも単調であることが多く、「頭を何度も打ち付ける」「ペンでつつく」などが延々続くこともめずらしくありません(常同行動的攻撃)。
モノが攻撃の対象になることもある、と書きましたが、こどもが壁を傘の先端で何度も突き続けたため、ついに穴が開いてしまったケースもありました。そのくらい執拗に同一対象に反復的な攻撃をし続けてしまうわけです。
●パニック的
いったん始まった攻撃を周囲が止めようとすると、暴れ方・泣き方がひどくなる「パニック的攻撃」である点も特徴です。さらに、あるリズムやテンポを何度もくり返すような泣き方(うなり泣き、カエルの声泣き、と呼ぶ人もいます)になっていることや、同じフレーズをくり返し発しながら泣いていることもあります。
教育現場、支援現場では、やむをえず大人が数人がかりで抑えようとすることもありますが、かえって収拾がつかなくなり、こどもが失禁したり、手あたり次第モノを投げ始めたりと、混乱を深めてしまう場合が少なくありません。
このタイプの攻撃行動が起こってしまい、制止する必要がある場合は、正面からではなく必ず背後や横からこどもを優しく抱えて止めてください。また、逸らす支援や攻撃行動へのかかわり方で、こどもの意識を他へ向けさせる試みをしてもいいでしょう。
見分けるポイントは「攻撃対象」と「表情」
ASDの易怒性(怒りっぽいこと、易刺激性とも言われる)、ADHDの衝動性、あるいは反抗挑戦性障害などによって、このような突発的で激しい攻撃が起こると判断する専門家もいますが、こうした捉え方は誤りです。
ASDやADHDの特性は、直接的には攻撃行動に結びつきません。愛着障害が併存しており急激に嫌な感情がわきあがってきたから起こる(つまり、感情に原因がある)攻撃行動なのだと捉えるべきです。
感情は顔にあらわれます。したがって、こどもの表情と攻撃対象に着目すると見分けやすくなります。たとえば、他の子には何もしないのに、特定の子を見ると表情が急に険しくなり、殴りかかってやめようとしない……という場合は、攻撃行動が感情によるものであり、ASD+愛着障害タイプに特徴的な攻撃行動だと解釈できます。
ポイントは突発性とこどもの表情です。衝動性が原因であれば、他の子が攻撃の対象になる場合もあるはずですが、そうではなく、かつ表情が変化することから、感情がかかわっていると判断できるわけです。
止めると激化する原因は自己防衛と焦点化
どんなに止めても攻撃行動がやまないのは、嫌な感情から離れられず、暴れ続けたり、さらに泣き喚いたりすることで手が付けられない状態をつくり、それによって自分を守ろうとしているからです。
攻撃しながら、「ときどき大人を見る」「威嚇する・攻撃する」こどももいますが、これは大人に注目してもらいたいという気持ちからくるアピール行動です。
攻撃行動の原因が感情にあることは前述のとおりですが、ASDを併せ持つ子は、ある感情にとらわれると、なかなか切り替えられなくなります。これを「焦点化」と呼びますが、その焦点化に〈責められたくない〉という自己防衛の欲求が加わることも、攻撃行動がやまない原因になっています。
ASD+愛着障害タイプに特徴的な攻撃行動は、「無秩序な時間」に起こりやすいという特徴もあります。無秩序な時間とは、たとえば次のようなタイミングです。
・保育所、幼稚園などで……給食の用意の時間、自由遊びの時間
・小学校、中学校などで…… 朝の時間、昼休憩、掃除の時間、体育の着替え、班活動の時間、総合学習の時間、書道、音楽、図工、教室移動
こういった時間帯には、こどもの裁量でしていいことが一時的に増えます。すると〈何をしていいかわからない〉〈〇〇をしたいけど、(たとえば他のこどもが邪魔で)できない〉など、不安などのネガティブな感情が生じやすくなります。現実と欲求が一致せず、感情が強く揺さぶられるため攻撃行動が誘発されることがあるのです。
