青森県弘前市の築100年超の蔵を改装したカフェ&バー「FILLS CAFE」

 近代建築が数多く残る城下町の青森県弘前市に昨年末、築100年超の蔵を改装したカフェ&バー「FILLS CAFE」がオープンした。オーナーは東京から移住したミュージシャン、足達豪成さん(36)。こだわりの音響や味を通じて「たくさんの人であふれ、心が満たされる場所にしたい」と話す。(共同通信=飯野隼人)

 弘前市は大正・昭和の雰囲気が色濃い喫茶店が活況で「コーヒーの街」としても知られる。足達さんの店は、藩政時代から名が残る在府町の住宅街の一角にある。

 玄関を除けば外観は完全に「蔵」だ。入店すると、軽快な音楽とほのかな香りに迎えられた。店内には1950〜60年代に映画館で使われたというスピーカーが備わり、イベントで実際にDJが使うターンテーブルが古いたんすの上に置かれる。個性を随所に、レトロな空間に落とし込んだ。

 東京都内で5年ほどバリスタをしていた経験があり、名産として知られるグアテマラのコーヒー豆を自ら仕入れて自家焙煎で提供する。

 大阪府出身。20代前半から音楽活動を続ける。妻の地元の弘前市を訪れるたび、古さを残した静かな街並みにひかれた。「東北といえば港町。そんなイメージが変わった」と足達さん。子どもが生まれ、意を決して昨年秋に移住した。「得意なことをしよう」と、カフェの開店を決めた。

 物件の蔵はインターネットで偶然見つけた。上下水道の整備や採光のための改装はしたものの、分厚い観音扉や太いはり、板間はほぼそのまま残し、改装で外した床材も手すりなどに再利用している。移住前、若者が集まれる場所がないと気になっていた。「その日、出会った人たちがコーヒーやお酒、音楽を通じて仲良くなれる。そんな店にしたい」と話す。

 都会にはない人々の温かみも感じる。雪かきをしていると、声をかけていたわってくれた。客に「蔵が残ってくれてうれしい」と言われたこともある。「弘前の歴史を自分も守る」。新たな市民として意気込んだ。

「FILLS CAFE」に備えられた1950〜60年代に映画館で使われたというスピーカー(左)とDJが使うターンテーブル=青森県弘前市

青森県弘前市に移住し「FILLS CAFE」をオープンした足達豪成さん