「ナフサ価格、最悪2倍に高騰も」⽯油化学製品買い占めに⾛る消費者の不安⼼理をどうしたら押さえ込むことができるのか

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米・イランの一時停戦で、楽観ムードが広がっている。日本では、政府の価格補助策のため、ガソリン価格は低下し、危機感を持つ人は少数派だ。

しかし、停戦交渉は早くも行き詰まっている。とくに問題となるのは、プラスチックなどの原料となるナフサの不足だ。価格は2倍になるとの見方もある。買い占め需要をコントロールする政策が必要であり、その具体的な内容を詰める必要がある。

ナフサの供給不足

石油を精製したガソリンや軽油は、乗用車やバスなどの燃料になる。

政府はレギュラーガソリンの全国平均小売価格を1リットル170円程度に抑えることを目標に、3月19日から石油元売り各社への補助金支給を開始した。その結果、ガソリンの全国平均価格は、大幅に下落した。

ガソリンは一般の人々が直接に使用する製品なので、関心が集まりやすい。だから、価格を補助する政策は、政治的な人気とりのために必要なのだろう。

しかし、原油の供給難で問題になるのは、ガソリンだけではない。ナフサが問題だ。

ナフサは、プラスチック製品の原料となる。ペットボトルや食品包装、衣料、自動車部品など。医療では、注射器や点滴バッグ、手術用資材、カテーテル、透析回路などに欠かせない。

介護施設で日々使う手袋やエプロンなどの原料でもある。1次産業では、農業用ハウスの資材や漁船で必要だ。

日本は国内消費量のおよそ4割のナフサを中東から輸入しているが、情勢の悪化が続き、供給不足が懸念されている。

韓国では買い占め騒ぎ

ソウルでは、3月下旬に有料ゴミ袋の買い占めがおきた。このため、スーパーやコンビニエンスストアで1人当たりの購入枚数を制限している(「韓国首相、ナフサ不足で買い占めに厳しく対処 『食料供給に脅威、ナフサ高騰』」日本経済新聞、2026年4月8日)。

金民錫(キム・ミンソク)首相は「包装材の需給不安で食料の供給まで脅かされている」と指摘した。ナフサを使わない包装材を普及させるための支援策を速やかに講じるよう関係各省に指示した。医療などへの供給を優先し、また、買い占めや偽情報の流布などを取り締まる。

市場の秩序を乱す行為には例外なく厳しく対処すると強調し、「偽情報で不安をあおり、買い占めによる共同体の利益にならない行為は徹底的に阻止する」と述べた。

日本では、首相が「4ヵ月分を確保」と説明

日本では、高市早苗首相が4月5日、ナフサについて「少なくとも国内需要4ヵ月分を確保している」と自身のX(旧ツイッター)に投稿した。

(1)調達済みの輸入ナフサと国内で精製したナフサが2ヵ月分、(2)ナフサから作られる中間段階の化学製品の在庫が2ヵ月分。あわせて国内需要の4ヵ月分があるとの説明だ。さらに、今後は中東以外からの輸入を倍増させるとした。このため、「ただちに供給には影響しない」としており、不安払拭に努めている。

しかし、アメリカとイランの停戦交渉の行方は、見通せない。両者の隔たりは大きく、ホルムズ海峡閉鎖が長期にわたって継続する可能性は高い。

中東情勢が長期化した場合の影響は未知数だ。実際、次項で述べるように、すでに日本でも、ナフサ価格の今後かなりの上昇が見込まれている。

減産で価格上昇

三菱ケミカルや三井化学などの石油化学大手は、ナフサからつくる基礎化学品エチレンの減産を3月上旬から続けている(「中東原油頼み 日本の現実」朝日新聞、4月9日。FNNプライムオンライン、4月9日)。

1〜2月に1キロリットル当たり6万2000円台だった国産ナフサの価格は、4〜6月に11万円を超えるとの見方もある。

それを受けて、最終製品も値上がりする可能性が高い。既に化学メーカー各社は、ナフサ価格の上昇分を「自助努力のみで吸収するのは困難だ」として値上げを相次いで公表している。値上げ幅は20、30%以上の品目もある。

塗料大手の関西ペイントは、自動車や建設などに使われるシンナー製品の原材料の確保が極めて困難で、現行の出荷数量や取引条件の維持が不可能な状況だとして、2日から、前年同月の実績を上限とする出荷制限を始めた。製品価格も13日の出荷分から50%以上引き上げるとしている。

ゴミ袋やレジ袋などをつくる日本サニパックは、5月下旬から、取り扱う全商品を30%以上値上げすると発表している。7日には、通常の量を上回る大きな注文は遠慮して欲しいとのお願いも出した。

このように、大型値上げが一斉に始まった。

ガソリンは消費者が直接使うものなので、政治的には、ガソリン価格引き下げが歓迎される傾向がある。しかし、不要不急のガソリン消費は抑制する必要がある。

こうした事態を前に、経団連の筒井義信会長は、2026年4月6日の会見で、「長期化を想定した場合の次の打ち手として、需給両面で、総合的な検討を急ぐべき」だとしている。日本商工会議所の小林会頭も、4月2日の会見で「国民に節約をお願いする局面は来ると思う」と述べた。

高市首相は、4月2日、「あらゆる可能性を排除せずに、臨機応変に対処する」と述べた。

買い占め需要にいかに対処すべきか?

以上で述べた問題への対処としてまず考えられるのは、原油から生産されるガソリンの量を減らし、ナフサの生産を増やすことだ。しかし、原油を精製すると、ガソリン・ナフサ・軽油・重油などが同時に生産される。そして、この比率はある程度は変えられるが、短期的には大きくは動かせない。だから、「ガソリンの生産を減らして、ナフサの生産を増やす」ということは、事実上、できない。

ナフサ市場の問題は、ナフサ製品の価格高騰が予想されると、不安心理で買い占めが生じ、それが価格をさらに押し上げることだ。

こうした問題は、新型コロナ禍の2020年にも「マスクの買い占め」として生じた。そして、これに対して「アベノマスク」と言われたマスクの配布が行われたのだが、これが有効だったとは思われない。

今回のナフサ問題に対して、政府は、買い占め需要をコントロールするため、価格が一定以上に上昇しないよう、価格補助金を出すことが考えられる。

具体的には、つぎのとおりだ。

(1)ガソリンに対する価格補助は、中止する。これによって、不要不急のガソリン需要が減少することを期待する。なお、困窮世帯に対しては、直接に給付を支給する。

(2)ナフサ関連品については、価格の上限を定め、これを超えた場合に、政府は生産者に補助金を給付して、市場価格が上限を超えないようにする。これによって、買い占めを防止する。

ただし、単純な価格抑制策は、需要を刺激し、かえって需給の逼迫を悪化させる可能性もある。適切な対策を見出すのは、決して簡単なことではない。前述の韓国の事例も参考として、さらに検討することが必要だ。

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