「ブッダボット」について語るブータン中央僧院のチョテン・ドルジ事務次官=2026年1月、ティンプー(共同)

 ヒマラヤの仏教王国ブータンで、人工知能(AI)がブッダの言葉を使っていつでもどこでも悩みや相談に答えてくれる自動対話システムのチャットボット「ブッダボット」が活用されている。開発したのは寺の住職も務める京都大教授ら。宗教に先端技術を融合し、仏教離れを食い止めたい狙いもある。(共同通信ニューデリー支局=岩橋拓郎)

 1月下旬、首都ティンプー。中央僧院のチョテン・ドルジ事務次官がパソコンでブッダボットのサイトを開いた。「他人に嫉妬しないようにするにはどうしたらいいですか」。質問を入力すると、数秒後に答えが表示された。「最終的に自分が苦しむことになるため、ダンマパダ(経典の一つ)の教えに従い、心の浄化と慈愛の実践を心がけることが大切です」

 ブッダボットは京都大の熊谷誠慈教授(45)の研究室とAIスタートアップ「テラバース」(京都市)が開発した。仏教学が専門の熊谷教授は「ブッダと対話できたらいいな」との思いで開発に当たった。

 きっかけは2014年ごろ、寺の知人から「衰退気味の日本の仏教を何とかできないか」と相談されたこと。2040年に3割の寺が消滅するとの推計もある。周囲と議論する中で、19年に対話型AIのアイデアが浮上。生身の僧侶にはしにくい相談が可能で、僧侶不足を補うことも期待できる。

 Q&A形式で学習させた経典の文言を回答する非生成系の旧式が2021年に完成。回答が簡潔で物足りず、2年後に生成AI「チャットGPT」を応用、解釈や追加説明も提供する新型「ブッダボットプラス」を開発した。

 旧式でも反響があった。2022年に開かれた密教の学会でブッダボットを発表すると、中央僧院が「ぜひ取り入れたい」と強い関心を示した。2025年に導入され、現在は僧侶ら約450人が試用する。

 ドルジさんは「理にかなっていて理想的。ブッダボットは真実であり、決してうそをつかない」と評価。利用者数を増やしていく意向を示した。

 熊谷教授によると、開発当初は「AIを宗教に使うとは許し難い」との厳しい声も日本にあったが、AIの普及とともに前向きな意見が増えてきた。スリランカ、タイの仏教界も導入に関心を寄せている。

 課題もある。事実に基づかない回答をする「ハルシネーション(幻覚)」だ。経典の文言だけを示す部分とチャットGPTの解釈部分を分けて表示する対策を施したが、利用者側の知識や判断力も求められる。

 熊谷教授は今年2月、ブッダボットプラスを搭載した人型ロボットを開発したと発表した。「AI活用で仏教のポテンシャルを最大限に発揮できる」と今後の進展に期待を寄せた。

AIがブッダの言葉で回答する「ブッダボット」の画面=2026年1月、ブータン・ティンプー(共同)

「ブッダボットプラス」を搭載した人型ロボット(右)と向き合う京都大の熊谷誠慈教授=2026年2月、京都市(熊谷教授提供・共同)

ブータン・ティンプー、ヒマラヤ山脈

取材に応じるブータン中央僧院のチョテン・ドルジ事務次官=2026年1月、ティンプー(共同)

「ブッダボット」を発表した(右から)京都大の熊谷誠慈教授、ブータン中央僧院のチョテン・ドルジ事務次官ら=2025年2月、京都市(熊谷教授提供・共同)