悲報。30万人に健康指導・診療してきた医師が指摘する「日本人は、いくら頑張って筋トレしても、やせ体質にならない」。その納得の理由

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「太り気味だから、ごはんをお茶碗半分にしているのに痩せない」「血圧が高いから塩分を控えるように家族に言われた」……こんな経験がある方、少なくないのではないでしょうか。実はそれ、日本人に合っていない健康法かもしれません。

同じ人間であっても、外見や言語が違うように、人種によって「体質」も異なります。そして、体質が違えば、病気のなりやすさや発症のしかたも変わることがわかってきています。欧米人と同じ健康法を取り入れても意味がないどころか、逆効果ということさえあるのです。

こうした、見落とされがちだった「体の人種差」の視点から、日本人が病気にならないための健康法を、徹底解説してロングセラーとなった『欧米人とはこんなに違った日本人の「体質」』が全面改訂されて、『最新 欧米人とはこんなに違った日本人の「体質」』として新たに刊行されました。本書は発売即重版となるなど、大きな話題を呼んでいます。

新型コロナの流行をはじめ、旧版刊行からのおよそ10年のあいだの医学・健康をめぐる新知見をも取り込んだ本書。今記事シリーズでは、この『最新 欧米人とはこんなに違った日本人の「体質」』から、とくに注目の話題をご紹介していきます。

抜粋記事第1回は、グルテンフリーとスムージーを例に、「良くないと思われているもの」「ヘルシーと思われているもの」の意外な盲点についてお伝えしました。第2回では、日本人の体質と筋肉トレーニングについて解説します。

*本記事は、『最新 欧米人とはこんなに違った 日本人の「体質」』(ブルーバックス)を再構成・再編集したものです。

日本人にとっての、筋トレの問題

ジムに通う人が増えています。

大きな負荷をかけて瞬間的に力を入れるダンベル体操やスクワット、腕立て伏せなどの筋力トレーニングは無酸素運動とも呼ばれ、筋肉がつくと基礎代謝量が上がることがわかっています。

基礎代謝とは、心も体も安静にしているときに消費する必要最小限のエネルギーのこと。無酸素運動を実施すると、その後、約48時間にわたって基礎代謝が高い状態が続くことから、「筋力トレーニングで“やせ体質”になれる!」と言われるようになりました。

しかし、理屈どおりにはいかないものです。問題は、日本人は欧米人と違って簡単に筋肉がつかないことです。

持続力の赤筋と、瞬発力の白筋

人の筋肉は筋線維という細い線維が集まってできています。この筋線維に赤と白の2種類があると聞いたことはありませんか?

赤い筋線維は「赤筋」または「遅筋」と言い、ゆっくりと長い時間にわたって働くことができます。そして白い筋線維は「白筋」または「速筋」と呼ばれ、瞬間的に大きな力を発揮できるのが特徴です。

この赤筋と白筋がはっきりわかるのが魚です。赤身の魚は筋肉の大部分が赤筋でできていて、その代表がマグロです。マグロはこのおかげで広大な太平洋を回遊しながら成長を続けます。対する白身の魚の代表がヒラメ。ふだんは海底でじっと横たわっていますが、獲物となる小魚を見つけると、すばやく追いかけてつかまえます。人間の筋肉は魚と異なり、赤筋と白筋がいろいろな割合で混じりあっています。

赤筋主体の日本人が筋トレしても、基礎代謝は高まらない

赤白どちらの筋線維が多いかは個人差もあるものの、それ以上に大きいのが人種による違いです。

たとえば白筋の合成にかかわる遺伝子に変異があると、白筋が少なくなります*。こういう人の比率は人種間で差があり、平均すると、アフリカ系の人が筋肉全体の約70%が白筋であるのに対し、欧州系は50〜60%が白筋、日本人を含むアジア系は逆に70%が赤筋とされています**。アフリカ系の人がオリンピックの短距離走で活躍するのはこのためのようです。

赤筋と白筋の割合はトレーニングによってある程度変化するものの、大きく変わることはありません。鍛えることで太くなるのは大部分が白筋なので、日本人が筋肉をつけようと思ったら、もともと少ない白筋を集中的に鍛えることになります。

これは効率が悪いうえに、もっと悲しいのは、苦労して筋肉を1kg増やしても基礎代謝量が1日あたりせいぜい20kcal、わずかキャラメル1粒分のカロリーしか増えないことです。これによる体重の減少は年に1〜2kg。筋力トレーニングだけで基礎代謝を十分に高めるのは難しいでしょう。

でも、蛋白質をもりもり摂取して筋トレすれば筋肉がガッチリつくのでは?

いえ、残念ながらそうはいきません。蛋白質が筋肉の材料なのは事実でも、体が処理できる蛋白質の量には限度があるのです。

◇筋肉を鍛えれば、基礎代謝が高まって、ダイエットにもいいはず……という「ジム信仰」。しかし、「日本人の体質」を考えると効率が悪いばかりか、筋肉を増やしても基礎代謝はわずかしか高めることができない、という事実が見えてくる。では、筋肉のもととなる「蛋白質」を、もっと摂取すればいいのでは、と思いそうなところだが、「そうもいかない」という。一体どういうことだろうか。

後編「医師が指摘する「筋トレ」「BCAA」の誤解。「蛋白質を摂取しすぎると筋肉にならないどころか危険性もある」の意味」で詳しくお伝えする。

記事中の参考記事

*ACTN3遺伝子の変異は筋肉代謝を変化させる:MacArthur D. G. et al. ,“ Loss of ACTN3 gene function alters mouse muscle metabolism and shows evidence of positive selection in humans.”, Nat. Genet. , 39( 2007).

**骨格筋の量には人種差がある:Silva A. M. et al. ,“ Ethnicity-related skeletal muscle differences across the lifespan.”, Am. J. Hum. Biol. , 22(1)( 2010).

【後編】医師が指摘する「筋トレ」「BCAA」の誤解。「蛋白質を摂取しすぎると筋肉にならないどころか危険性もある」の意味