「還元率100%」なのに9割勝てない…「ネットオリパ」初心者が気づけない「不都合な真実」と「残酷な数式」
ライト層にも浸透してきた「オンラインオリパ」
現在のトレーディングカード(トレカ)業界は、単なる子どもの遊びというより、大人も巻き込んだ巨大なコレクション市場になっている。一般社団法人日本玩具協会によれば、2024年度の日本の玩具市場規模は前年度比107.9%の1兆992億円で過去最高を更新し、そのうち27.5%がカードゲーム・トレーディングカードとなっており、トレカ業界は約3,000億円の市場に成長した。
中でも、このブームをけん引しているのは「ポケモンカード」である。シンクタンクであるメディアクリエイト社の発表によれば、トレカ市場の売り上げのうち、約4割をポケモンカードが担っているとされている。
その熱量は、個別カードの値段を見るとさらに分かりやすい。たとえば、ファンの間で「がんばリーリエ」と呼ばれている「リーリエSR(119/114)」というカードは、鑑定機関の最高評価(ファンの間では「PSA10」と呼ばれる)を受けたカードであれば300万円以上で取引されることも珍しくない。カード1枚にここまでの値段がつく世界では、「もしかすると高額カードが引けるかもしれない」という期待そのものが商品価値となりうる。
こうした市場の上に、カードショップが発展させてきた販売形態が「オリパ」である。オリパは「オリジナルパック」の略で、メーカーが公式に販売しているパックとは別に、ショップや個人がカードを集めて独自に作って販売するパックを指す。高額カードを当たりとして前面に出したオリパは、買い物であると同時に、ギャンブルに近い体験として受け止められやすい。
そして、そのオリパをスマホやPCで引けるようにしたものが、現在の「オンラインオリパ」である。店舗で現物のパックを買う代わりに、先にサイト内ポイントやコインを購入し、そのポイントを使って画面上で抽選を回す。結果として出たカードは発送してもらうこともできるし、サイトによってはポイントに戻して再びオリパを回すこともできる。
昨今ではオリパ事業者は増加傾向にある。スマートランク合同会社の調査によれば、オンラインオリパ利用者の約9割が月1万円未満のライト層だとされており、一部の濃いコレクターだけの遊びではなく、幅広い層に浸透したとも考えられる。
「高還元」「アド確定」…見せ方に共通するパターン
ここまで見てきたように、オンラインオリパはスマホひとつで手軽に始められる。だが、その手軽さのわりに、動く金額はかなり大きい。
先述の通り、ポケモンカード市場はかなりの高騰を見せており、オンラインオリパでは特賞に100万円以上するカードが設定されることも珍しくない。つまり利用者は、数千円〜数万円を払って、数百万円級のカードが当たるかどうかの抽選に参加していることになる。これはもう、買い物というよりギャンブルに近い構造だ。
では、いったい何が問題なのか? 現在のオンラインオリパ各社の見せ方には、かなり共通点がある。目に入るのは、「高還元」という、直感的に気持ちを動かす言葉だ。
たとえば、オンラインオリパサイトのひとつである「DOPA」のトップページでは、「会員登録後限定!今だけのお得なオリパ 還元率100%」「1/319の確率でリーリエ&新弾BOX確定!!」といった訴求が確認できた。公式Xでも、「高還元!!」「1/1.8の確率でアド確定&BOX or パック排出!!」という告知の文言が見られる。
ここで語られる「還元率100%」とは、オリパの総販売数に必要ポイントを掛けた額と、オリパの開封結果として排出されるカードの価値が等価値であることを意味している。
たとえば、総口数が1000口で1口1000円のオリパが売られていた場合、完売した場合の売り上げは100万円となる。販売された1000口のカードすべてを合算した価値が100万円だった場合、業者側からすれば損も得もしていないわけだから、「高還元」と謳っているのだろう。
「特賞1枚」が数字を支えている現実
たしかに、総購入額に対しての払い出しが多ければ、ある意味では「良心的」といえるのかもしれないが、注意しなければならないのは、現在のオンラインオリパ市場の「お得さ」は、多数の当たりで支えられているのではなく、ごく少数の超高額カードがまとめて支えているケースが大多数を占めるということだ。
たとえば、先ほどの「1口1000円、総販売口数1000口」のオリパを例にして考えてみよう。
非常に極端な例になるが、特賞の1口が99万9001円のカード、残りの999口のカードが1円の価値しかないカードだったとしても、「還元率100%」というのは嘘ではない。だが、大当たりの1口を引いた人以外は大きく損をする作りとなっているため、ほとんどの人が「高還元」を体感することはできずに去っていくだろう。
最上位の1枚が大きすぎると、全体数字としては見栄えのいい還元率が作れてしまうということだ。つまり、「高還元率だから全体的にお得そう」と考えるのは危ない。その還元率の中身が、何枚のどんな賞で構成されているかを考えないと、本当の姿は分からない。
ここまでは「1口1000円、1000口」という仮定の話で説明してきた。では、現実のオリパではこの構造がどう現れるのか。ちょうど読み解きやすい実例がある。
「1/1.7で当たり」の実態
では、「還元率が高くても勝ちやすいわけではない」という構造を、具体例で見てみよう。
オリパサイト「日本トレカセンター」のオリパ「禁断のピンク」は、その読み解きに適した例である。
ページ上では、1回34,000コイン(サイト内通貨)で、「1/1.7の確率で34,800コイン以上」。さらに最低保証1,000コイン、総販売口数は153口と表示されている。つまり、1/1.7以上の確率で34000コイン以上のカードが当たり、ハズレでも最低1000コインが戻ってくるということだ。
この文言だけを見ると、「半分以上はほぼ負けないなら、そこまで悪くなさそうだ」と感じる人は多いはずだ。
34,000コインを賭けても「ほぼ現状維持」
1等、2等で当たるカードの口数は公開されているので、これらのカードとその価値を整理してみよう。カードの価値は4月1日時点の「アルテマ」における相場情報を参照している。
●1等
ルチアSR 1本 28万円
ニンフィアex 1本 32万円
●2等
ブルーの捜索 1本 149,000円
ゲッコウガ&ゾロアークGX SA 1本 111,000円
リザードンex SAR(ポケモンカード151) 1本 128,000円
マリィ SR(シールドマリィ) 1本 108,000円
カイリューV SA 1本 10万円
これらのカードは、当たれば34,800円以上のリターンが確実に見込める「大当たり」と捉えても差し支えないだろう。
3等のカードについては口数が不明なものの、公開されている「ヒビキのホウオウex SAR」が44,000円、「パラソルおねえさんSAR」が30,800円、「ベルのまごころSAR」が4万円、「ナツメの暗示SAR」が3万円、「アルセウスV」が3万円なので、3〜4万円程度のカードだと思われる。つまり3等は、「当たればトントンか、少しプラス」の枠として考えられる。
ここでまず注目すべきなのは、153口で「1/1.7の確率で34,800コイン以上」という表示である。153を1.7で割るとちょうど90になる。したがって、34,800コイン以上の結果は約90口あると理解するのが自然だ。
この90口の中で、強い当たりとして見えているのが、前述した1等2本と2等5本の合計7本だ。
残り83本は同じく34,800コイン以上ではあっても、1等や2等ほど強くはない3等以下の当たりで埋まっている可能性が高い。逆に、残り63口は34,800コイン未満の側、つまり最低保証1,000コインを多く含むハズレ側だと考えるのが自然になる。
この時点で重要なのは、「34,800コイン以上が90本ある」ということと、「強い当たりが90本ある」ということがイコールではないという点だ。1回34,000コインを払って34,800コインが返るなら、たしかにコイン表示上は当たりだ。しかし、その増え幅はたった800コイン。確かに「当たり」ではあるが、大きく勝ったと言える水準では言えず、34,000コインを賭けた体感からすれば「ほぼ現状維持」といえるだろう。
構造は「ギャンブルそのもの」
一方で、最低保証の1000コインを引いたときの落差は極めて大きい。34,000コイン払って1,000コインしか返らないので、差し引きでは−33,000コインになる。
この表だけでも、ページの印象と実際の構造の差はかなり見えてくる。「34,800コイン以上が90本ある」という言い方は、嘘ではないし、数字としては魅力的に映る。しかしその90本の大半が34,800コイン前後に集まっているなら、繰り返し引いたときの体感は「半分以上が勝てるゲーム」ではなく、「153本のうち7本だけ入っている1等か2等を引いたときだけ勝てるゲーム」といえるだろう。
このオリパの本質は、2等以上の7本と、それ以外の83本を同じ「34,800コイン以上」の箱にまとめて見せていることにある。1等や2等は、コイン上でも明らかに大きく勝つ賞だろう。しかし、3等以下が34,800コインから4万コイン前後に並んでいるだけなら、それらは「勝ちではあるが、収支全体を押し上げるほどの勝ちではない」といえる。表示上は同じ当たり枠に入っていても、実際の重みはかなり違う。本当に勝った感覚を作るのは2等以上の7本だけと考えるのが自然である。
このオリパの中身を見て分かるのは、これが「当たりが多いお得なオリパ」ではなく、少数の大当たりに価値が集中し、大多数は薄い当たりか深いハズレを引く構造だということだ。これは、オンラインオリパに特有の話ではなく、ギャンブルの基本構造そのものである。
さらに、オリパ特有の「当たりの残量は見えない」という問題が重なる。オンライン、オフライン問わず、販売されているオリパのほとんどが残り口数は表示されていても、残っている当たり総額や上位賞の残数までは見えないように販売されるのが普通だ。そうなると、利用者は今残っている山に当たりが眠っているのか、もう特賞が抜かれた後なのかを判断できない。
利用目的の55%はコレクション目的
特賞を引いた人は、その時点で離脱する理由がある。大当たりが期待値の中心なら、それを取った人にとって、その後を引き続ける意味は薄い。つまり、うまみを取った人ほど先にやめやすい。反対に、後から来た人や、状況が分からないまま引く人は、うまみが抜けた後の区間を踏みやすい。
もっと言ってしまうと、資金に余裕がある人であれば「販売開始直後に大量購入し、1等2等の大半が抜けた時点でヤメる」という戦略も取れるため、当たりがごっそり抜けたあとのオリパを回すことになりかねない。極端な話、還元率が100%のオリパであれば、すべての口数を自分で購入してしても損することはない。運が上振れして、確率より多く特賞を引けた際にヤメることで、ハズレばかりのオリパを他人に押し付けることができれば、期待値が100%を超えるギャンブルにすることも不可能ではないだろう。
ライト層が多いことは、むしろこの問題を強くする。先述の調査では利用者の約9割が月1万円未満のライト層で、利用目的の55%はコレクション目的だとされる。
これは裏を返せば、仕組みを深く考えずに入ってくる人が多いということでもある。オリパを一種のギャンブル、もしくは投資として考える人であれば、これまでしてきたような計算を行って、自分の賭けにどれくらいの正当性があるのか判断してからお金を使うだろう。だが、軽い気持ちで入ってくる人は、「還元率が高いから、損をする確率は低そうだ」「高額なカードが当たるらしい」といった印象で判断しやすいため、情報の読める人と読めない人の差がそのまま損得差になりやすい。
日本トレカセンターの公式ページでも、記載の還元率は全口購入時の理論値であり、個別抽選の設定コイン額はランダムで、交換・返金はできない旨が注意書きとして示されていた。表の見せ方が派手になるほど、裏側の注意書きはむしろ慎重になっている。
見るべきは「当たりの本数」でなく「当たりの厚み」
とはいっても、私はオンラインオリパを全否定するつもりはない。カードを引く演出が好きな人もいるし、「夢を見る代金」としてオリパを引く人がいるのもわかる。だが、少なくとも「ちょっとお得そうなスマホ娯楽」として見るのは危ない。
最低限見るべきなのは、「当たりが何本あるか」ではなく、還元率の数字がどの賞で支えられているかという点だ。
オリパは総販売口数が表示されているため、1口あたりの販売料金に販売口数を掛ければ、そのオリパにおける総売上額がわかる。そして、上位の賞については本数が公開されているため、外部の販売サイトなどでカードの相場を把握すべきだろう。
総売上額のうち、上位賞の占める割合が大きすぎる場合は、ギャンブル性が極めて高いオリパだと判断すべきだ。もちろん、ギャンブル性が高いことは必ずしも悪いことではないが、当たりを引けずに終わってしまう可能性が高いこととイコールなのは間違いないうえ、豊富な資金を持ったユーザーが「勝ち逃げ」した後という可能性も高まる。
オンラインオリパの怖さは、本当に当たりは入っていて、表示にも嘘はないのに、それでも多くの人が負けやすい構造になりうるところにある。もちろん、リスクを承知で興じるのであればそれは本人の自由だが、派手な装飾や耳障りのよい言葉に惑わされて、確率を過大評価しないように注意が必要だ。
ポーカー界の格言に「テーブルを見回して誰がカモか分からなければ、自分がカモだ」という言葉があるが、これはオリパ界でもあてはまる言葉だといえそうだ。
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