「嵐以上の国民的アイドルはもう二度と生まれない」と断言するしかない”これだけの偉業”…芸能史上最大《嵐経済圏のスゴさ》振り返る
数千億円ものカネを動かし、300万人超のファンクラブ会員を抱える「日本最後の国民的アイドル」嵐――その歩みがまもなく終わりを迎えようとしている。なぜ嵐は、これほどまでに巨大な存在となったのか。その軌跡をいま一度振り返っていく。
【前編記事】『デビュー当初“すぐに消える”とバカにされた「嵐」…それでも貫いた《SMAPと正反対の生き様》なぜ視聴者の心をつかんだのか』よりつづく。
「誰もが一緒に仕事をしたいグループ」だった
カリスマ性よりも親近感を、個人の突出よりもグループの調和を重んじたことが、嵐ブランドの着火点だった。
かつては冬の時代を過ごしたが、テレビ番組における下積みが功を奏して、'07年のシングル『Love so sweet』で売り上げはV字回復を記録。さらに'08年には初の国立競技場公演を果たした。ここから、彼らの快進撃はさらに加速していく。
嵐がテレビマンから重宝されたのは、彼らの人間性も大きな理由だ。テレビ業界において嵐は間違いなく「仕事がやりやすく、誰もが一緒に仕事をしたいグループ」だった。
「とにかくメンバーの仲のよさが際立っていました。カメラの前はもちろん、収録の合間でも5人の空気感はいつも自然体。誰かが失敗すれば笑ってフォローし、ぎこちない空気になりそうな場面では誰かが必ず軽口を叩いてその場を和ませるんです。『仲がいい』という陳腐な言葉ではとても表現できません。5人でいることが、彼らにとってもっとも居心地のいい状態なのだと現場で肌身を通して感じました」(制作会社プロデューサー)
芸能界の長い歴史を振り返れば、人気が高いスターほど陰で様々な風聞が飛び交うのが常。TOKIOやSMAPの現状を見れば明らかだろう。しかし嵐に関しては、撮影現場でのトラブルやスタッフへの横柄な態度、共演者との諍いなど、そうした類の話を、筆者は聞いたことがない。
そして彼らは、放送局にとっては「メガコンテンツ」であり、スポンサーに対する「最強の営業ツール」でもあった。
「日本人の8割」が嵐の番組を見た…!
まず嵐の番組は、きわめて高い数字を維持し続けた。特筆すべきは、活動休止直前の'20年末に見せた視聴率である。
たとえばレギュラーを務めていた『嵐にしやがれ』の最終回は、世帯視聴率18.3%、瞬間最高視聴率21.2%だ。いまはどんな人気番組でも視聴率が15%を超えることはほとんどないことを踏まえると、いかに突出した数字かわかる。
興味深い分析がある。ビデオリサーチによると、'20年12月に放送された嵐の出演番組を、リアルタイムで1分以上見た人(重複なし)の推計人数は9339.2万人に上るという。つまり、この期間は日本人の約8割が嵐の番組を見たというわけだ。
しかも対象番組はレギュラー番組と音楽番組の出演場面に限られており、配信や録画などは含まれていない。嵐は、単なる人気グループではなく、メディアを「ハック」するほどの力を持っていたといえる。
当然、企業にとっても5人の影響力は垂涎の的である。彼らを起用することは、単なる宣伝以上に「ブランド価値の保証」となったからだ。
その結果、嵐は'20年に前代未聞の記録を打ち立てている。この年のタレントCM起用社数ランキング(男性部門)は1位が櫻井翔(19社)、2位が相葉雅紀(17社)、3位が松本潤(16社)、4位が大野智(14社)、5位が二宮和也(13社)と、トップ5をメンバー全員で独占。広告史上でも類を見ない快挙だった。
圧倒的数字に加え、「クリーンなイメージ」、それを裏切らないプロ意識と信頼が、数十億から数百億円規模の広告枠・制作費を担保したのだ。
「嵐ファン」があまりにも“強い”と言われる理由
こうして確保したファンを離さない工夫も徹底されていた。彼らを論ずる際に欠かせないのが、他を寄せつけないほど完成された「ファンビジネス」だ。
嵐の累計ファンクラブ会員数は300万人超(公式発表はないが会員番号より推測)とされる。これは日本の人口の約2.5%がファンクラブに入っている計算だ。
「その内訳は他のアイドルグループと決定的に違います。10代の学生から、30〜40代の働く女性、さらには50〜60代の主婦や男性ファンまで、とにかく幅広い層から支持されているのです。『嵐ファン』は特定の属性に分類できないのが特徴でもあるし、強みでもあります」(芸能プロ関係者)
嵐が生み出す経済規模は、アイドルの枠を遥かに超えている。活動休止中も年会費4000円を払い続けた会員が150万人いると見積もれば、何もしていない期間であるにもかかわらず、年間60億円もの収入がグループ側に入り続けた計算になる。
ラストツアーの数字はさらに桁外れだ。1万2000円のチケットがツアー全体で約69万枚の売り上げなので、チケット収入だけで約83億円に達する。そして何より驚くべきはグッズ売り上げだ。
業界関係者は「チケット代と同等かそれ以上をグッズに使うファンは珍しくない」と口を揃える。パンフレット、ペンライト、タオル、Tシャツなど、グッズ収入を加えればツアー全体の直接収益は150億円を超えるだろう。映像作品化や配信収益まで含めれば、活動終了までに動く総額は数百億円規模に膨れ上がる。「嵐経済圏」は、まちがいなく芸能史で最大規模だった。
なぜ「国民的アイドル」はもう誕生しないのか
嵐の27年間を振り返ったとき、今後同じ規模の「国民的アイドル」が日本に誕生することは、極めて難しいと言える。
まず、メディア環境が根本から変わったことが大きい。彼らが国民的人気を確立できたのは、地上波テレビが絶大な影響力を持っていた時代と重なっていたからだ。茶の間で同じ番組を見るという「共同体験」が、嵐を国民的な存在へと押し上げた。
しかし今、視聴者の目が向く先はYouTubeやTikTokなど細分化している。日本全体が同じコンテンツを同時に体験するという状況は、構造的に起きにくい。
K-POPの台頭も不可逆だ。韓国アイドルはグローバル配信を通じて、世界中のファンと直接つながる仕組みを確立した。国内市場だけで「国民的アイドル」を推すことは、若い世代で薄れつつある。嵐が体現した「日本の日常に溶け込む親密さ」と「グローバル展開」は、相性が悪い。
嵐は、正真正銘「日本最後の国民的アイドル」だった。そして今なお日本人の「日常の記憶」の中に生き続けている。
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取材・文/岡田五知信(日本テレビ元プロデューサー、大和大学教授)
おかだ・さちのぶ/大和大学社会学部社会学科教授。「フォーカス」の記者を経て、'92年に日本テレビに入社。バラエティ番組や情報番組、特番などでディレクターやプロデューサー、編成を担務した経験を持つ
「週刊現代」2026年4月13日号より
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