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定年前は、家計が「資産の蓄積」から「資産の取り崩し」へと移行する手前の時期にあたります。この転換期に資産の全容を把握し、生命保険を活用した相続対策などをしておけば、将来における不確実性を低減させることにつながるでしょう。本記事では、川口幸子氏による著書『投資経験ゼロでも老後を豊かにできる! 定年5年前に読むお金の本[超入門]』(PHP研究所)より、定年5年前、まだ早いと思わず実行すべき相続対策について解説します。

生命保険による相続対策、主な3つのメリット

1.生命保険独自の「非課税枠」がある

死亡保険金には、基礎控除とは別枠で「500万円×法定相続人の数」という非課税枠があります。法定相続人が3人いれば、500万円×3人=1500万円までの死亡保険金は相続税がかかりません。

2.「誰に」「いくら」を確実に指定できる「受取人指定」

不動産や預貯金は、遺言書がない限り、法定相続人で分けることになります。しかし、「長男には実家を継がせるから、次男には現金を多めに残したい」「介護で世話になった長女に感謝の気持ちを伝えたい」といった、ご自身の想いを反映させたい場合もあるでしょう。生命保険は「受取人指定」によりお金に名前をつけて特定の人に確実に渡せる唯一の金融商品です。遺言書がなくても、相続人の同意なしで保険金を指定した人に渡せます。

3.認知症になっても安心!「指定代理請求」制度

あらかじめ指定しておいた代理人が、本人に代わって保険金や給付金を請求できる制度です。認知症で銀行口座が凍結されても、指定された代理人がスムーズに必要な資金を受け取れます。これは預貯金や有価証券にはない、保険ならではのセーフティネット機能です。

【注意】受取人は定期的見直しを忘れずに!

契約時のまま、受取人を何年も変更していないケースは意外と多いものです。結婚、離婚、子供の誕生、親の死亡など、家族の状況は変化します。また、「介護を頑張ってくれた娘に多く渡したい」といった気持ちの変化もあるでしょう。受取人の指定は、いつでも変更できます。人生の節目で保険契約の内容を確認し、現状に合わせて受取人を見直す習慣をつけましょう。

ポイント

■死亡保険金の「500万円×法定相続人数=非課税(枠)」を活用しよう

■家族状況の変化に合わせて指定代理請求人・受取人を定期的に見直そう

定年前にやるべき「家の片づけ」と「デジタル終活」

相続や認知症への備えで忘れがちなのが、身の回りの「モノ」と「情報」の整理です。これらを元気なうちに整理しておくことで、残された家族の負担を大きく減らせます。

ステップ1:まずは「財産目録」をつくってみよう

自分の財産を一覧にしたリストの作成から始めましょう。預貯金、株式や投資信託、生命保険、不動産、車、住宅ローンなどの負債も含めて、現状を把握することが大切です。

相続時に家族が「どこに」「何が」「どれくらい」あるのかわからず、途方に暮れてしまうケースが多いです。親子で別居している場合、親がどの銀行に口座を持っているかさえわからず、金融機関への問い合わせに大変な手間と費用がかかってしまうことがあります。まずはノートやパソコンで、思いつくものから書き出してみましょう。

預貯金:銀行名、支店名、口座番号、おおよその残高

有価証券:証券会社名、口座番号、主な銘柄

生命保険:保険会社名、証券番号、受取人

不動産:自宅、その他(所在地、名義人)

その他:自動車、貴金属、貸金庫の有無など

負債:住宅ローン、その他の借入金

ステップ2:モノの整理…使わない口座、不用品を片付ける

何年も使っていない銀行口座は解約して整理しましょう。口座がたくさんあると管理が煩雑になり、家族が把握するのも大変です。また、家の中にあふれる「モノ」の整理も大切です。衣類や雑貨、趣味のコレクションなど、本人にとっては大切でも、家族には価値がわからないものが少なくありません。元気なうちに少しずつ整理を始めましょう。

ただし、不用品回収業者への丸投げは注意が必要です。貴金属や現金などの貴重品が見つかっても業者のものになるケースがあります。自分で確認しながら進めることが重要です。

ステップ3:情報の整理…忘れがちな「デジタル終活」

パソコンやスマートフォンの「デジタル情報」の整理も重要です。ネット銀行、ネット証券、アプリ決済、SNS、サブスクリプション、クラウド上の写真など、多くのデジタル資産があります。これらはIDやパスワードがないとアクセスできず、本人が亡くなったり認知症になったりすると、家族でも手続きができなくなってしまうことがあります。以下を整理し、記録に残しておきましょう。

◎利用しているサービス名(ネット銀行、ネット証券会社、SNS、サブスクなど)

◎ID、ログインに必要な情報

◎パスワード(そのまま書くのが不安な場合は、ヒントだけでも)

◎解約・引継ぎの方法(わかれば)

ステップ4:大切な情報を1冊にまとめる「プレ・エンディングノート」

財産目録やデジタル情報のリスト、そして、家族に伝えておきたいことなどを1冊にまとめておくのが「エンディングノート」です。本格的なエンディングノートはまだ先だとしても、定年を機会にその一歩手前の「プレ・エンディングノート」をつくりましょう。普通のノートに書き留める形で構いません。次のような情報を書いておくと、いざという時に家族が助かります。

◎自分の基本情報(氏名、生年月日、本籍地など)

◎財産目録やデジタル情報の保管場所

◎大切な書類(保険証券、年金手帳、不動産権利証など)の保管場所

◎かかりつけ医、持病、服用中の薬

◎延命治療や臓器提供に関する希望

◎葬儀やお墓に関する希望

◎家族や友人への連絡先リスト

◎家族へのメッセージ

法的な効力はありませんが、自分の想いを整理し、家族に必要な情報をスムーズに伝えるための有効なツールです。一年に一度(変化が生じた時も)、確認、見直しをしておくとよいでしょう。定年前後は、人生を振り返り、これからを考える良い機会です。少しずつでも「お金の終活」と身の回りの整理を進めることが、家族の安心につながります。

ポイント

■財産目録を作成し、使わない口座は解約・整理しよう

■デジタル情報をリストアップして、記録に残しておこう

川口 幸子

クラウドコンサルティング株式会社

代表取締役