「ずっと黙ってたんだけど…」〈年金月7万円〉の78歳母、〈毎月32万円〉の収入を告白。53歳息子が仰天した〈母の正体〉
高齢の親が一人で暮らしていると、「年金だけで本当に足りているのだろうか」と心配になる人は少なくありません。総務省統計局『家計調査報告〔家計収支編〕2025年(令和7年)平均結果の概要』によると、65歳以上の単身無職世帯の可処分所得は月11.8万円、消費支出は月14.8万円で、平均的には赤字です。65歳以上の一人暮らしは増加傾向にあり、高齢期の生活基盤は家庭ごとの差が大きくなっています。
高齢の母の暮らしを支える“意外な収入”
「ずっと黙ってたんだけど、私、年金だけで暮らしてるわけじゃないのよ」
その言葉に、修さん(仮名・53歳)は一瞬、返す言葉を失ったといいます。切り出したのは、母の和子さん(仮名・78歳)でした。
和子さんは夫に先立たれたあと、一人で暮らしてきました。本人が口にしていた年金額は月7万円ほど。国民年金が中心で、決して余裕があるようには見えませんでした。古い服を大切に着て、外食もほとんどせず、近所のスーパーでも値引き品を選ぶ。修さんにとって母は、「節約して何とか暮らしている人」でした。
「月7万円じゃ絶対に足りないと思っていました。でも、母は“なんとかなるから大丈夫”としか言わないんです。何度か仕送りしようかとも言いましたが、いつも断られていました」
転機になったのは、春先の何気ない夕食の席でした。最近、家の外壁補修の話が出ていたこともあり、修さんは「そんなお金、母さんに出せるの?」と聞いたのです。すると和子さんは、少し間を置いて、冒頭の言葉を口にしました。
「実は、毎月32万円くらい入ってきてるの」
「え……何が?」
「家賃よ。お父さんが昔、残してくれたアパートの分」
修さんは、しばらく意味が分からなかったといいます。父が生前、小さな賃貸アパートを所有していたことは知っていました。ただ、古い建物で、もうたいした収入にはなっていないと思い込んでいたのです。
「母はずっと“年金が少ないから贅沢できない”みたいな言い方をしていたので、本当にびっくりしました。月32万円って、母の年金の何倍もあるじゃないかと」
和子さんによると、そのアパートは夫の死後に相続し、管理は地元の不動産会社に任せてきました。空室が出る時期もあるものの、ここ数年は比較的安定して入居者がついており、修繕費などを差し引く前の家賃収入は毎月おおむね32万円前後だったといいます。国税庁は、土地や建物の貸付けによる賃貸料収入を「不動産所得」として扱い、総収入金額から必要経費を差し引いて所得を計算すると案内しています。
なぜ黙っていたのか…「当てにされること」への静かな警戒
「じゃあ、どうして黙ってたの?」
修さんがそう聞くと、和子さんは苦笑したそうです。
「言ったら、みんな変に心配したり、逆に“余裕があるなら”って思うでしょう。私も、自分のお金のことをあまり口にしたくなかったの」
和子さんは決して派手な暮らしをしていたわけではありません。むしろ、家賃収入がある今も、年金だけで暮らしているかのような生活ぶりを崩していませんでした。
「お金が入るから使おう、とは思わないの。修繕だってあるし、入居者がいなくなれば減ることもある。収入があるからこそ、余計に使わないようにしていたのかもしれないわね」
修さんは、その言葉に拍子抜けする一方で、少し複雑な気持ちにもなったといいます。
「正直、もっと早く言ってくれればいいのに、とは思いました。こちらはずっと“母は苦しいはずだ”と思って見ていたので」
ただ、和子さんの本音は別のところにありました。
「本当はね、隠していたというより、当てにされたくなかったの」
夫の死後、親族の間では何度か相続や不動産の話題が出たそうです。そのたびに和子さんは、「収入のことを詳しく言えば、いずれ誰かの期待や計算が入り込む」と感じるようになったといいます。
「修のことを疑っていたわけじゃないのよ。でも、人って、お金があると分かると見方が変わることがあるでしょう」
実際、不動産収入は安定して見えても、将来の修繕費や空室リスクを抱えています。国税庁の案内でも、不動産所得は家賃収入そのものではなく、必要経費を差し引いた後の金額で考える仕組みです。和子さんも、外壁塗装や給湯器交換の見積書を見ながら、「毎月32万円」という数字ほど気楽ではないと感じていたそうです。
「見た目には“月32万円もある”って思うかもしれない。でも、古いアパートだから、何かあれば一気に何十万円も飛んでいくの。私にとっては、ぜいたくのためのお金じゃなくて、この先を持たせるためのお金なのよ」
その説明を聞いて、修さんも少しずつ考えが変わっていきました。
「自分は家賃収入という言葉だけで、かなり単純に考えていたんだと思います」
数字では測れない老後…見えていなかった母の生活実態
高齢者の生活基盤は一様ではなく、表面上の年金額だけでは実態を測れないケースもあります。
和子さんは現在も、管理会社に任せながら自分で通帳を確認し、必要なときだけ息子に相談する形を取っています。贈与や相続の話はまだしていません。ただ、「元気なうちに少しずつ整理しないとね」と口にするようになったといいます。
母の“正体”は、困窮する高齢者ではなく、小さな賃貸経営を抱えながら静かに暮らす大家でした。けれど、修さんが本当に驚いたのは、収入の多さそのものよりも、その現実を母が一人で背負っていたことだったといいます。
「年金が少ないから心配、収入があるから安心、そう単純な話じゃないんですね。母の暮らしを“分かったつもり”になっていました」
