国際教養大学理事長・学長 モンテ・カセム〈イラン問題にどう対処するか?〉
その象徴が、例えば3・11が起きた時に、わたしの母国スリランカは全然豊かな国ではないですが、お金を送れなくても石巻に海軍の方々を送ったんです。日本語を喋れないのにもかかわらず、そこで瓦礫の処理をしたり分別したりする現場を見て、わたしは非常に感動しました。
日本国民も彼らが帰る時に涙を流して帰したわけです。その数年前に、アメリカでカトリーナという大きな台風がありました。その時に世界中の貧しい国からアメリカに援助に行ったということは、わたしの耳には入っていません。
─ アジア諸国は日本にはそういう気持ちがあったと。
カセム はい。日本にはそういう貧しい国からでも、何らかの形で助けてあげたいという気持ちを持って実際に来たわけです。これは恐らく日本が丁寧に人道的なODAをやり続けた結果だと思います。
しかし、今はそういう国々が日本を上回るぐらい元気があります。この前インドネシアに行って、20年前に行った時とは全く様変わりしていて、豊かで元気で、エネルギーを感じる国になっていました。
ですから日本は今後そういう国と付き合いながら富を作っていくことの方が良いと思います。そこを戦略として考えた時に、わたしみたいに留学生として受け入れる人や、産業労働として受け入れる人の2種類がいると思います。その場面では西欧諸国を反面教師にしなければいけないと思います。
西洋諸国が今日労働というもので人の頭が足りないところに移民をたくさん入れました。だから人口ピラミッド的には三角型の構図です。このピラミッドの下の三角は大きく、この人たちは低所得、低賃金労働で労働重視型です。
わたしはこの三角型の人口受け入れモデルから六角形型に変えるべきだと思います。
─ 六角形とはどういうことでしょうか。
カセム 六角形型の基本は上の三角をなるべく大きくする。大学チームを含めて博士人材養成など戦略や戦術を考えるところにします。その下にミドル人材がいる正方形の四角も分厚くします。
このミドルと上に昇進したりすることを、学業を通じていつでも資格を取ったり昇進できるようにしておくのです。
つまり階層はトップ、ミドル、ボトムとはっきり分けずに流動的に動けるようにする。どの人でも努力さえすれば、受け入れたり資格を取得したりすることによって、自分のいる環境を変えられるようにする。
地方ごとに差があると思いますが、最初はピラビットに近くても、だんだんそれを小さな六角形に変えていけば、産業イノベーションが発生するとわたしは思っています。低賃金労働を増やしたら、特に科学技術のイノベーションは遅れてしまうでしょう。
ですから高市政権が言っている最先端のものをやろうとしたら、日本が先行投資しているハイエンドの学業と、先行しているミドル人材の育成の、一体バージョンを国際的に展開すればいいというのがわたしの考えです。
アメリカとの付き合い方
─ 年初にはベネズエラ侵攻、3月にはイランへの爆撃でアメリカの暴走があるように思いますが、トランプ政権はどういう風に総括されますか。
カセム トランプ大統領が欲しがっているものは世界の注目だと思います。ですから、彼がその何かを成し遂げたいということを、一応口頭で言いますけれども、基本的に自分が中心にいるということをみんなに知ってもらいたいという彼なりの意欲があると感じます。
敵に回す必要はないですが、過度に期待することも誤りの方向に行きやすいと思うんですね。
