新モデル級の進化『F355 GTS』、オリジナル・レシピに魅了『ディーノ246 GTS』 成功を導いたベビー・フェラーリたち(3)
更なる成功が期待された348 tb
歴代初の量産ミドシップ、ディーノ206 GTで、メジャーなエキゾチック・ブランドとしての一歩を踏み出したフェラーリ。フィアットの資金を後ろ盾に、1975年から3年連続でF1のコンストラクターズ・タイトルを獲得し、ブランドの将来は盤石といえた。
【画像】成功を導いたベビー ディーノ246 GTSとフェラーリF355 GTS 206 GTと308 GTSも 全123枚
1973年には、V8エンジンをミドシップしたディーノ208が登場。308 GT4が続いた。

イエローのフェラーリF355 GTSと、スカイ・ブルーのディーノ246 GTS マックス・エドレストン(Max Edleston)
翌年には、レオナルド・フィオラヴァンティ氏による傑作で、ミドシップのジュニア・スーパーカーというカテゴリーを切り拓いた、308 GTBが発売される。1989年に348 tbが登場するまでに約1万5000台が売れ、収益は技術力の向上へ貢献した。
しかし、1988年に創業者のエンツォ・フェラーリ氏が死去。世界的な不況も迫っていた。348 tbには更なる成功が期待されたが、964型ポルシェ911 カレラ4や、初代ホンダNSXといった才能豊かなモデルが登場し、存在感を発揮することはできなかった。
完全な新モデルのような雰囲気を放ったF355
この状況を打開したのが、当時の会長、ルカ・ディ・モンテゼーモロ氏。1970年代に自ら率いて成功を収めた、ワークスチームのスクーデリア・フェラーリと同様に、停滞していた公道モデル・ビジネスの復調を図った。
FRグランドツアラーの456や、F50の開発も進んだが、348 tbはF355へ進化。スタイリングは、ピニンファリーナ社のマウリツィオ・コルビ氏が担当し、クラシカルでありつつエレガントなボディが生み出された。

フェラーリF355 GTS(1994〜1999年/英国仕様) マックス・エドレストン(Max Edleston)
348 tbのセミモノコック構造は受け継ぎ、ルーフとガラスエリア、フロントフェンダーは共通していた。しかし、完全な新モデルのような雰囲気を放った。
コンピュータ技術の導入で空力特性も磨かれ、前端のスポイラーはフロントタイヤ周辺の乱気流を抑制。ボディ底面のヴェンチュリーが、効果的にダウンフォースを生んだ。
フィオラノのラップタイムを7秒短縮
40バルブのV8エンジンが得た、60psのパワーアップも話題を集めた。排気量は3496ccへ拡大され、3枚のインテークバルブはタイミングをずらし開閉することで、混合気の流れを促進。11.1:1の圧縮比で、1.0L当たり110psというパワーを誇った。
シャシーは、剛性を3割向上。トレッドは348 tbから広げられつつ、柔らかいスプリングと硬いアンチロールバーを獲得し、456譲りのアダプティブダンパーが組まれた。その仕上りは高水準で、マラネロ・フィオラノのラップタイムを7秒も縮めている。

フェラーリF355 GTS(1994〜1999年/英国仕様) マックス・エドレストン(Max Edleston)
果たして、F355の運転体験へ誰もが魅了された。シフトレバーはスムーズに動き、クラッチペダルは扱いやすく、パワーステアリングが備わり、ブレーキにはアンチロック機構が備わった。優雅な容姿も含めて、フェラーリの狙いは明確に具現化されていた。
クーペのベルリネッタに続き、スパイダーとタルガトップのGTSは1995年に登場。1997年には、6速セミATの「F1マティック」も追加されている。ミヒャエル・シューマッハ氏のように巧みなギア選びで、サーキットを巡ることも可能になった。
オリジナル・レシピの凌駕は簡単ではない
1995年当時、F355 ベルリネッタのお値段は8万8965ポンド。NSXより約2万ポンド高いだけといえ、フェラーリの売上げの7割を稼ぎ出し、経営の黒字化に大きく貢献している。後継の360 モデナが、コンセプトを継承したことにもうなずける。
一体感の強い運転体験と、エアコンの快適性、普段使いの実用性を同時に求める、20世紀末の共感をF355は誘った。マラネロ周辺の公道で試走を重ねた、テストドライバーに加えて、コンピュータを操る技術者によっても、シャシーやボディは磨かれた。

スカイ・ブルーのディーノ246 GTSと、イエローのフェラーリF355 GTS
マックス・エドレストン(Max Edleston)
登場から30年が過ぎ、F355はV8フェラーリの金字塔として、マニアから一目置かれている。それでも、ディーノ246 GTSの若々しく快活な走りへ、魅了されずにいられない。高域で甘美なV6エンジンに、しなやかなシャシー。完璧なバランスにある。
右足の角度とシンクロするように、3連キャブレターが鋭く鳴く。彫刻的なフロントフェンダーが、景色を切り裂くように左右へ踊る。ノスタルジックでありながら、ドラマチック。オリジナル・レシピの凌駕は、簡単なことではないらしい。
協力:HRオーウェン・フェラーリ・ロンドン社、メリスト・ パーク・ゴルフクラブ社
ディーノ246 GTSとフェラーリF355 GTS 2台のスペックディーノ246 GTS(1969〜1974年/英国仕様)
英国価格:6620ポンド(新車時)/50万ポンド(約1億500万円)以下(現在)
生産数:3661台(246合計)
全長:4201mm
全幅:1702mm
全高:1133mm
最高速度:239km/h
0-97km/h加速:7.1秒
燃費:6.0km/L
CO2排出量:−g/km
車両重量:1258kg
パワートレイン:V型6気筒2418cc 自然吸気 DOHC
使用燃料:ガソリン
最高出力:194ps/7600rpm
最大トルク:22.7kg-m/5500rpm
ギアボックス:5速マニュアル/後輪駆動
フェラーリF355 GTS(1994〜1999年/英国仕様)
英国価格:9万5509ポンド(新車時)/15万ポンド(約3150万円)以下(現在)
生産数:1万1265 台(355合計)
全長:4250mm
全幅:1944mm
全高:1170mm
最高速度:278km/h
0-97km/h加速:4.6秒
燃費:6.0km/L
CO2排出量:−g/km
車両重量:1350kg
パワートレイン:V型8気筒3496cc 自然吸気 DOHC
使用燃料:ガソリン
最高出力:375ps/8250rpm
最大トルク:36.9kg-m/6000rpm
ギアボックス:6速マニュアル/後輪駆動

スカイ・ブルーのディーノ246 GTSと、イエローのフェラーリF355 GTS マックス・エドレストン(Max Edleston)
