支持を集める「コリビング賃貸」とは(iamsuleyman/shutterstock.com)

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 単身者向け住宅の賃料上昇が続いている。「LIFULL HOME'S マーケットレポート(2026年2月)」によればシングル向けマンションの東京23区掲載賃料は、前年同月比19.2%上昇の13万2903円と過去最高値に。3年前との比較で上昇幅が4万円を超えている。人材獲得などを理由に新卒社員の給料はここ数年で大きく上昇しているが、住居費が高ければ懐に余裕は生まれない。今回は都心でありながら賃料を抑え、共用空間で新しい価値を提供する単身者向け賃貸のトレンドをご紹介したい。(不動産コンサルタント・岡本郁雄)

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【写真を見る】共有空間に様々な工夫 入居開始から1年で結婚に至った入居者カップルも

賃貸の空き部屋が慢性的に不足している理由

 首都圏の賃料上昇の大きな要因は、需要に対する大幅な在庫不足だ。「居住用賃貸マンション登録件数前年比推移(首都圏)データ」によれば、昨年対比で登録件数は大幅なマイナス圏にあり、2025年12月度は−18.4%となっており、それどころか2022年9月以降、40カ月連続で前年よりも少ない登録件数に留まる。つまり、「今の賃料」で住み続けたい人が増えたことで、空き部屋が出にくくなっているのだ。いっぽうの成約件数は、前年比4.9%伸びており賃料を押し上げている。

支持を集める「コリビング賃貸」とは(iamsuleyman/shutterstock.com)

 都心6区(千代田、中央、港、新宿、渋谷、文京)に限れば、シングル向け賃貸マンションの募集平均賃料は、16万円近くにもなる。新築賃貸マンションは、さらにその上をいく。2026年2月に竣工した「茅場町」駅徒歩3分の「ザ・パークハビオ日本橋茅場町」は、東京駅まで歩ける利便性の高さもあり、専有面積30平米メートルほどの1DKタイプは20万円を超える賃料設定となっている。それでも、戸別宅配ボックスや顔認証キー、24時間使用の共用スペースなど先進的なつくりで、大手町、丸の内などに勤務する30代のビジネスパーソンからの引き合いが多い。

 契約期間があらかじめ決められ、原則として更新がない賃貸借契約である「定期借家契約」の割合が高まっていることも、賃料を押し上げる要因だ。LIFULL HOME'Sで掲載した賃貸物件のうち東京23区では、「定期借家契約」の比率が2024年の7.1%から2025年では9.5%に増加。ちなみに、「ザ・パークハビオ日本橋茅場町」も定期建物賃貸借となっている。

 日本の総人口は減少傾向にあるが、東京都の人口は今も増え続けている。2026年2月1日現在の推計人口は、前年同月比7万7676人増加の1426万7766人。増加分の大半を外国人が占め、日本人の増加が1.6万人台だったのに対し、外国人は、7.3万人台。20代や30代の働き盛りの部屋探しは、今後ますます難しくなりそうだ。

20代〜30代から支持の集まる「コリビング賃貸」とは

 非婚化や晩婚化が進み単身世帯が増える中、新しいスタイルの賃貸住宅が提案されている。その一つが2024年3月に開業した「女性単身向け」のシェアリング型賃貸レジデンス「SOCO HAUS KORAKUEN」。もともと三井不動産の社員寮(1998年築)だった建物を改修した。共用空間には、ライブラリーやシアタールーム、トレーニングルーム、キッチンスタジオなどが用意されている。

 さらに、セルフレジ式の食品・日用品販売などのサービスも提供。各部屋の専有面積は、15.90平米〜18.00平米とコンパクトだが、賃料は月額11万9000円から、管理料は月額2万4000円から(2026年3月時点)となっている。水道光熱費、Wi-Fi利用料、共用施設・消耗品利用料、ランドリー利用料、ウォーターサーバー利用料が含まれており「都会の身軽で豊かな暮らし」というコンセプトに共感する人から支持を得ている。社員寮を賃貸住宅に転用した、成功例の一つと言えるだろう。

 野村不動産の手掛ける賃貸レジデンス「TOMORE(トモア)」は、職住近接や経済性に加えて交流にも軸足を置いた新しい新築賃貸レジデンス。こちらは先述の「SOCO HAUS KORAKUEN」と異なり、男女ともに入居が可能だ。2025年春にオープンの「TOMORE(トモア)品川中延」は、コミュニティ運営など独自のスタイルが評価され、想定より早く全135室が今春には埋まる見込みだという。2026年3月には、JR 山手線・京浜東北線「田端」駅 徒歩7分に全160室の「TOMORE 田端」が開業した。こちらも既に70室超に申し込みが入るなど好調だ。

運営スタッフが入居者同士の交流を支援

「TOMORE」シリーズの大きな特徴は、都心部に立地し新築・大型であることに加え、「コミュニティ運営」などの体験設計が行われていること。プライベートスペースに加え、共用リビングとなる「コリビングスペース」と「コワーキングスペース」を用意。さらに、コミュニティ形成を支援する運営スタッフが日中滞在し利用者同士の交流や活動をサポートする。都営浅草線「中延」駅徒歩1分の「TOMORE(トモア)品川中延」では、共用部として約95平米の「ルーフバルコニー付きコリビングスペース」や、「コミュニティオーガナイザー」が運営する約85平米の「24時間利用可能なコワーキングスペース」等を備えている。安価で気軽だが入居者任せという従来のシェアハウスとは一線を画す。

「コワーキングスペース」には、入居者同士でのランチや、イベントを開催できるコミュニティエリアを配置。ホームパーティやゲストを迎えてのトークイベントの開催などでコミュニティづくりを支援する。また、コミュニティツールのSlack上でもオンラインコミュニティを運営する。「コリビングスペース」では、料理を楽しんだり、ダイニングで食卓を囲んだりすることも可能だ。中延では、入居者同士がつながり読書会なども開かれているという。

 各部屋には、キッチンはないもののシャワー・トイレ・洗面台といった水回り設備や収納スペースは完備。賃料は月額9万円からで、別途共益費が1万5000円と、水道光熱費が1万3750円。合計12万円台から。駅徒歩1分の立地を考えると魅力的な賃料だ。性別による部屋のゾーニングはないが、女性専用のランドリースペースが用意され、ドラム式洗濯乾燥機も十分設置されている。

多くのカップルが誕生 “トモア婚”も

 料理はコリビングスペースで可能で、ダイニングテーブルを囲んで食事を摂ることで自然に会話が生まれるという。同じフロアで知り合ったもの同士の飲み会が開かれることもあるそうだ。学生時代と違い、社会人になると社外の人と交流する機会は案外少ない。加えて、リモートワークが広がったコロナ禍以降は、社内の交流も減っているという。自然発生的に生まれる交流に魅力を感じる人もいて、入居満足度は82%と高く、入居者の友人が引っ越してくるケースもある。

 入居者の属性は、年齢が20代から30代が87%を占めており会社員が83%。性別では、女性比率が61%と目立つのも特徴。シェアハウスの経験者は、入居開始当初よりも下がり続けており今では70%の人がシェアハウスの初心者だ。まもなく入居開始から1年が経つが、これまで多くのカップルが誕生し、結婚に至って転居した人もいる。年齢層が近いことに加え、全135邸と規模が大きいため価値観の近い人に出会える機会も多そうだ。筆者は、竣工した2つの「TOMORE(トモア)」を見学したが、共用空間にちょっとした“縁”が生まれそうなスペースが豊富だった。気軽に語り合える異業種の仲間ができれば、視野も広がりそうだ。

 賃貸選びの際には、賃料や立地、広さ、間取り、設備など優先順位を決めて物件を探すケースが一般的だ。社会人になってからの人間関係の構築が難しくなりつつある今、「TOMORE(トモア)」のような住居形態は、仲間づくりの場としても魅力的だ。好調な申し込み状況は、これまでの「条件」に加え、住まいの新たな価値として「交流」を求める人が増えていることを表しているのかもしれない。

 2020年国勢調査における「30歳〜34歳の未婚率」は、男性51.8%、女性38.5%。未婚率が年々高まる中、単身者の住まいのニーズも多様化していく。「ひとり暮らしを、ひらく暮らしに。」を掲げる「TOMORE(トモア)」のような新しいタイプの都心賃貸に、家賃高騰の中の住まいの「新しい選択肢」として支持が広がりつつある。

岡本郁雄(おかもと・いくお)
不動産コンサルタント及びFPとして、講演、執筆など幅広く活躍中。TV・雑誌など様々なメディアに出演、WEBメディア「街とマンションのトレンド情報局」も運営している。30年以上、不動産領域の仕事に関わり首都圏中心に延べ3000件以上のマンション・戸建てを見学するなど不動産市場に詳しい。岡山県倉敷市生まれ、神戸大学工学部卒。

デイリー新潮編集部