片山財務相も「由々しき問題」と危惧! 中国系スマホ決済が脱税・マネロンの温床になるヤバい死角
〈年々増加する、訪日外国人や就労目的の在留外国人たち。今、彼らの間で日常的に使われているアリペイやWeChat Payなどの「中国系スマホ決済」が、脱税やマネーロンダリングの温床になるリスクが指摘されている。
驚くべきは、日本国内での買い物や飲食であっても、政府当局が資金の流れをまったく把握できなくなる恐れがあるという点だ。私たちの見えないところで一体何が起きているのか。国会でも議論になり始めた、決済アプリの「ヤバい死角」に迫る〉
片山氏も危惧! 決済アプリの「闇」
中国系のスマートフォン決済アプリが広く利用され、常態化している。日本維新の会の阿部司衆院議員は、3月11日の予算委員会でそう問題提起した。阿部議員は、利用の仕方によっては次のようなリスクがあると指摘している。
「日本の金融インフラをいっさい通さずに完結できる」「日本のルール、制度と接点を持たない生活圏が国内に形成される」
これに対し、片山さつき財務大臣も次のように答弁した。
「非常に由々しき問題」
片山財務相は、中国系の決済アプリであるアリペイ(Alipay)やウィーチャットペイ(WeChat Pay)を例に挙げ、利用の仕方によっては次のような懸念が生じると説明している。
「法律上の登録義務や監督権限を実際に及ぼすことが非常に難しくなっております」
さらに、片山財務相は外国人との共生についてこう述べている。
「内閣として秩序ある外国人との共生、不公平感をなくさなければならない」
「両面からみて、これは正していかなければならないという強い問題意識を持っております」
表の取引は当局も把握できる
一体どういうことなのか。資金決済の仕組みに詳しい福本勇樹氏(ニッセイ基礎研究所・金融調査室長)の解説をもとに、問題となるケースを見てみよう。
まずは、一般的な事例からだ。訪日外国人が日本のコンビニで買い物をしたとする。たとえば、中国人がアリペイで代金を支払った場合だ。アリペイは中国のIT大手アリババグループが提供するQRコード決済サービスであり、現地ユーザーは10億人を超えるとされている。
この中国人ユーザーがアリペイ中国法人の口座に中国元で入金・チャージすれば、スマホなどの端末上の「ウォレット」に反映される。このアリペイでコンビニの代金を支払うと、アリペイ中国法人の口座から日本のコンビニ店へ、代金が日本円で送金される仕組みだ。福本氏はこう解説する。
「アリペイなどは日本に現地法人を設立し、日本の資金決済法上のライセンスを持っています。中国元を日本円にする為替取引をして、コンビニ店に支払います」
その際、アリペイの日本法人は日本円で決済を行うため、日本の銀行と業務提携している。仮にアリペイなどの海外事業者が日本の当局へ取引情報の提供を拒んだとすると、日本の銀行から業務提携を取り消される可能性が高い。そうなれば、日本でのビジネス継続が困難になる。
福本氏によれば、コンビニ店への代金送金について、誰のウォレットからの支払いかという情報の取得が難しい場合があり得ても、日本のコンビニ店への送金情報を日本の当局が把握しようと思えば可能である。アリペイなどの日本法人は日本の資金決済法の下で決済サービスを展開しており、当局が調査する権限が認められているからだ。
一方、ウォレットの情報は日本ではなく中国側に存在しているため、その情報取得は中国側が提供に応じるのかどうか、対応次第となる。
同胞間決済が「脱税の温床」になる懸念
ここまでは一般的な事例であり、大きな問題はない。福本氏が問題になり得る場合として挙げるのは、同じ出身国の人との「個人的な取引」だ。
たとえば、中国人の訪日客が、日本で中国人が経営する店で買い物や飲食をしたとする。いずれの当事者も中国に口座のあるアリペイを使い、中国元のまま取引を決済した場合、日本の当局は取引情報を把握できなくなるのだ。
最近は在留外国人が増え、特定の国や民族の人たちが地域コミュニティを形成し、日本人が入りにくいこともある。そこには、同じ国や民族の人向けに経営される商店や飲食店も存在する。たとえ日本国内で発生した取引であっても、外国人コミュニティの内輪でのみ決済された場合、日本の当局が資金の流れを把握できないこともあり得る。
これこそがまさに、冒頭の国会質疑で指摘されていた「日本の金融インフラを介さない資金決済が国内に形成され得る」というリスクである。
この問題は、アリペイなど中国系のスマホ決済アプリの普及によって注目されるようになったが、昔から現地通貨による現金決済では起こり得た事象だ。たとえば中国人の訪日客が日本において、中国人が経営する店で人民元の現金決済をしたとする。この店主が日本で取引を申告すればいいが、申告しなければ日本の当局がこの取引を把握できなくなる。
その場合、どうなるのか。日本の消費税の支払いが回避されてしまうのだ。客は消費税や日本円への換金の手間・コストがなくなり、店主は消費税の支払いや所得申告を回避できる。こうした脱法取引が、現地通貨の現金決済よりも、外国系のスマホ決済アプリの普及によって格段に簡単になってしまった。
世界も悩む「データ主権」の壁
こうした問題は、決して日本だけの話ではない。福本氏は、銀行の口座情報については次のように指摘し、各国が条約の締結などでマネーロンダリングや脱税に対する監視を厳しくしていると語る。
「世界的に関心が高い」
一方で、スマホ決済アプリなどを使った取引情報については、こう懸念を示す。
「データの主権がどこにあるのか、世界で問題になっており、議論されています」
片山財務相は国会答弁でこれを「非常に由々しき問題」とし、正していかなければならないとの認識を示した。世界的な問題でもあるが、まだ抜本的な解決策は見えてこないのが現状だ。
取材・文:浅井秀樹
