都内だけでなく、愛媛の家電量販店でもボンドロに関する警告が出されていた。拡散を警戒し、撮影禁止とするところが多い

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「使い道はわからないのに、どうしても欲しい」--立体シール“ボンドロ”をめぐり、入荷情報を追って深夜から行列、警察が出動する騒動まで起きている。SNSの拡散と希少性が生む熱狂の正体を、専門家の分析と現場取材で追った。
◆「正直、使い道はわからないんです」

クーリア社が開発した立体シール「ボンボンドロップシール」、通称ボンドロ。ぷっくりしていてかわいいと話題になり、発売から1年半で100万枚の売り上げを記録。文具業界全体の年間利益と並ぶほどのヒットとなった。その人気ぶりは異常ともいえ、2月4日、品薄と混雑防止を理由に小売り大手のロフトが全国での販売中止を発表した。

「正直、使い道はわからないんです。でも、なんとしてでも絶対に欲しいんですよね」

そう語るのは、都内在住で看護師として働く真田かおりさん(仮名・29歳)だ。彼女のバッグの中には、話題沸騰中のボンドロが何十枚も入っていた。

「今や普通に店頭で買うことは不可能に近いです。シールの発売情報をリアルタイムで発信してくれるSNSのアカウントやオープンチャットがあるのでそれを見て、前日や前々日の入荷状況をチェック。ヤマを張ったうえで開店2〜3時間前から並び、やっと買えるか買えないかの世界です」

真田さんがシール集めに熱中し始めたのは’25年の秋頃からだが、この異常なまでのハマりぶりには、SNSが強く影響している様子だ。

「もともとキャラクターグッズは好きでしたが、たまに見かけたら買う程度でした。それが去年の秋ぐらいから、YouTubeやインスタのショート動画に頻繁にボンドロという言葉が出てくるようになって。最初は『かわいいな』と思うくらいだったんですが、日に日に関連する動画がたくさん表示されて。気づいたら自分もハマって買い集めるようになっていたし、世間的にも大ブームになっていました」

◆ブームの中心にいるのは20〜30代の女性たち

真田さんのシール熱は、中毒と言えるほど高まっていく。

「仕事中も『今シールが買えた人がいるんだろうな』と思うと、すごく悔しい気持ちになって集中できないんです。家に帰っても家事もせず風呂にも入らず、一心不乱にシールの入荷情報や動画を見てしまう。偽物や模造品も横行していますが、それを買うのは絶対に嫌。シールには『交換レート』という希少性に応じた共通概念がなんとなくあるんですが、一番価値の高いクーリア製の本物のボンドロだけを追い求めて、時間もお金も浪費する日々です」

ただ、ふと我に返って自己嫌悪に陥る瞬間もあるという。

「本当は旅行とか貯蓄とか、もっと将来のことにお金を使いたい。自分でも『何やってるんだろう』と思うけど、シールが買えなくなると思うと……。もうどうしようもなくやめられないんです。最近、国内では飽き足らず、仕事を休んで韓国に日帰りで買いに行こうとしていたのが夫にばれ、『いい加減にしろ!』と怒られました」

このブームの中心にいるのは、子供だけでなく20〜30代の女性たちだと判明。近頃は「平成女児」などと呼ばれる彼女たちは、こう口を揃える。

「常にスマホからシールの情報が入ってくるので、寝ても覚めても『欲しいな』という衝動が止まらないんです……」

◆シール行列の混乱で警察まで出動

一体どれほどの人気ぶりなのか。1月25日、原宿のとあるショップがボンドロの販売を事前予告したので、その行列に記者が並んでみた。

深夜2時。開店に備えSNSをチェックすると、「前日22時からすでに並んでいる」との情報が。急いで現場に向かうと、すでに70人ほどの列ができていた。無人の椅子を大量に並べていた転売屋と思われる集団や、深夜なのに小学生がいる家族連れなど客層はさまざま。前後に並んでいた人たちに集まった理由を聞くと、全員、記者が見ていたXのアカウントと同じものを見ており「すでに並び始めていると告知していたから」と話していた。