Daiichi-TV(静岡第一テレビ)

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猛スピードで交差点に進入する1台の車。2024年9月、19歳の中国籍の男は、酒を飲んだ状態で道路を逆走し時速約125キロで交差点に進入、車と衝突し運転手が死亡しました。

さいたま地裁は9月、「危険運転致死罪」が成立するとして懲役9年の実刑判決を言い渡しました。

全国で相次ぐいわゆる“危険運転”。2025年1月、福島県のJR郡山駅前では…。赤信号を無視して時速約70キロで交差点に進入した車に、受験のために大阪から来ていた当時19歳の女性がはねられ亡くなりました。運転していた男は酒気帯びの状態でした。裁判で弁護側は「わざと信号を無視したとは言えない」と主張しましたが…。福島地裁郡山支部は9月、危険運転致死傷罪が成立するとして被告の男に懲役12年の実刑判決を言い渡しました。受験生の遺族はコメントで…。

(受験生の遺族)
『危険運転をなくすためにも厳罰化、法改正を強く望みます』

悪質な運転を処罰するため2001年に設けられた「危険運転致死傷罪」ですが、立証するのには高いハードルがあるため事件の遺族が苦しんできた経緯があります。

4年前、交通事故で弟を亡くした女性。

(弟を事故で亡くした長 文恵さん)
「このまま彼の事故を眠らせてしまうというのは絶対にしたくなかった」

弟の小柳憲さんは、2021年、大分市内の県道で車で右折しようとしたところ、法定速度の3倍にあたる時速194キロの車と衝突し、亡くなりました。運転していたのは当時19歳の男。

(被告の男)
『買ったばかりの外車で何キロ出るか試したかった』

検察は当初、被告の男を「過失運転致死罪」で起訴。しかし、遺族が署名を集めるなどして起訴内容の変更を求め、法定刑がより重い「危険運転致死罪」への変更が認められたのです。

一審では「進行を制御することが困難な困難な高速度だった」と認定。「危険運転致死罪」が成立するとして懲役8年の実刑判決を言い渡しました。「時速194キロがうっかり過失のはずがない」と訴え続けてきた遺族。「懲役8年」という量刑については。

(小柳憲さんの姉 長 文恵さん)
「(被告)が罰せられればいいというだけの判決だけではなく、今後、抑止にならなくてはというところでこの量刑でいいのかというのはある」

こうした遺族などの要望を受けて、立証のハードルが高い「危険運転致死傷罪」を見直す動きが進んでいます。9月、法務省の「法制審議会」ではアルコールや速度の数値基準を盛り込んだ1つの指針が示されました。

法改正が「危険運転」を1件でも減らすことにつながるのか…。「危険運転」を巡る現状を津川アンカーと考えます。

(スタジオ解説)
(津川 祥吾 アンカー)
私、津川の視点で気になるニュースを解説する「ツガワの目」。きょうのテーマはこちらです。

・危険運転致死傷罪 なぜ適用されにくい?

悪質な交通事故運転を処罰するためにできた法律なんですが、さまざまな問題が浮き彫りになってきて、見直しの動きが、今、進んできています。そもそも危険運転に対する処罰のあり方についての経緯を少し振り返りますと、2001年までは業務上過失致死傷罪というものが適用されていました。

ただ、透明の高速道路でトラックに追突された車に乗っていたお子さん。1歳と3歳のお子さんがですね、この車に閉じ込められて、この車が炎上し焼け死んでしまうという。「あつい」という言葉を残して亡くなったと、非常に痛ましい辛い事故が起こりました。その事故を起こしたドライバーは、実はサービスエリアでお酒を飲んで飲酒運転をしていたと…とんでもない事故だったんですが、その運転手が、最終的に裁判では懲役4年の実刑。あまりにも軽いんじゃないですか?そういった事件などを元にして、危険運転致死傷罪というものが刑法の中で作られました。その後も様々な大きな事故があって、これが別の法律にたてかえられたり、あるいはあおり運転が対象になると…こういった経緯がこれまでありました。

今、何が問題になっているかということなんですが、この過失運転というものは、その法定刑の上限が最高で7年で。危険運転致死傷罪というものは法定刑の最上限が20年ですから、大きく違うんですが…。この過失運転というのは、いわゆる不注意で起こしてしまった。ミスで起こしてしまった事故。それに対して危険運転…例えば飲酒運転は過失ではなくても故意に近いんじゃないかと…、まさか人を殺そうと思って運転していたわけではないので、結果に対する故意ではないんですが、お酒を飲むというのは、むしろ過失ではなくて故意なんじゃないですかと…。それはやはり別の罪として問うべきではないかというふうになっているはずなんですが…。ただ、例えば最高速度を大幅に超えたり飲酒運転をして起こした事故でも、危険運転ではなくて過失運転が適用されるというケースがあって、遺族の皆さんからは適用のハードルが高いということで、この要件の見直しを求める声が上がっています。

基準が曖昧と言われる危険運転の見直しについて、大分の事件の遺族が、条文の解釈を分かりやすくすることや、被害者に寄り添った内容になってほしいと要望しています。

(弟を事故で亡くした長 文恵さん)
「今後は、遺族が何も戦うとか、そういったことをしなくても、きちっとした捜査の機関がきちっと裁いてくれて、妥当な判断をしていただくというのが本来の姿ではないかなと思うので、そこを期待します」

今の法律では、なぜ危険運転が適用されないケースがあるのか、交通違反事件に詳しい増田英行弁護士は…。

(交通違反事件に詳しい 増田 英行 弁護士)
「単純に過失、ミスだということと、ミスとは言えないと、わざとやった、故意にやっているのにほぼ近いというところの線引き。その線引きというのが明確ではない。そういう意味で、当然それを捜査する捜査機関であったり、それを起訴するかどうかを決める検察官においては、どうしても難しい判断を強いられることになる。法律の文言を見ても、典型的なケースはこうだろうと思うんですが、具体的なその事案を見たときに、これは果たしてこれに当てはまるのか?そうじゃないのか?という判断がとても難しいんですね」

(スタジオ解説)
(津川 祥吾 アンカー)
今の現状を榎戸さんどのようにご覧になりますか?

(コメンテーター フリーアナウンサー 榎戸 教子氏)
命を奪う可能性がある行為、飲酒運転だって本当にもってのほかだと思うんですけれども、たとえ一瞬の判断ミスでも責任があることは誰もが分かっていると思うんですね。海外では、危険運転による事故というのは過失ではなく犯罪として扱う国が増えています。例えばイギリスなどでは、危険運転による死亡事故の最高刑を終身刑に引き上げています。今、日本では危険運転致死傷罪がなかなか適用されにくい現状があるだけに、法の運用の難しさ、そして、被害者側の無念の間に…そのギャップというものを考えさせられますね。

(津川 祥吾 アンカー)
今まさに法制審で議論されているポイントなんですけれども…。まず、危険運転というものは、飲酒運転に関して言うと、正常な運転が困難というものが今の現状なんですね。お酒を飲んでも、「私まだ正常な運転できますよ」という主張ができてしまうことがあるんです。だから、ここも数値を決めたらどうか。スピード違反についても、制御が困難といっても直線なので「私はこの直線道路は制御できてます」と言い張るケースがあるんですね。実際に、それで適用されないというケースがあったので、ここも「制限速度プラス何キロといったところを明確にしてはどうか」というのが、今、案として出てきています。

(徳増 ないる キャスター)
こういう数字を決めても、結局、事故というのは一つ一つ違いますし、状況も違うので、「基準を決めて、それで」というのはどうなのかなとも思いますが。

(津川 祥吾 アンカー)
そうですね、この審議会の中でも、特に弁護士からは、こういった数値を決めることができるようなということで、本来この危険運転が適用されていない人まで拡大されてしまうのではないか、判断が硬直化してしまうのではないかという意見。あるいは、被害者の遺族の方々からすると、むしろ、こういう数字を決めることで…例えば「『49キロオーバーだったので危険運転ではありません』なんてことにならないようにしてください」ということは指摘をされていますが、それにしても、ある程度、具体的なものは、やはり明らかにする必要があるのではないかというところで、今、議論が進められているところです。

同じように、命が奪われても危険運転とされるか、過失運転とされるかで、その刑の重さというのが全く違います。どこからが過失で、どこからが故意なのか…その線引きが曖昧なままでは誰も納得ができません。そのため、多くの事件で被害者のご遺族が、自ら悲しみと苦しみの中で様々な働きかけをして、ようやく危険運転と認められる…そんなケースが今まで続いてきました。そして、今ようやく、その線引きを明確にしようという議論が
始まっているわけですが、私は、こういった提言をさせていただきたいと思います。

・殺意はないが過失でもない“危険運転”の輪郭を定めよ

…ということですね。法の厳しさというのは、罪を裁くだけではなくて、人の命を守るためのものです。命を奪う行為が過失か否かの境目で揺れ続ける限り、法の抑止力というのは働きません。危険運転の定義を社会全体で見つめ直す時期に来ているのではないでしょうか。

以上、「ツガワの目」でした。