ひょうろく(写真提供=NHK)

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 NHK大河ドラマ『べらぼう~蔦重栄華乃夢噺~』に、お笑い芸人のひょうろくが出演することが発表された。彼が演じるのは、江戸時代後期に活躍した画家にして、松前藩の家老でもある松前廣年(蠣崎波響)。異才の絵師を演じる意外なキャスティングに注目が集まっている。

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 『べらぼう』は、江戸時代にポップカルチャーの担い手として活躍した蔦重こと蔦屋重三郎(横浜流星)を主人公に据えた大河ドラマ。蔦重は、喜多川歌麿や東洲斎写楽といった名だたる浮世絵師を世に送り出した名プロデューサーで、本作にはそんな重三郎と同時代を生きたさまざまな芸術家が登場する。お笑い芸人を起用したキャスティングでいえば、第4回には絵師の礒田湖龍斎役で鉄拳が出演。おなじみの白塗りメイクではなく、素顔で登場したことでギャップに驚いた視聴者も多かったようだ。

 そんな中での、ひょうろくの抜擢である。彼は、TBSのバラエティ番組『水曜日のダウンタウン』におけるドッキリ企画で一躍注目を集めた。何度ドッキリを仕掛けられても信じてしまう人の良さと、クセのある言動が人気の理由だ。

 一方で、ドッキリの仕掛け人になると、俳優顔負けの演技力を発揮することでも知られている。特に、2024年9月4日に放送された「ひょうろくの裏の顔は別人ドッキリ」では、ひょうろくが普段と正反対のキャラクターを憑依させ、司会の浜田雅功を「マジでどっちなんやろ?」と困惑させるほどのリアリティを見せた。この放送をきっかけに演技の仕事が増え、今年3月に放送された『コンシェルジュの水戸倉さん』(BS日テレ)では、TVドラマ初主演を果たすなど、俳優としてのキャリアも着実に広げつつある。

 ひょうろくの演技には、どこまでがキャラクターで、どこからが素なのかわからないところがある。その底知れなさが、『コンシェルジュの水戸倉さん』では、人間としての“深み”として表れていた。『べらぼう』の物語に登場する松前廣年は、まさにそのような“深み”を要求される役柄になるだろう。廣年は、松前藩藩主の家に生まれながら、幼くして絵の才能を発揮し、画家の建部凌岱に弟子入り。大人になってからは藩に戻り、松前藩復興のために心血を注ぐも、「蠣崎波響」の名で絵師としての活動も継続した。

 常識に囚われず、政治と芸術の両方に長けていた廣年。ひょうろくの醸し出す型破りな雰囲気は、そうした廣年の人物像と相性が良いように思える。見るからに一筋縄ではいかない存在感、そして一見コミカルでありながらも、内にある真摯さ。ひょうろくの持つ二面性こそが、廣年という人物に命を吹き込む鍵となるだろう。

 さらに注目したいのは、廣年が横浜流星演じる蔦重とどのように関わってくるのか、という点である。文化的土壌を広げようとした蔦重と、文人や絵師と交流を持っていた廣年。史実としての接点は不明だが、『おんな城主 直虎』(NHK総合)や『大奥』(NHK総合)など、歴史ものの名作を手掛けてきた森下佳子の脚本であれば、この2人の交差を大胆に描き出すことも可能だろう。

 ひょうろくという予測不能なカードがどんな化学反応を起こすのか。演技だけではなく、その登場の仕方にも注目したい。(文=花沢香里奈)