もしセブンがコインランドリー事業に参入したらどうなるか…外資コンサルが爆速でやる「論点整理」の手法
※本稿は、高松智史『「暗記する」戦略思考 「唱えるだけで」深く、面白い「解」を作り出す破壊的なコンサル思考』(かんき出版)の一部を再編集したものです。

■「戦略思考」とはパッとアイデアが浮かぶことではない
「戦略思考」とか「モノゴトを考える」って、表現が抽象的すぎて、なんというか、体感として、手品のようにパッとアイデアが浮かぶもの。と誤解されておる。
そんなことはないよね。絶対にありません。戦略とは「戦いを略す(=戦いを避ける)こと」とか、「選択と集中」とか色々表現されていますが、要は、実際に行う前に、投資をする前に、リスクを取る前に、ありとあらゆることを考えて、打つ一手なわけだから、どう転んでも戦略思考のプロセスは「丁寧」になりますよね。
なになに、こんなに細かく考えるわけ? と。
それが「戦略思考」ってものでもあります。
一方で、思考するスキルがないと、「考えてください。10時間考えてください。」と言われても困る。考えることが30分、いや、10分もするとなくなってしまうもの。
■セブン‐イレブンがコインランドリー事業に参入した場合の課題とは
では、今回の題材を発表します。お気に入りの問題です。面白いぜ。
「我々、セブンがコインランドリー事業に参入した場合の課題を教えてほしい」
さぁ、これは本当にいい問題なんだよね。
「セブンがコインランドリー事業に参入した場合の課題を考えてみてください。」という問題を見たとき、どのような「課題」が浮かびましたか?
今から、3分考えてみてください。
いや、何かしら「課題」が2個浮かんだなら、先に進んでくださいませ。
▼
ここでしばらく考えてみよう。
まず、皆さんは何から考え始めましたか?
素直な人はこんな感じの課題の方向性が浮かんだのではなかろうか。
・そもそも、コインランドリーなんて、儲かるのか?
・コインランドリーに投資する資金は?
などなど、ではなかろうか。うんうん、当然、これらも課題ではあるが、ここにパチンと使ってほしい、思考パスがあるのです。
■重要なのは「誰が何に悩んでいるのか」を正確にとらえること
ヒントは課題の方向性。ここに、課題の方向性の「分岐」が存在しています。
今回の論点の持ち主=この問題を悩んでおられる方の気持ちを考えてほしいのだ。
論点の持ち主は、もちろん、セブン‐イレブンの新規事業開発室長である。その彼か、彼女かわからないが、新しい事業として「コインランドリー事業」を始めてよいのかどうか、決めかねているということだ。
何に悩んでいるのだろうか?
本当に、彼は悩んでいるのだろうか?
ここで、1つ、ヒントを出しますね。
ではなく、
とすると、感じ方が変わりますよね。ほんと、まったく違いますよね。
■コインランドリー事業の課題は出尽くしている
ブロックチェーン事業もだいぶメジャーになってきているので、NFTでも構いませんが、先進的な取り組みをしようとしているならば、
となりますよね。
あくまで、新しい事業を行うにあたっての課題はなんだ? なんだ? ということに議論がめぐることになりますよね。
そうなれば、どうやったら、ブロックチェーン事業が成功するか? そのうえで解決しなければいけない、課題は何か? というのが論点となりますよね。
でも、今回の問題を思い出してもらいたい。コインランドリーだ。
ブロックチェーンと比較するまでもないくらい、軸足はコインランドリーにはなく、圧倒的に比にならないくらいデカい、既存事業のコンビニにあるのだ。
ここに思考のフックがあります。
なにせ、コインランドリーは古い事業であり、運営における論点、課題は、誰かが体験済みであるだろうからね。
■新規事業ではなく根幹事業への影響を中心に思考する
とすると、もうおわかりかと思いますが、課題の方向性はセブン‐イレブンに向かっていなければいけません。
とすれば、こう捉えねばなりません。
もっと、明確に言えば、こうなりますよね。
コインランドリー事業を始めた場合、
コンビニ事業への!!!!
影響は何かありまっか?
なのである。
この分岐を捉えられるのが戦略思考である。
今回でいうと、目の前にぶら下がった「コインランドリー」は本命ではなかったのだ。事業の根幹を成しているコンビニ事業を軸足にモノゴトを深めねばならなかったわけだ。
■立てた論点を分解して具体的な影響を詳らかにする
とすると、どういうステップでモノゴトを考えていけばよいか? 論点を立て、さらに、それをどう分解すればよいかといえば、こうなるのです。
(X) セブン‐イレブンがコインランドリー事業に参入した場合の課題は何か?
(A) セブン‐イレブンはコインランドリーをどのような形態で、提供していくのか? 具体的には、併設/2階スペースなどを活用していくのか?
(B) 仮に併設などによりコンビニとセットで提供された場合、「コンビニ生態系」はどのように崩れる/変化するのか?
(C) 上記の変化のうち、ネガティブなもの、特に、解決できない変化、課題になり得る変化は何か?
となります。
■戦略思考のパターンを暗記しておけばすぐに回答を導ける
皆さんも想像してみてください。会議室で、役員から
「既存事業が安定してきた。ので、にじみ出た新規事業として、こんなことをしようということになったのだが、課題を考えてみてほしい。」
と、こういう感じのお題が来たら、その瞬間、皆さんは心の中で、
「はい、はい、はい。あれですね、この間学んだ、『セブンのコインランドリー参入問題』を暗記したから、それをベースに少し変えればいいだけだね」と思い出したうえで、即座に発言すればいいのだ。
「なるほど。その新規事業だと最初のうちは少なからず、既存事業が軸足で、その新規事業も既存事業をより確固たる存在にするもの。
だから、論点としては、既存事業への影響に重きを置いて考えるべきですよね。だから、そもそも、新規事業はどのようなサービス提供を行うのか? を確認したうえで、既存事業が作り出しているビジネスモデル、ブランドも含めた生態系にどう影響するか? を詳らかにして、その後、それをプラスの影響・マイナスの影響、解決可能・解決できなそうという2軸で分類してみたらいいですよね」
と高らかに発言すればいいだけだ。これぞ、戦略思考。
これこそが、僕が皆さんに起こしてほしい変化であり、だからこその「暗記する」戦略思考なのだ。こうやって役員に対してスルスルと答えられれば、実にセクシーですよね。

■この課題には大きく二つの方向性がある
では、最後に、この問題を僕が会議で聞かれたら、こんな感じでしゃべりだす。というのを書いておきます。
【回答まとめ】
まず、課題には大きく2つの方向性があり、1つはコインランドリー事業を行ううえでの課題。もう1つは、コインランドリー事業を行ったことによりコンビニ側に起きうる課題。
それぞれを考えていきたいと思います。
1つ目のコインランドリーを軸足に考えた場合は、考えなければいけない問いは大きく3つあり、それを示したのち、順を追って、説明していきます。
(1)コインランドリー事業に必要な施設や運営に必要なケイパビリティ、ひいては成功するために必要なものはどのようなものがあるのか?
(2)上記を踏まえ、セブン‐イレブンが、現状、持っているケイパビリティは何か?
(3)その2つを比較したときのギャップは何で、その中でお金などでは解決できない課題となるものは何か?
を解けば、課題が出てくると思います。
具体的に述べさせてもらうと、そもそも、コインランドリーを運営するうえでは、機材や、水回りの整備などのハード面に加えて、日々のメンテナンスのオペレーションを回せるケイパビリティが必要になります。
一方で、それらはセブンレベルでいえば、お金で解決できてしまうので、不足するケイパビリティとすれば、コインランドリーを設置するスペースくらいでしょうか。
隣接している場所、または、コンビニ内に設置しないと、目的の大半を占める、コインランドリー客に“ついで”にコンビニで買ってもらうっていうのができない。
ので、その課題をある程度、解消できるか? が大事になってくる。
■コンビニを軸足に考えるときの3つの問い
2つ目のコンビニを軸足に考えた場合は、考えなければいけない問いは大きく3つあり、それを示したのち、順を追って、説明していきます。
(1)セブン‐イレブンはコインランドリーをどのような形態で、提供していくのか?具体的には、併設/2階スペースなどを活用していくのか?
(2)仮に併設などによりコンビニとセットで提供された場合、「コンビニ生態系」はどのように崩れる/変化するのか?
(3)上記の変化のうち、ネガティブなもの、特に、解決できない変化、課題になり得る変化は何か?
を解けば、課題が出てくると思います。
具体的に述べさせてもらうと、そもそも、形態としては先ほども述べたとおり、コンビニにコインランドリーの併設を行う狙いはもちろん、コインランドリー事業での売上自体ではなく、その利用者がコンビニで“お金を落としてくれる”こと。
では、そのときに、コンビニにどのような変化が起きるか?
まずはオペレーションの複雑化が挙げられる。

特に夜勤は1名体制になりがちだが、その体制で、コインランドリーが故障した場合などは、店員がその対応をせざるを得ないので、コンビニのレジなどの仕事ができなくなる。まず、この変化。
次に、コンビニの雰囲気の変化。コインランドリーを使う人が増えると、コンビニとしての雰囲気が変わり、現在の利用者がその店舗を使わなくなる可能性がある。
また、駐車場や立ち読みスペースなどが混んで不便さを感じた利用者が、他店舗に逃げてしまうかもしれない。
まとめますと、コインランドリー側、そして、コンビニ側にも課題・変化が生まれるはずで、それを今後は議論していくことになろうかと思います。
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高松 智史(たかまつ・さとし)
経営コンサルタント
KANATA代表取締役、「考えるエンジン講座」代表。一橋大学商学部卒。NTTデータ、BCG(ボストン・コンサルティング・グループ)を経て、論点思考を伝授する「考えるエンジン講座」にて自ら講師として授業を提供。本講座は個人・法人合わせて年間1000人が受講。コンサル思考・心得を配信するYouTube「考えるエンジンちゃんねる」を運営(登録者数3万人)。著書に『コンサルが「最初の3年間」で学ぶコト』など6冊があり、累計30万部超のベストセラー作家でもある。
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(経営コンサルタント 高松 智史)
