ブランドやインフルエンサーは YouTubeショート にどのように参入しているか

目次
・メソドロジー
・アーリーアダプターと継続的なショートユーザーは高いエンゲージメントから利益を得る
・ショートでもっとも効果的なのは、教育的なコンテンツ「インフォテインメント」
・リポストだけでなく、ショートのためのオリジナル動画コンテンツが制作されている
・調査結果
TikTokやその先行者であるヴァイン(Vine)のようなアプリによって人気を博したショート形式の動画クリップは、ソーシャルメディアユーザーにとってますます人気のフォーマットとなっている。YouTubeは現在、YouTubeショートというセクションにショート形式のコンテンツを収容している。このセクションでは、ユーザーは60秒以下の縦型動画クリップを見つけることができる。コンテンツクリエイターは、注目を集めてユーザーをほかの長い動画や外部プラットフォームへと誘導することを期待して、ユーモアや情報に満ちたショートを投稿することが多い。
Glossy+リサーチでは、独自のYouTubeインフルエンサーインデックスにおいて、最近YouTubeでブームを起こしている美容とファッションのインフルエンサーのリストを分析、ブランドパートナーとしてのパフォーマンスを解析した。その分析から、インフルエンサーにはニッチなコミュニティをまとめてブランドメッセージを伝達する能力があるという重要な見解が得られた。クリエイターにとってショート形式の動画は、長編動画よりもカジュアルなフォーマットでコミュニティに関わるという別のタッチポイントとなる。このような短い動画は、高度なキュレーションや編集の必要性が少ないため、クリエイターは創造性を柔軟に発揮し、視聴者との純粋な交流を図ることができる。
Glossy+リサーチでは、今回のレポートにおいて、11人の主要なインフルエンサーが新たなオーディエンスにリーチするためにどのようにショートを利用しているか、またオリジナルのスポンサーシップコンテンツを作りたいと考えているマーケターにとってどのようなタイプのショート動画のスタイルがもっとも話題を呼ぶかを評価した。
メソドロジー
このケーススタディでは、11人のインフルエンサーとそのYouTubeチャンネルから収集したデータをもとに、特定の時点におけるインフルエンサー分野のスナップショットを生成した。Glossyは2022年(2022年1月1日から2023年1月1日まで)のYouTubeデータを収集している。データ収集は2023年2月に行われた。
これらのインフルエンサーは、「スキンフルエンサー」としての専門知識にあふれている、価値ある長編の美容コンテンツを作成している、フォロワーが十分な情報に基づいて美容の購入の意思決定を行えるように率直な意見を発信している、といった評判に基づき、Glossyの編集チームが選出した。ショートは、尺が60秒未満の縦型動画フォーマットとしてカテゴライズされたものである。今回のケースでは、11名のインフルエンサーの合計490本のショートを分析した。
アーリーアダプターと継続的なショートユーザーは高い視聴者エンゲージメントから利益を得る
GlossyのYouTubeショートの分析では、今回の調査対象となったインフルエンサー全員が、昨年投稿したショートの動画で高い視聴者数を獲得しており、ショート動画1本あたり平均数千から数十万ビューを個別に獲得している。この調査における11人のインフルエンサーが投稿した全動画で、グループはショート動画1本あたり平均12万8786ビューを獲得した。
ジェフリー・スター氏(YouTubeの@jeffreestar、チャンネル登録者数1590万人)は、今回の調査対象者のなかでチャンネル登録者数がもっとも多い。スター氏は自身のYouTubeチャンネルに2本のショート動画を投稿し、合わせて140万回以上再生されており、1本につき約71万8000ビューとなっている。。たった2分間のコンテンツで、スター氏は何百万人もの視聴者にリーチし、自分のオーディエンスとつながることができた。各ショート動画には平均802件のコメントが残されている。現在、彼のもっとも人気のあるレビューのショート動画「グッチ(Gucci)の50ドル(約7440円)のチーク……ジェフリー・スターは認める!?」は単体で180万ビューを獲得している。
調査対象者のうちチャンネル登録者数がもっとも少ないローズ・シアード氏(YouTubeでは@roseandben、チャンネル登録者数8万3000人)でさえ、昨年アップロードした3本のショート動画の平均再生回数が3433ビューだった。シアード氏は、2022年10月初旬に最初の動画を投稿したショートコンテンツ後発組のひとりである。
Glossyは2022年11月のファッションブリーフィングで、ブランドチームやインフルエンサーがショートで先行者利益を得ていることを指摘している。このアドバンテージは多くのTikTokのアーリーアダプターでも報告されている。この「先行者利益」とは、初めのうちはその環境にあまり人がいないため、初期参入者がバイラルになる可能性が非常に高くなるということを意味する。我々の最近の調査では、エイヴァ・リー氏(YouTubeの@GlowWithAva、チャンネル登録者数44万2000人)のように、2022年の初めにショートの投稿を開始したアーリーアダプターは、その年の残りの期間中、一貫して投稿を継続している。
実際、リー氏は2022年のあいだ、ほぼ毎日のように投稿しており、合計348本のショートを投稿した。このような頻繁かつ一貫した投稿によって、リー氏は相当数の常連視聴者を獲得、平均33万6000人近くが各動画を視聴しており、これはリー氏のほぼ全体のチャンネル登録者数である。リー氏は、今回の調査対象グループのなかでもっとも早くショートを採用しており、昨年もっとも積極的に投稿を行っている。ソーシャルブレード(Social Blade)の分析によると、2022年1月9日に最初のショートを投稿する前の週、リー氏は200人の登録者を獲得している。最初のショートが公開された週には、リー氏はその倍の400人の登録者を獲得した。今年最後の週、2022年12月26日から2023年1月2日まで、リー氏のチャンネル登録者は8000人増加した。リー氏によるもっとも人気のあるショート動画は「ママが値段を知らずに私のバカラの香水を使ってた……」で、現在2800万ビューとなっている。
このようなショート形式のコンテンツは一見、インフルエンサーが新たな視聴者や登録者を獲得するのに役立っているようにみえる。パリを拠点とするコンテンツクリエイター、フレデリコ・シュタウファー氏は、昨年10月にYouTubeチャンネルを立ち上げ、ショートを試している。「初めての(ショート)動画を投稿した後、最初の1時間で20人のチャンネル登録者と4000ビューがあった」と同氏は述べた。しかしその後シュタウファー氏は、投稿したすべてのショートを自身のYouTubeチャンネルから削除している。
チャンネル登録者と一貫したインタラクションのあるチャンネルは、ショートを介してより自然にオーディエンスを惹きつけることができ、視聴者数が飛躍的に伸びる可能性があり、ブランドパートナシップのためにインフルエンサーを位置付けたり、ブランドがオーディエンスを発見したりすることに貢献している。
ショートでもっとも効果的なのは、教育的なコンテンツ「インフォテインメント」
Glossy+リサーチは、インフルエンサーがもっともよく投稿するショート動画のスタイルにも着目し、この調査に含まれる2022年のショートコンテンツの3分の1(33%)が、美容やファッションのヒントやコツ、ちょっとした情報を紹介するチュートリアル動画であることを発見した。2番目に人気のあるタイプのコンテンツはレビューで、21%のショート動画が製品の効果に関するクリエイターの意見を共有している。
セルフレスバイハイラム(Selfless by Hyram)の創業者ハイラム・ヤーブロ氏(YouTubeの@Hyram、チャンネル登録者数455万人)に、オーディエンスの興味を引くためのスポンサードコンテンツ制作アプローチについて話を聞いた。ヤーブロ氏は、「その商品を本当に気に入っていて興味があるということを示す形でコミュニケーションし、それがチャンネル登録者の生活にどのように応用できるのか、あるいは役に立つのかを紹介する」という方法を好んでいると語った。
YouTubeは以前から、視聴者が有益な動画を発見したり、新しいスキルを学んだりするのにかなり利用されてきた。この傾向は、同プラットフォームのショート形式のコンテンツにも受け継がれており、視聴者は、動画から何らかの知識やスキルが得られるような教育的コンテンツを好む。インフルエンサーにとってこれが意味するのは、手っ取り早いチュートリアルやレビューを通じて、自分の純粋な意見や製品の使い方を自然に紹介できるということだ。この手法は、特に若いオーディエンスに効果的である。
YouTubeの英国におけるラグジュアリーリードであるヘザー・クラーク氏は、Z世代の消費力が伸び続けるなか、ブランドにとって、YouTubeショートは多くの若い購買層に商品を知らせる機会だと考えている。「すでに世界最大の世代であるZ世代の59%は、ショート形式の動画アプリを使って何かを発見し、その後にそれに関する長編の動画を視聴している。したがってショートは、ブランド(と消費者)のエンゲージメントの好ましい循環を促進するのに役立っている」。
この調査で分析されたショートの中では、ルーチンに関する動画とチュートリアルスタイルの動画がもっとも注目され、エンゲージメントを集めた。ルーチン動画は、1本あたり平均42万8000ビュー以上を獲得している。チュートリアルは僅差で2位となっており、1本あたりの平均ビュー回数は38万5000以上だった。だがより多くの視聴者が「いいね!」を通じてルーチン動画よりもチュートリアルに関与している。平均して、チュートリアルは約2万1000の「いいね!」を獲得したのに対し、ルーチン動画の「いいね!」は約1万6000だった。
チュートリアルやルーチン動画は、カジュアルなフォーマットで製品の効能や正しい使い方を見せる絶好の機会であるため、インフルエンサーと協力しているブランドは、視聴者を惹きつけるためにこの手の動画フォーマットを検討すべきである。特に、Glossy+リサーチの観察によると、押し付けがましさを感じさせないキャッチーな製品デモンストレーションが理想的だ。
ニュートロジーナ(Neutrogena)では、2021年9月にTikTokに参加して以来、「革新的で親しみやすい方法でスキンケアの情報と認識を広める」ショート形式のコンテンツに教育的アプローチをとってきたと、同社のグローバル責任者ナターシャ・ハウブリッチ氏は語る。
消費者、特にZ世代に向けた潜在的な誤情報に対抗するため、ニュートロジーナでは、有料とオーガニックのインフルエンサー、皮膚科医、科学者を混在させたコンテンツを活用している。「今後もこのようなプラットフォームを通じて、引き続き当社の教育メッセージを拡大し増幅させていく」とハウブリッチ氏は述べ、こうしたコンテンツがブランドにとってさらなるビュー数やエンゲージメントを牽引していると付け加えた。
チョーズンフーズ(Chosen Foods)やフェンダー(Fender)といった他のブランドも、TikTokの自社チャンネルで教育的アプローチをとっている。グロースコンサルティング会社プロフェット(Prophet)のパートナー、ユニス・シン氏はGlossyに対し、こうした情報とエンターテイメントを組み合わせた「インフォテインメント」なアプローチは、消費者が製品を検討してから購入するまでの最終ステップを支援していると説明した。
「今日のスキンケア消費者は、意思決定をする前に非常に多くの情報を得ている」とシン氏は言う。「ニュートロジーナがそのようなストーリーテリングを行っているのは賢い。ブランドとして、検討段階にいる消費者と出会い、すばやく購入してもらう方法を考える必要がある」。
リポストだけでなく、ショートのためのオリジナル動画コンテンツが制作されている
YouTubeショートの人気が高まるにつれて、ブランドはこのプラットフォームでさらなる実験を始めている。一部のブランドは、TikTokやインスタグラムから既存のコンテンツを再利用するのではなく、ユーザー消費の急増を利用すべく、オリジナルのショート専用動画を開発し投資しようとしている。たとえば、イプシー(Ipsy)は、ショート専用のオリジナルンテンツを開発し、投資する方法の評価を行っている。
「YouTubeショートには現在大きなスケールと勢いがあり、YouTubeはそのプラットフォームでショート形式の動画を見るように人々を促している」と、イプシーのソーシャルメディア・シニアディレクターのタイラー・ウェントワース氏は述べた。「我々はいま、YouTubeショートを主要なソーシャルチャネルとして評価する必要があり、YouTubeショートのための特別な新規オリジナルコンテンツを作るために社内の制作チームと話し合っている」。
2022年、この調査の対象となっているインフルエンサーの大半は、TikTokやインスタグラムのコンテンツをショートにリポストした。インフルエンサーによって投稿されたオリジナル動画の数は少なかったが、その大半はYouTubeの長編コンテンツの再投稿かティーザーだった。小規模なチャンネルを持つインフルエンサーは、TikTokやインスタグラムで多くのフォロワーを獲得できるため、そうしたプラットフォーム向けにオリジナルコンテンツを作成することにかなり力を入れている。だがショートが進化し続け、ショートのアルゴリズムから支持を得る戦略が明らかになるにつれて、ブランドもインフルエンサーも、スポンサードであれそうでないものであれ、ショート向けのオリジナルコンテンツを考案して制作する必要性が出てくるだろう。
オリジナルのショート動画フォーマットを構築する上での別の展開として、ショッパブルショートが2022年6月にデビューし、視聴者がショート形式の動画で紹介された商品を購入できるようになった。今回の調査対象のインフルエンサー11名のうち、昨年スポンサードまたはショッパブルショート動画を投稿したのは、エイヴァ・リー氏、レイモン・ペイガン氏、ハイラム・ヤーブロ氏、ケイト・ガードナー氏の4名だけだった。だがショッパブル動画は、インフルエンサーやブランドにとってビジネスチャンスの拡大が証明されつつある。特に競合のTikTokショップが最近登場しており、これも同様に動画で紹介された商品を直接購入できるようになっている。
YouTubeショッピングパートナーシップのマネージングディレクターであるブリジット・ドーラン氏によると、YouTubeショートでもっとも売れているカテゴリーは、美容、ファッション、テクノロジーだという。「ショート形式の動画をショッパブルにしてから、さらに多くの(ショッピング可能な)アクティビティが見られるようになった」と同氏は述べている。「これは楽しい体験の一部だ。クリエイターを視聴し、クリエイターが商品について語り、視聴者はその意見を評価して信頼する。そしてその後、その場で商品を購入することができる」。
調査結果
アーリーアダプターと継続的なショートの制作者は高いエンゲージメントから利益を得ている
この調査の対象となったインフルエンサー11名は、2022年に全員がショートコンテンツを投稿しており、投稿されたショート動画1本あたり平均して12万8000ビュー以上を獲得している。もっとも小規模なチャンネルでさえ、動画1本あたり平均3000ビュー以上となっている。YouTubeでコンテンツを探したり、特定の製品やブランドのコンテンツを求めている長編形式の動画の視聴者にくらべて、ショートの視聴者は、一度に多くの動画を気軽にスクロールし、ブランドのコンテンツに対してより受動的である可能性に注意することが重要である。
ショート形式のチュートリアルとルーチンの動画がもっとも注目されている
チュートリアルは、昨年インフルエンサーが投稿したショートの中でもっとも一般的なタイプだった。ルーチン動画は、視聴者の間でいちばん人気のあるタイプのショートで、平均40万回以上視聴されている。このタイプの教育コンテンツは、新製品や健康・美容のルーチンを生活に取り入れたいと考えている視聴者に最適である。
ブランドはショートのスポンサーシップにオリジナルコンテンツを求めている
現在、ショートのオーディエンスを増やしたいと考えているインフルエンサーは、TikTokやインスタグラムのコンテンツをYouTube用にリポストしている。しかし、ブランドはYouTube用に別の戦略を立て始めている。ショッパブルコンテンツやスポンサードコンテンツがYouTubeで増え続ける中、インフルエンサーはショート専用のオリジナルコンテンツをさらに制作するようになっており、そのいくつかはショッパブルである。
[原文:Glossy+ Case Study: How brands and influencers are diving into YouTube Shorts]
DANIA GUTIERREZ(翻訳:Maya Kishida 編集:山岸祐加子)
