屈指の強烈公道マシン アストン マーティン・ヴァルキリーへ試乗 NA V12 1156psのHV 後編
ドライバーの判断力的を狂わせる加速
バーレーン・インターナショナル・サーキットで初試乗となった、アストン マーティン・ヴァルキリー。最初のスティントは激しい勢いに圧倒され、シフトライトが点灯する前にシフトアップを繰り返した。
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余りの荒々しさで、レブリミットまで引っ張ることができないのだ。唯一レッドゾーンまで迫れたのは、長いメインストレートのみ。6.5L V型12気筒エンジンは鼓膜を痛めそうな音量でノイズを放ち、これも抑制心を与える。

アストン マーティン・ヴァルキリー(欧州仕様)
加えて、ストレートエンドまで加速し続けることは、ドライバーの判断力的にも簡単ではない。瞬間的に速度が上昇するため、スピード感を正確に掴むことが難しいのだ。つまり、コーナー手前のブレーキングポイントも読めなくなってしまう。
ブレーキは、巨大なカーボンセラミック・ディスク。制動力も凄まじく、初めは恥ずかしいほどで前でスピードが落ちきってしまった。
試乗車のブレーキペダルには、踏み始めに若干の無感触状態が感取された。ハードブレーキングを繰り返すと、最終的な制動力は低下していないようだが、減速の勢いがごく僅かに弱まるような感覚もあった。
もっとも、筆者がステアリングホイールを握る前に、別のドライバーによって数スティント走り込んでいたことを考えれば納得できる。耐久性に間違いはない。
タイヤは公道用パイロットスポーツ・カップ2
少し驚かされたのが、ラジエーター・クーラントの温度が危険な域へ上昇すると、V12エンジンのパワーへ制限が入るという制御。保護のため、自動的にレッドゾーンの回転数が絞られるそうだ。
半周ほど低い回転域を保って走行すると、タコメーターのレッドゾーンは本来の位置へ戻った。ピットレーンでアストン マーティンの技術者に確認すると、気温の高い中東の環境に苦慮していると話していた。

アストン マーティン・ヴァルキリー(欧州仕様)
最初のスティントは、ヴァルキリーの甚大な動力性能に順応するだけで精一杯。コーナーは、ストレートでの加速体験に向けた休息時間のようなものだった。
コスワースの技術者によれば、エンジンはリビルドまでに8万kmは耐えられるという。そこまでオーナーが走り込むとは想像しにくいが。ERSボタンが有効なのは、低い速度域。メインストレートの後半で押しても、加速力に大きな違いは生じないようだ。
しばしの休憩を挟み、2回目のスティント。シャシーの能力に迫ろうという気合で望む。
横方向のグリップ力は、ヴァルキリーで異次元とは感じられない数少ない部分。公道走行が可能な、ミシュラン・パイロットスポーツ・カップ2を履いているためだ。オプションで、より積極的なパイロットスポーツ・カップ2 Rも選べるという。
グリップ力は高いものの、スリックタイヤを履くサーキットマシンほどではない。旋回性は鋭いものの、タイトコーナーではライン維持のため、トラクション・コントロールが介入していた様子からも理解できる。
1156psを考えればシャシーはフレンドリー
高速コーナーではダウンフォースが増大し、安定性が見違えて高くなる。アクティブ・サスペンションもそれに応じて変化し、操縦性に重さが増すことははなかった。
トラクション・コントロールの設定を弱めても、気難しさが表出することはない。グリップ状態からスリップ状態への移行は若干唐突ながら、ドライバーは把握しやすく、リカバリーも難しくはないと感じた。

アストン マーティン・ヴァルキリー(欧州仕様)
これは、ランオフエリアが広く取られたドライなサーキットでの話。濡れた一般道では、異なる印象を受けるはず。少なくとも、1156psの最高出力を許容する特性を考えれば、シャシーはドライバーにフレンドリーではある。
もっとも、コクピットは間違いなく狭い。強い入力が加わると、痛みを伴う衝撃が伝わってくる。アクティブ・サスペンションのアーバン・モードはしなやかさが増すが、全体の質感が高まるわけではない。運転する環境は選ぶといえる。
写真撮影のため少し緩やかに走るタイミングで、ヘルメットからアクティブ・ノイズキャンセリング・ヘッドセットへ交換してみた。これは、かなり有効といえそうだ。4000rpm程度まで回して、実際のエンジン音と聴き比べたから間違いない。
難聴になるのを防ぐためにも、この保護装備を身に着けて運転する必要性はある。必要な周囲の音も聞き取ることができる。外で眺めている限りは、素晴らしいサウンドなのだけれど。
最高傑作以外の何モノでもない
ヴァルキリー誕生のきっかけは、当時のアストン マーティンCEO、アンディ・パーマー氏と、マーケティング部門のサイモン・スプロール氏、レッドブル・レーシングのエイドリアン・ニューウェイ氏とクリスチャン・ホーナー氏の4名による昼食だったという。
パーマーとスプロールの2人は、既にアストン マーティンから離れている。それでもレッドブル・レーシングは、当初の崇高なビジョンを具現化するために、数年間もの時間を費やしてきた。

アストン マーティン・ヴァルキリー(欧州仕様)
多くの困難を乗り越え、ようやく生誕に至ったアストン マーティン・ヴァルキリーは、まさに頂点に君臨する公道用モデルだと断言できる。妥協のない、最高傑作以外の何モノでもない。
更に速い、サーキット専用のRB17が控えているという事実も、興味深いが。
アストン マーティン・ヴァルキリー(欧州仕様)のスペック
英国価格:250万ポンド(約4億250万円)
全長:-mm
全幅:−mm
全高:−mm
最高速度:354km/h
0-100km/h加速:2.5秒
燃費:−km/L
CO2排出量:−g/km
乾燥重量:1270kg
パワートレイン:V型12気筒6499cc自然吸気+電気モーター
使用燃料:ガソリン
最高出力:1156ps/1万600rpm(システム総合)
最大トルク:94.1kg-m/7000rpm(システム総合)
ギアボックス:7速シーケンシャル・マニュアル
