マニア心をくすぐるスプリント トライアンフ・ドロマイト 英国版クラシック・ガイド 前編
ミケロッティの代表作の1台
増えた開発コストを販売収益で回収しようと、常に努力を続けてきたトライアンフ。ブランドイメージが伴わなかったとしても、革新的な技術を搭載したモデルの創出は得意といえた。
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今回ご紹介する1972年発売のドロマイトも、そんな1台。前輪駆動の1300からスタートし、一定の支持を集めた後に後輪駆動版も追加されている。

トライアンフ・ドロマイト・スプリント(1973〜1980年/英国仕様)
スタイリングを手掛けたのは、イタリアの巨匠、ジョヴァンニ・ミケロッティ氏。フェラーリのグランドツアラーから日野のサルーンまで、多くのモデルに関わってきた彼だが、代表作に含まれるのがドロマイトだろう。
均整の取れた上品な見た目に、上質なインテリアが組み合わされ、メディアの評価も高かった。荷室は少々狭かったけれど。
1972年のモーター誌を振り返ってみると、「価格帯を問わず、ライバル以上にドロマイトはドライバーにとって快適なクルマです。シートの調整域が大きく、操縦系のレイアウトは整い、他メーカーがお手本とすべきものでしょう」。と評価している。
ドロマイトで、イメージリーダーを務めたのが1973年のスプリント。シングルカムで16本のバルブを駆動するSOHC 4気筒エンジを搭載し、ラリーやレースで活躍している。
「この価格帯ではライバル不在といえる、価格価値に優れたモデルです。3200kmほど試乗し、仕上がりに納得しました。われわれも1台注文したという結果が、高い評価を物語ります」。とモーター誌は綴っている。
多能なクラシックとしてオーナーを満たす
スプリントの見た目の特徴といえたのが、標準装備のビニール張りルーフとアルミホイール。これは英国車初の設定だった。
よりベーシックな位置付けの、ドロマイト 1850でも装備は充実。当時としては珍しく、熱線入りのリアガラスも与えられていた。ただし、初期型ではスイッチがショートする可能性があるから、クラシックとして楽しむ場合は注意が必要だろう。

トライアンフ・ドロマイト・スプリント(1973〜1980年/英国仕様)
パワートレインに合わせて、トランスミッションのギア比も適切に設定されていた。スプリントは1850よりファイナルギアがショートで、レシオ幅が広く、3速からオーバードライブまで活かした効果的な走りを可能としていた。
排気量の小さい1500TCはややギア比が高く燃費重視といえたが、充分な能力は発揮した。乗りやすいファミリーサルーンだったといえる。
ドロマイトの生産は1980年に終えるが、中古車の価格は低迷。価値が軽んじられ、スプリント以外には殆ど注目が集まらなかった。その結果、残存台数は多くない。スプリント風に改造された例もあるので、購入時はじっくり状態を確かめたいところ。
洗練された万能サルーンとして、英国では支持を集めたトライアンフ・ドロマイト。今でも、多能なクラシックとしてオーナーを満たしてくれることだろう。
オーナーの意見を聞いてみる
自動車の取り引きに関わってきたリー・アレン氏は、ドロマイトを長く愛してきた1人。「わたしが13歳の頃に、父から100ポンドでドロマイト 1300を買いました。それが自分にとって初めてのクルマ。調子を整えて転売しています」。と過去を振り返る。
「40歳になった頃、もう一度ドロマイトを購入。それ以来夢中になって、5台は手にしていますね。特に気に入っているのが、5000kmも走っていない1500HLです」

トライアンフ・ドロマイト・スプリント(1973〜1980年/英国仕様)
「ミモザ・スプリントも持っています。シャシー番号は276で、1980年式のワンオーナー車。走行距離は4万7000kmほどで、ゆっくりレストアを施している途中です」
「このブルーのスプリントを購入した理由は、前オーナーが多くのコンクールで受賞した、有名な車両だったから。わたしも大切に維持しているので、亡くなった彼の妻も喜んでくれているようです」
「入手した時は若干ヤレていましたが、タイミングチェーン交換などの整備を加え、復調させました。コストパフォーマンスには優れると思います。とても速く走りますよ。他のドライバーが驚くくらい」
英国で掘り出し物を発見トライアンフ・ドロマイト・スプリント(英国仕様)
登録:1977年 走行:14万8200km 価格:1万2995ポンド(約208万円)
レーシングカー・プロジェクトの資金調達のために販売されている。2014年にリビルドされ、状態はかなり良いようだ。2019年に再塗装済みで、ビニール製のルーフは新品。整備履歴が整い、メンテナンスも今まで怠りはない。

トライアンフ・ドロマイト・スプリント(1977年/英国仕様)
ステンレス製エグゾーストシステムに電子制御イグニッション、電動ファン、高性能ブレーキなど、望ましいアップグレードが施されている。車高が僅かに落とされ、ミニライトのアルミホイールが決まっている。内装はレザーで新調済み。
パンサー・リオ・スペシャル(英国仕様)
登録:1977年 走行:5万7700km 価格:2万1000ポンド(約336万円)
ドロマイト・スプリントをベースにコンバージョンされた、パンサー・リオ。8台が残存すると考えられているが、その貴重な1台だ。当初のボディカラーはブルーだったが、ブラック・レザーの内装に合わせて、2017年に再塗装されている。
パワーウインドウにエアコン、ATなど装備は充実。これまで大切に維持されてきたことを示すように、整備履歴もすべて残っている。新車時の価格はドロマイト・スプリントの3倍だった。レアなクルマを入手するチャンスだ。
中古車購入時の注意点などは後編にて。
