平岩外四氏の共生の思想
 旧経団連は初代の石川一郎氏から今井敬氏まで9人の会長を生んだ。現経団連は初代の奥田碩氏から現在の6代・十倉雅和氏まで6人の会長が続いているが、各会長ごとにそれぞれ課題を抱え、その解決に奔走してきた。

 筆者は、旧経団連の第5代会長・稲山嘉寛氏(当時新日鉄会長)の時代からインタビューなど取材に当たってきたが、経済人の意識、考え方がはっきり変わったと認識させられたのは、第7代・平岩外四氏(当時東京電力会長、1914―2007)のときだ。財界総理が製造業からエネルギー・サービス産業出身者に変わったということ。

 平岩氏は1990年12 月から1994年5月までの3年半、会長を務めた。バブル経済が崩壊し、国外では旧ソ連邦崩壊でグローバル化が一気に進んだ時期。国内は構造不況に陥り、数年後には大手銀行、証券会社の経営破綻も起き、新しい産業秩序づくりを模索。経団連企業行動憲章の制定や企業モラルの確立に腐心。さらに、細川内閣の下で規制改革推進にもたずさわった。

 また、『共生の思想』を掲げ、アジアや欧米など海外諸国との共生、そして今で言う各ステークホルダーとの共生など、産業人、企業人としての新しい生き方を訴え続けた。

 平岩氏自身は読書人で、「思索の人」であった。その平岩氏が依拠した東京電力は、東日本大震災(2011)で福島第一原発が棄損し、再生の途上にある。

『財界』誌の70年の歩みの中で、前半40年は戦後復興からバブル経済、後半30年は日本の〝失われた30年〟と重なる。

 日本再生へ向けて、「人」の潜在力掘り起こしに、『財界』誌も貢献していきたい。

十倉雅和さんの視座
 経団連現会長の十倉雅和さん(1950年生まれ)は、「社会性の視座を持っていこう」と呼びかけておられる。

 グローバルコモンズという考えに通ずる考えで、「経済合理性の一辺倒ではやっていけない時代」と十倉さんは語る。

〝新しい資本主義〟論が盛んだが、「資本主義とか市場制度は万能ではないけど、極めて優れた制度。効率的に資源配分できているし、
イノベーションが起こりやすいシステムです」という考えを示す。

 もちろん、資本主義にも格差問題など課題はある。「ええ、いろいろ問題はあるけれども、資本主義を克服するのもまた資本主義であ
ると」と十倉氏。

 日本の思想の強さとは何か?

「よく言う『三方よし』(売り手よし、買い手よし、世間よし)とか、住友グループの宣伝になるけれど、自利利他、公私一如の精神
とかね。企業も社会の構成要員という考えは昔からありました」

 労働の流動性を含めて、「人」の可能性を掘り起こすときである。