卵巣凍結保存する予定の女児と母親(画像は『The Mirror 2022年7月23日付「EXCLUSIVE: ‘We’re freezing our 17-month-old daughter’s ovaries so she can be a mum one day’」(Image: Matthew Pover)』のスクリーンショット)

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イギリス在住の1歳5か月の女児は2か月前、稀な脳腫瘍である「上衣腫」と診断された。まもなく化学療法を開始する予定だが、「治療により将来不妊になる可能性がある」と医師から説明を受けた両親は、女児の将来のため卵巣組織を凍結保存することにしたという。英国でこの処置を受けるのは女児が最年少だといい、母親は「いつかママになりたいと思った時に可能性が残されていることは素晴らしいこと」と話している。『The Mirror』などが伝えた。

英タイン・アンド・ウィア州のウィットバーンに住むタルーラ・コックスちゃん(Tallulah Cox、1)は2か月前、稀な脳腫瘍である「上衣腫」と診断された。

8月から化学療法を開始する予定のタルーラちゃんは、治療により将来不妊になる可能性があるという。そのため両親はタルーラちゃんの卵巣組織を凍結保存することにしたそうだ。

母親のゾーイさん(Zoe、36)は、タルーラちゃんの病気が発覚した経緯についてこのように振り返っている。

「水痘(水疱瘡)にかかった後、何かを飲んだあとに体調を崩すようになったんです。最初は胃腸炎だと思い、家庭医(GP)のところに連れて行きました。それから1週間ほど体調が悪く、首が動かせないような状態になったので再び病院に連れて行ったのです。医師は髄膜炎の可能性があるといい、抗生物質を処方し腰椎穿刺のテストを行いました。そして翌朝のMRI検査で娘の脳に腫瘍があると判明したんです。ロイヤル・ビクトリア診療所に搬送されたタルーラはさらなる検査の結果、脳室の壁を覆う細胞から発生する上衣腫を患っていることが分かりました。」

「腫瘍があると言われた時はとてもショックで…。まさかそんな深刻な病気だなんて思ってもいませんでしたから。医師によると、腫瘍はプラムほどの大きさで見つかることが多いそうですが、幸いにもタルーラの腫瘍はぶどうの大きさだと言われました。早期発見できたこと、それが唯一の救いでした。」

診断を受けた翌日には脳腫瘍を取り除くための手術を受け、現在のタルーラちゃんはマンチェスターのクリスティ病院で陽子線治療を受けている。

陽子線治療は通常1歳6か月以上が対象となるが、手術後の高い回復力が認められたタルーラちゃんはこの治療を受けることができたという。

「手術の際、回復には時間がかかると思われていましたが、翌日には元気な姿を見せてくれました。まだ幼いタルーラですが、陽子線治療を受けられる強さがあることを医師たちに示したのです」とゾーイさんは語る。

タルーラちゃんは今後「ロイヤル・ビクトリア診療所(Royal Victoria Infirmary)」で化学療法を受けるそうで、その前に卵巣から卵巣皮質(卵巣の卵を作る部)を取り出して凍結する予定だという。

不妊治療クリニック「TFP Fertility」の医長で卵巣凍結の専門家であるティム・チャイルド教授(Tim Child)は、この技術について次のように述べている。

「化学療法は卵巣にダメージを与えます。その治療を受ける前に卵巣組織を凍結し、将来的に体内に戻して卵子ができるかどうかを確認するというものです。この方法はまだ広く行われているわけではなく、成人や思春期以降の女の子に多い傾向があります。また高齢の患者さんでも効果があることが分かっており、実際に冷凍保存した卵巣組織を体内に移植した後に赤ちゃんが生まれた例もあります。」

「幼い子供でも組織の凍結は可能ですが、1歳5か月という年齢は私が知る中では最年少です。でも彼女が妊娠を希望する頃にはきっと研究ももっと進んでいることでしょう。患者さんが幼い子供の場合、未熟な卵細胞が極めて小さいことが難点です。私たちは腹腔鏡を使って卵巣の一部を切除した後、組織を調べてから凍結します。未熟卵の中で最も成熟したものを見つけ、その中に卵胞があるかどうかを顕微鏡で確認するのです。この組織には何千もの未熟卵がありますが、あまりに小さいので見ることができません。将来的に卵巣組織を移植した際に自然妊娠のチャンスが得られるようにしたいと考えているため、私たちは少しでも多くの未熟卵を探しています。」

「いつか母親になれるように」そう願ってタルーラちゃんの卵巣凍結を決意したというゾーイさん。そんな彼女は愛娘へ思いをこのように語っている。

「私たちは娘の未来に希望を抱いています。幸いにも腫瘍は早期に発見されました。タルーラはいつも笑顔で、何事も前向きにとらえています。命を救うことが第一ですが、化学療法によって不妊になる可能性があると言われた時、私は脳腫瘍の次にそれが怖いと思いました。娘はまだ1歳5か月ですが、いつかは母親になることを考えるでしょう。なので娘の卵巣組織を凍結保存して、将来子供を持つ可能性を残すことは素晴らしいことだと思います。私はずっと母親になりたいと思っていたので、娘にもその機会を与えてあげたいのです。」

画像は『The Mirror 2022年7月23日付「EXCLUSIVE: ‘We’re freezing our 17-month-old daughter’s ovaries so she can be a mum one day’」(Image: Matthew Pover)』のスクリーンショット
(TechinsightJapan編集部 上川華子)