【痛車の世界】クルマのボディにアニメや漫画、ゲームなどのキャラクター 著作権や版権は大丈夫?
痛車とは何か? 世界に広がる日本発text:Kumiko Kato(加藤久美子)
「痛車」とはもともと、オーナーの自虐も込めて「見ていて痛々しいクルマ」というところから生まれたカスタムカテゴリーの1つである。
アニメや漫画、ゲームなどの作品に登場するキャラクターをボディに大きく貼ったものが主流だが、それ以外にもさまざまな種類がある。
「痛車」とはもともと、オーナーの自虐も込めて「見ていて痛々しいクルマ」というところから生まれたカスタムカテゴリーの1つ。キャラクターをボディに大きく貼ったものが主流だが、それ以外にもさまざまな種類がある。 加藤博人例えば、フェンダーなど車体の一部分だけにデザインを貼る「フェンダー痛車」もあれば、「藤原とうふ店仕様のAE86トレノ」のように、作品に登場するクルマを、ほぼ完ぺきに再現する痛車もある。
アニメ「ストライクウィッチーズ」などの航空系作品では大空をイメージしたデザインや、登場する戦闘機を模したデザインなどがこれに該当する。
作品の世界観をデザインで表現するタイプの痛車である。
最近ではスーパーGTやスーパー耐久、N1耐久、世界ラリー選手権などに参戦する実際のマシンのデザインを再現し、それにキャラクターの絵を貼るという「レプリカ痛車」もクルマ好きを中心に人気を博している。
映画「ワイルド・スピード」などの人気カーアクション映画の世界観に着想を受けたスポコン風のデザインも人気だ。
なお、元々ゲームやアニメが主体で、クルマはそれほど好きではない、興味がない痛車オーナーは「いかにキャラクターを大きく貼れるか」をベースに痛車を作るケースが多い。
大きめのSUVやミニバンなど、貼る面積が広いことが第一で、スポーツカーの要素はそれほどでもないクルマを痛車にする例もある。
若者のクルマ離れを食い止める理由に
痛車は近年、10〜20代の若者がクルマに興味を持つ1つのきっかけになっていることは事実だ。
今や大勢の若者たちが愛車に乗って集う痛車イベントが全国各地で開催されており、町おこしにも一役買っている。
最近ではスーパーGTやスーパー耐久、N1耐久世界ラリー選手権などに参戦する実際のマシンのデザインを再現し、それにキャラクターの絵を貼るという「レプリカ痛車」もクルマ好きを中心に人気を博している。 加藤博人2020年9月に開催された国内最大の痛車イベント「EMTG」では、全国から展示車と観覧車で合計700台以上が参加した。
愛車とともに参加する自動車ミーティング系のイベントにおいては、10〜20代の若者層が占める割合がもっとも高いと思われる。
ちょっと古い日本製スポーツカー人気と相まって海外でも痛車の人気が高まりつつある。2019年11月の広州モーターショーにおいても、痛車の展示スペースが広く取られて日本のアニメ作品が貼られた痛車がたくさん展示されていた。
ここでふと気になるのは、痛車に使われるゲームやアニメは制作元や出版社があり、制作者が存在する場合がほとんどだ。
つまり、何かしらの「著作物」をもとにしている。
著作権、版権はどのような扱いになっているのだろうか?
もともと、個人の趣味から始まった痛車ゆえ、個人が自分でカッティングシートに印刷して愛車に貼るスタイルであれば何の問題もないだろう。
しかし、近年はビジネスとして痛車を製作する会社も増えてきている。その場合はどうなるのだろうか?
公式許諾をとっている業者ごくわずか
「公式許諾」(正式に作品のデザインを使用して痛車を製作すること)を取得したうえで、痛車を製作している痛車専門店「じおくりえいと」(本社:埼玉県所沢市)に話を聞いてみた。
同社は痛車専門店の中では珍しく、もともとクルマのカスタムやチューニング、中古車販売をおこなっていた会社の一部門として誕生している。
同人誌は一次著作(版元様作品)をリスペクトして二次著作物として制作され、作者自らが手を動かし描く/創り上げる事で二次著作の関係が成立。しかし、一次著作の丸ごとコピーは海賊版として訴えられる。 加藤博人痛車業者の多くが、印刷業や看板業から始まっている中で、クルマ屋が始祖という形態は非常に珍しい。
――御社は数多くの公式許諾を取得していますが、他社も同様ですか?
「公式許諾(著作権運用)によって施工サービスをおこなっている会社は他にもありますが、少ないですね」
「版元商品化申請によって不特定のお客様に公式許諾施工サービスを提供しているのは、全国に数多ある業者の数%かと思います」
「当社は契約版元社数45社以上、公式許諾取り扱い作品150作品以上で、コンテンツ施工サービスが作品ポータルとして機能しています」
――痛車界における著作権は、どのような認識、対応が一般的ですか?
「コミックマーケットにて頒布されている『同人誌』と『同人誌印刷所』をイメージしていただければ痛車著作権対応の理解が深まると思います」
「同人誌は一次著作(版元様作品)をリスペクトして二次著作物として制作され、作者自らが手を動かし描く/創り上げる事で二次著作の関係が成立します」
「しかし、一次著作の丸ごとコピーは海賊版として訴えられます」
二次創作絵を施工するのが一般的
――では、二次著作物なら問題ないということでしょうか?
「一次著作物のコピーから生み出された施工物はお客様も危険に陥れるため、二次創作絵を施工する……というのが痛車作法としては一般的になっています」(じおくりえいと)
「版元の表向きの対応としては『痛車オーナーが二次創作した』となります」
「同人誌、コスプレの存在を認めて痛車のみ著作権法違反で摘発あるいは禁止するのは著作権運用のダブルスタンダードとなってしまうため、厳密な処理はおこなわない(おこなえない)……という暗黙処理となっています」
「厳密に言えば、同人業界も版元によってはレギュレーションが、かかり始めています」
「また、美少女ゲームメーカーは個人申請された痛車希望オーナーにビジュアルを供給しているケースがありますので、商品化契約をお持ちでない痛車業者でも一次著作による公式施工を実施しているケースもあります」
公式許諾を得ると何が可能に?
公式許諾を得ると具体的にどのようなことが可能になるのだろうか?
じおくりえいとの公式サイトに掲載されている「宇崎ちゃんは遊びたい!」を例に説明しておきたい。
同社の公式サイトには「宇崎ちゃん製作委員会様からの版権許諾のもと、公式ビジュアルを使用したオリジナルデザインが可能になりました」とのお知らせがある。版元名:宇崎ちゃん製作委員会 版権表記:(C)2020 丈/KADOKAWA/宇崎ちゃん製作委員会 じおくりえいとウザカワ系後輩とのドタバタラブコメディ作品の主人公「宇崎ちゃん」は、2019年10月に献血PRのキャラクターとして赤十字血液センターとコラボレーションをおこなったことでも知られる。
そして、版権の公式許諾を得て施工が可能となる対象物は以下
1.クルマ/バイク/自転車
2.宅配可能なA3サイズ以上の平面を持つ家具類
3.楽器ケースや楽器(小ステッカーワンポイントは不可)
4.PC/タブレット(平面ラップ系)
5.その他、施工可能な対象物はご相談ください
最後に気になる「費用」について聞いてみた。
公式許諾の有無で痛車の施工費用に違いは出てくるのだろうか?
「痛車に使用するラッピング素材(仕入)/人件費/テナント料や運営費は日本では極端に変わらないので差が生じるとすれば、著作権料(わずか数%)位ですね。公式許諾施工だから特別高くなる訳ではありません」
「公式許諾での施工サービスはSNS情報発信やメディアからの取材を受けていただく際にも安全、安心……というメリットがあります」
「お客様にも存在を知っていただくチャンスが発生するため、版元様、お客様、メディア様も含めて皆様が幸せな関係となります」
公式許諾はマストではなく、最終価格に大きく影響することはない。
しかし、「みんなが幸せな関係」になることはお金や規則を超える価値になると言えそうだ。
