浜松餃子は肉汁たっぷりでジューシーだ

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―[40代日雇い男「Uber Eats」自転車出稼ぎ旅【東京発沖縄行】]―

 僕は普段、日雇い派遣などのしごとで稼ぎつつ、時間を見つけてはタイなどの東南アジアを中心に旅してきた。この状況では海外旅行には行けそうにないが、日本国内ならば比較的自由に動けるようになってきている。旅がしたい。でも、社会の底辺で生きる僕にはお金がない。そこで「Uber Eats」の配達で稼ぎながら国内を自転車で旅するという方法をとることにしたのである。

◆雨の日と日曜日はいちばんの稼ぎどき

 旅に出て13日目、僕は静岡県の浜松にいた。天気予報のとおり、この日は朝から雨がパラついていた。こんな雨の中を配達するのは僕も嫌だった。が、浜松では晴れの日は配達リクエストが非常に少ない。この地でウーバーの配達で稼ごうとするならこういう雨の日を狙っていくしかなかった。

 ホテルの朝食ビュッフェを食べ、レインコートを着て自転車で配達に出かけた。iPhoneには防水カバーを装着する。これを付けるとiPhoneが非常に使いづらくなってしまうのだが、雨から守るためには仕方がない。

 思ったとおり、配達リクエストは晴れていた前日よりも多く入った。午後5時頃まで稼働してこの日の収入は4701円だった。

 そして14日目。天気は晴れ。しかし、この日は日曜日。一週間の中でもっとも配達の配達リクエストの多い曜日である。この日も雨の降っていた前日と同じように順調にリクエストが入り続けた。

 配達で浜松の街中を走っていると、ふいに石垣の上に建てられた城が視界に飛び込んできた。浜松城である。この日もまあまあ稼げていたので、ウーバーの配達アプリをオフにして休憩を兼ねて少し観光していくことにした。

 石段を上り、窓口で入城料の300円を払う。城内には戦国時代の甲冑や刀などが展示されていた。いちばん上のフロアからは浜松の街並みを一望することができた。周囲に張り巡らされたフェンスを掴んでその向こう側に広がる景色をぼんやりと眺めた。

 休みたい……。

 ため息とともにそんな思いが溢れた。ここしばらくは自転車で長距離を移動するか配達するかだけの日々。足はずっと筋肉痛の状態が続いていた。しかし、配達してお金を稼がなければすぐに旅費が底をついてしまうので休みたくても休めなかった。名古屋まで行けば少しはのんびりと過ごせるだろうか……。

◆名古屋に向けて出発

 15日目、朝食ビュッフェで腹を満たしてからホテルをチェックアウト。名古屋に向けて出発した。

 僕が名古屋に急ぐのには理由があった。ひとつは名古屋のような大都市ならば確実に稼げるだろうということ。そしてもうひとつは宿泊費がいちばん安いところで約1000円と非常に安いということである。それだけ宿泊費が安ければそこまで必死に稼がなくていいので、丸一日ゆっくり休んだり、観光したりする余裕も出てくるだろう。

 しかし、浜松から名古屋までの距離は約115キロととてつもなく遠い。もう嫌だ。もう走りたくない……。そう悲鳴をあげる体に鞭打って自転車のペダルを漕ぐ。

 さらに悪いことに昼頃からはポツポツと雨が降りはじめた。せめてもの救いは坂道がそれほど多くないことだった。

◆ゲストハウスの主人もUber Eats配達員

 この日から4泊予約していた名古屋のゲストハウス「Hostel Ann」に到着したのは午後8時頃。浜松を出発したのは午前8時頃だったので、途中で何度かの休憩を挟んでたっぷりと12時間もかかったことになる。

 老舗旅館の風情のこぢんまりとした佇まいのゲストハウス。チェックインの際、ここの主人が僕のウーバーのバッグを見て訊いてきた。

「それはウーバーのバッグですか?」
「ええ、これで旅費を稼ぎながら自転車で旅してるんですよ」
「僕もウーバーの配達やってますよ」
「え、そうなんですか!」

 最近は宿泊客が減ってきているので、宿泊業の合間にウーバーの配達で稼いでいるのだという。しかし、彼は最後にこう付け加える。

「名古屋はあまり鳴らない(配達リクエストが入らない)ですよ」

 あまり鳴らないといってもいったいどのくらい鳴らないのだろう。名古屋では少しはのんびりできるだろうかと期待していたのだが、早くも先が思いやられてしまうのである。

【13日目】
<支出>
食費:1595円

<収入>
5964円

残金:4701円

【14日目】
<支出>
食費:715円
洗濯乾燥:450円
合計:1165円

<収入>
5216円

残金:8752円

【15日目】
<支出>
食費:1887円
宿泊費4泊分:4226円

<収入>
0円

残金:2639円

<取材・文/小林ていじ>

―[40代日雇い男「Uber Eats」自転車出稼ぎ旅【東京発沖縄行】]―

【小林ていじ】
バイオレンスものや歴史ものの小説を書いてます。詳しくはTwitterのアカウント@kobayashiteijiで。趣味でYouTuberもやってます。YouTubeで「ていじの世界散歩」を検索。