イオン東雲店のトイレットペーパー売り場(写真提供:東雲マン(しののめ)は湾岸都心で住むと案外良い所 さん。3月4日撮影)

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新型コロナウイルスに関するデマの影響で、小売店でのトイレットペーパーが品薄となる中、スーパーマーケット「イオン」の一部店舗で相当数のトイレットペーパーが入荷・販売されていることが、ツイッター上で称賛を集めている。「おひとり様10点まで」と掲げているイオン東雲店の写真も拡散された。

イオン(千葉市)の広報担当者は2020年3月5日、J-CASTニュースの取材に、一部店舗では「入荷体制が整っていることをお客様にお伝えする意味も込めて、特設売り場を設けて告知しています」と話した。

「これだけあるなら、無理して買わなくても大丈夫じゃん!って思わせる」

「こんなに訴えかけてくれるなんて最高です」「近所のイオンのやる気を感じた!」。ツイッター上では4日ごろから、複数のユーザーがそんな声とともに店内の写真をアップし、拡散された。イオンの店内だといい、整然と積みあがったトイレットペーパーが写されている。

4日のある投稿によると、イオン東雲店では、大量に陳列されたトイレットペーパーに「おひとり様10点まで」と書いた張り紙が掲示。商品自体も数百個はあろうかという数が陳列されており、ツイッター上では、

「なるほど。お一人様1点だと、購買意欲に火がついて、買う必要のない人まで買ったり、何度もレジに並んだりとかしたくなる。お一人様10点までって言われると、一気に購買意欲が萎える」
「圧倒的在庫数を見せつけることで消費者にこれだけあるなら、無理して買わなくても大丈夫じゃん!って思わせる」
「流言からくる不足感(恐怖心)に対しては、精神的に満たされるくらいの物量作戦で払しょくするしかない」

と買い占めや転売の抑制に一役買っていると評価する声が寄せられた。

イオンの広報担当は5日、J-CASTニュースの取材に次のように話す。

「今週末にかけて、トイレットペーパーの供給が平常通りに戻っていくことを方向性として示させていただいています。その一環で、東雲店、幕張店などの店舗にトイレットペーパーが入荷されてきています。他の店舗でも順次、通常どおりの入荷がなされていく予定です。今回、需要の増加で売り切れる時期がありました。ご迷惑をおかけしていた分、入荷体制が整っていることをお客様にお伝えする意味も込めて、特設売り場を設けて告知しています」

丸富製紙「個数では3000〜4000パックくらい」

新型コロナウイルス感染拡大の影響でトイレットペーパーが「品薄になる」というデマが流れる中、日本家庭紙工業会が2月28日、「トイレットペーパー、ティシューペーパーについては殆どが国内工場で生産されており、新型コロナウイルスによる影響を受けず、現在も通常通りの生産・供給を行っております」との声明を出すなど、業界ではデマを打ち消す動きが続く。

ツイッターでアップされている写真を見る限り、並んでいるトイレットペーパーは丸富製紙のものだ。同社もツイッターで3月2日、大量に製品を備蓄した倉庫の写真とともに「各地でトイレットペーパーが不足するなど、一部報道されておりますが、当社倉庫には在庫が潤沢にございますので、ご安心ください! 今後も通常通り、生産・出荷を行なっていく予定です」と呼びかけるなど、デマを打ち消してきた。

ただ、目下のトイレットペーパー不足については「製造はされているが、物流が間に合わない」というのが実態。物流の面はどのようにクリアしているのか。丸富製紙の担当者は5日、取材に対し「イオンさんの協力がなければ、あの量は店舗まで届けられなかった」と話す。

「我々にも通常の2〜3倍の受注があります。ただ、輸送用のトラックを急に増やすことができず、出荷量は通常の1.5倍程度にとどまっています。イオンさんから入荷のお願いがあって、そうした現状をお伝えしたところ、イオンさんの方でトラックを手配して取りに来てくださる、と申し出いただきました。当社は静岡県内でも製造していますが、関東にも一時的に需要が増加した場合のために在庫を置いていましたので、そこから供給させていただきました」

出荷量は、「正確な数は分かりませんが、400〜600ケース、個数では3000〜4000パックくらい」と見られるという。担当者は「我々としてはとにかく鎮静化し、平常に戻ってほしいというだけです」と話している。

イオン「売り場に物がないとお客様が安心できない」

こうした入荷の経緯について、イオンの広報に再度聞いたところ、詳細な流れまでは追い切れていないとのことだったが「いずれにしても、メーカーさんに在庫はあるが、ネックは物流で、トラックがなかなか手配できないという状況です。我々は自社での輸送ができるので、調整して、いくつかの店舗に今までの量より多く行き渡るようにしています」と話した。

大量に入荷・販売したのは、デマの影響による買い占めなどを鎮静化したいという考えから。「少し多めに供給し、お客様に安心感を与えたいと思っています。関係各社、省庁、政府でも冷静になるよう呼びかけている中、私たちとしては売り場に物がないとお客様が安心できないと思いますので、多くの量をお届けしている次第です」と話している。

また、東雲店の「おひとり様10点まで」の掲示は、店舗の判断で行っているものだといい、加熱するトイレットペーパー購入の鎮静化を図るための呼びかけの一環だとしている。

経済産業省の担当者は5日、取材に対し、次のように物流強化をしていると話す。

「メーカー在庫自体は倉庫にあります。ただトイレットペーパーはかさばるので、運送するトラックをたくさん配車しなければならず、小売店では売り場スペースの幅も取ります。小売店で在庫を大量に置いておけるわけではない商品なので、物流の強化が課題でした。その中で昨日から一昨日(3〜4日)にかけ、我々がお願いしていた物流関係の方で輸送量が増し、イオン様など一部小売店で並ぶようになりました」

通常時は1日あたり約2000万ロールを運ぶが、現在はその2倍の4000万ロールの運送に努めているという。経産省担当者は「落ち着いてきたら通常の物流量に戻していきますが、今はとにかく(需要が高いため)届けないといけない。物流サイドの協力を仰ぎながら全国に届けていきます」としている。

(J-CASTニュース編集部 青木正典)