イギリスに住む21歳の大学生の男性が、500mlのエナジードリンクを毎日4本空ける生活を2年間続けていたことが原因で、重度の心不全と腎不全を発症して58日間入院し、退院後も障害が残ったとの報告が、医学誌British Medical Journal(BMJ)に掲載されました。男性は報告書の中で「この経験は非常に大きなトラウマになりました」と語っています。

Energy drink-induced cardiomyopathy | BMJ Case Reports

https://casereports.bmj.com/content/14/4/e239370

Heavy Energy Drink Consumption Linked to Heart Failure in 21-Year-Old Man

https://scitechdaily.com/heavy-energy-drink-consumption-linked-to-heart-failure-in-21-year-old-man/

Young man suffered heart failure after having four cans of energy drink every day for two years | Evening Standard

https://www.standard.co.uk/news/health/young-man-suffered-heart-failure-after-having-four-cans-of-energy-drink-every-day-for-two-years-b929988.html

2021年4月15日にBMJに掲載された症例報告によると、男性は入院の4カ月前から息切れ、起坐呼吸(横になっていると呼吸困難が強くなること)、体重減少などに苦しんでいたとのこと。また、男性は大学に通っていましたが、入院の3カ月前には体調不良と無気力感で学業が続けられなくなり、大学を休んでいました。

一般の開業医の診察を受けた男性は、せきや発熱などと診断されて抗生物質を処方されていましたが、息切れと腹部膨満が悪化し他院を受診。膀胱から尿をほとんど排出できなくなる尿閉を伴った重い腎不全だということが判明し、入院して集中治療室で治療を受けることになりました。



報告書は、男性の生活習慣について「男性は3年前に禁煙した元喫煙者でした。また、アルコールや違法な薬物は摂取していませんでしたが、『エナジードリンク』の500ml缶を1日に平均4本飲む生活を2年間続けていました。このエナジードリンクは、1缶当たり160mgのカフェインに加え、タウリンやその他のさまざまな成分が含まれているものでした」と述べています。

男性は、血液検査や心電図、超音波検査などの精密検査により心臓と腎臓の両方に障害が見つかり、一時は両方の臓器の移植が検討されるほどでしたが、エナジードリンクの飲用をやめたことで急速に回復し入院から58日後に退院しました。退院後の患者は、心不全や動悸といった症状がなくなり、運動能力も大幅に改善したとのこと。しかし、心臓と腎臓にそれぞれ軽度と重度の機能低下が残ったままだったため、報告書には「いずれ腎移植が必要になると思われます」と記載されています。

ロンドンにある聖トーマス病院の医師であるグレイシー・フィスク氏らは、「この症例は、原因不明の心筋症の患者においては、特定の原因を慎重に探すことが重要であるということを強調しています。原因究明には、徹底的な病歴聴取に加えて、エナジードリンクを飲んでいるかどうかも含めるべきです」と述べました。



また、報告書には男性自身の証言も記載されており、その中で男性は「この経験は非常に大きなトラウマになりました。私は集中治療室にいる間せん妄に悩まされ、なぜ自分が集中治療室にいるのか分からないほどの記憶障害になりました。それに、常に動くことも話すこともできないという恐怖で眠れなくなったり、不安で押しつぶされそうになったりすることもありました。エナジードリンクやその内容物の影響については、もっとよく知られるようになるべきだと思います。エナジードリンクは非常に中毒性が高い上に、小さな子どもでも簡単に手に入れることができます。タバコと同様に、エナジードリンクにも潜在的な危険性を示す警告ラベルが必要なのではないでしょうか」とコメントしました。