写真/中島望(バッド・ルールの1打罰で初優勝を逃したウエブ・シンプソン)

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今季は世界中のゴルフ界でルールに絡む問題が多発しているが、米ツアーのチューリッヒ・クラシックで、またまた問題が起こった。しかも、その1打のせいで初優勝を逃してしまったかもしれないという最悪のタイミングで、コトは起こった。

ツアー3年目のウエブ・シンプソンは首位で最終日の15番を迎えた。フェアウエイ・バンカーの淵の難しい位置から第2打を打ち、なんとかグリーンを捉えた。ファーストパットを上手く寄せて、わずか30センチのパットを入れればパーセーブして2位との1打差を維持できるという状況だった。

その30センチのパーパットに入ろうとした瞬間、シンプソンは小さくテークバックした手を止めた。シンプソンの目には、ボールが微妙に動いたように見えたのである。シンプソンはルール委員を呼び、状況を説明。ルール委員は現行ルールに従って指示を出し、シンプソンはボールを元の位置(と言っても、ほとんど変わらないのだが……)に戻してパットし、沈め、1打罰を加えてボギーとなった。そのため、1打差で追い掛けてきていた同組のババ・ワトソンと並んでしまい、最終的には2人の2ホールに渡るプレーオフ。そして、勝利したのはワトソンだった。

アドレス後にボールが動いた場合、1打罰が科せられるというのが現行ルール。シンプソンの1打罰も、だからこそ科せられたわけだ。しかし、風やグリーンの傾斜によってボールが動いたとしたら、それはプレーヤーの責任ではないのに、どうして罰打が科せられるのか?これについてR&Aは「その問題は、この7年間ぐらい、ずっと討議を重ねてきた」ということで、このルールは近いうちに見直される可能性が高いそうである。

そう言えば、今年のマスターズから、新ルールが実施されている。プレーヤーやキャディがその場で肉眼で見てわからなかったボールの動きが高画質映像で見て「動いた」と判定された場合、旧ルールでは(スコア提出後なら)過少申告で失格になっていたが、新ルールでは失格は免除し、状況に応じた罰打のみを科することになった。

時代の変化に対応してルールが改訂されたのはウエルカム。だが、この問題が生じたことで選手たちがボールの微動に過敏になったことも確かだ。もちろん、ボールが動いたと感じたら正直に自己申告するのが紳士のゲームに求められることではあるのだが、プレーヤーの行為によって生じたボールの動きと、風やグリーンの傾斜によって生じたボールの動きが、どちらも一様に1打罰というのは、確かに解せない。プレーを終えたシンプソンは「僕はあのルールについて、あれこれ言うべき立場ではない。だって、あのルール自体が“バッド・ルール(bad rule)”だからね」。

“バッド・ルール”は見直され、改訂されるかもしれないが、たとえ改訂されたとしても、シンプソンが逃した初優勝のチャンスは、もう2度と戻ってはこない。今回に限って言えば、正直者が損をしたと言えそうだ。(舩越園子/在米ゴルフジャーナリスト)