「バッド・ルール」で初優勝を逃した?
ツアー3年目のウエブ・シンプソンは首位で最終日の15番を迎えた。フェアウエイ・バンカーの淵の難しい位置から第2打を打ち、なんとかグリーンを捉えた。ファーストパットを上手く寄せて、わずか30センチのパットを入れればパーセーブして2位との1打差を維持できるという状況だった。
アドレス後にボールが動いた場合、1打罰が科せられるというのが現行ルール。シンプソンの1打罰も、だからこそ科せられたわけだ。しかし、風やグリーンの傾斜によってボールが動いたとしたら、それはプレーヤーの責任ではないのに、どうして罰打が科せられるのか?これについてR&Aは「その問題は、この7年間ぐらい、ずっと討議を重ねてきた」ということで、このルールは近いうちに見直される可能性が高いそうである。
そう言えば、今年のマスターズから、新ルールが実施されている。プレーヤーやキャディがその場で肉眼で見てわからなかったボールの動きが高画質映像で見て「動いた」と判定された場合、旧ルールでは(スコア提出後なら)過少申告で失格になっていたが、新ルールでは失格は免除し、状況に応じた罰打のみを科することになった。
時代の変化に対応してルールが改訂されたのはウエルカム。だが、この問題が生じたことで選手たちがボールの微動に過敏になったことも確かだ。もちろん、ボールが動いたと感じたら正直に自己申告するのが紳士のゲームに求められることではあるのだが、プレーヤーの行為によって生じたボールの動きと、風やグリーンの傾斜によって生じたボールの動きが、どちらも一様に1打罰というのは、確かに解せない。プレーを終えたシンプソンは「僕はあのルールについて、あれこれ言うべき立場ではない。だって、あのルール自体が“バッド・ルール(bad rule)”だからね」。
“バッド・ルール”は見直され、改訂されるかもしれないが、たとえ改訂されたとしても、シンプソンが逃した初優勝のチャンスは、もう2度と戻ってはこない。今回に限って言えば、正直者が損をしたと言えそうだ。(舩越園子/在米ゴルフジャーナリスト)