ナフサの“目詰まり”どこで?出荷停止の原因は一部の過剰発注で情報整理のため?「材料なくて仕事ができないのは前代未聞」 今後の見通しと課題
長引く中東情勢。ナフサの流通「目詰まり」は、一体どこで起きているのでしょうか。現場を取材しました。
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名古屋市中区にある建設防水加工事業「株式会社キムラ」。大手建設会社から受注を受け、ビルや工場などの防水加工を行っています。その倉庫には…
(キムラ 木村豪宏代表取締役 5月13日)
Q.真っ白いクリームみたいなものは?
「これがシーリング剤。外壁などから水が漏れないようにする材料」
(木村代表取締役)
「これが防水剤用のシンナー。防水剤には硬さがあるので、それを軟らかくするために希釈する」
Q.不足しているのはどれ?
「全般的に不足。防水剤は全ての材料にナフサが使われている」
ナフサ不足でほぼ入荷ゼロの材料 値上げも
代表取締役の木村さんによると、防水加工に用いる材料は4月に入ってから入荷が減少。取材時は通常の5割~6割ほどに落ち込み、種類によっては入荷がゼロに近いものもあると言います。
(木村代表取締役)
「駆け込みのオーダーをかけた業者もかなりいたが、4月上旬にオーダーした材料も、いまだに来ない。かなり逼迫した状態」
入荷しづらくなっただけではなく、木村さんのもとにはこんな通知が…
【中東情勢悪化に伴う製品価格改定のお願い】
実施日:2026年5月1日出荷分より
対象製品:防水関連製品
値上げ幅:30~50%
受注一時停止で工期が遅れる可能性も
さらに、「『防水関連製品』の受注一時停止について」のお知らせも。このような逼迫した状況が続けば、工期が遅れる可能性もあると言います。
(キムラ 工事部 今瀬和宏さん)
「僕らの防水工事が終わったら、違う業者さんの仕事もある。まとめて止まっちゃう」
(若狭)
「防水(工事)が止まっちゃうと、次にバトンが渡せないんですね」
(今瀬さん)
「工事が止まったり、よく話は聞く。僕らにできることはロスをなくす。大きめに加工するところを、なるべくギリギリにしたり。いつもならカットして捨てるようなものでも、『また使えるんじゃないか』と、とっておいたりとか。そういう細かいことはやっている」
「材料がなくて仕事ができないのは前代未聞」
入荷が思うようにできず、現場の工夫で何とか乗り切る日々。ここまでの状況は、木村さんも経験がないと言います。
(木村代表取締役)
「人がいなくて仕事ができないことは多かった。材料がなくて仕事ができないのは前代未聞」
Q.仕事自体はある?
「仕事はある、全然あるんですよ。もどかしいです本当に」
今回取り上げた防水加工材は、住宅などの雨漏り修理にも使用されます。愛知県内のリフォーム会社に取材をしたところ、5月は台風シーズンを前に雨漏り修理の依頼が増えるが、材料不足を理由に断ったり、着工が秋以降になるというところもあると話します。
我々の暮らしにも影響するかもしれない“ナフサ不足”。なぜ?どこで?目詰まりが起きているのでしょうか。
ナフサの目詰まり… どこで起きている?
それでは、防水加工材の流通経路を見ていきます。
石油化学メーカーが原油を仕入れて「ナフサ」を作り出します。次に、原料メーカーがナフサを仕入れて「原料」を作ります。そして、加工メーカーが原料を仕入れて「防水材」を作ります。加工メーカーは、商社あるいは商社を介さずに施工店に防水材を売るケースもありますが、今回はこの加工メーカーから先で「出荷停止」になっていることがわかりました。
出荷停止なので物が行き渡らない。当然、目詰まりの要因の一つということになります。
なぜ「出荷停止」が起きている?
出荷停止は、なぜ起きているのか。
原因について、リフォーム会社社長でメーカー団体理事も務める方に話を聞きました。実際に加工メーカーで起きた話で、3月に一部商社・施工店の買い占めがありました。さらに、連日ホルムズ海峡封鎖などの情報や買い占めしたという業者がいるという情報が飛び交い、4月に一部商社・施工店の過剰発注が起きたということなんです。
過剰な発注(通常の5倍受注)により、メーカーはパニックに。そうなるとどの数字、どの受注が本当に必要なものなのか、どれが過剰なものなのかがわからなくなると。なので、その情報整理のために出荷停止をしたということなんです。
物が足りてる・足りていないではなく、「足りないかもしれない」という不安からくる大パニックにより、出荷停止ということだったようです。
値上げの原因は?
値上げの原因について、石油化学コンサルタントの柳本浩希さんに聞いたところ、「ナフサ価格の上昇。4月から6月はほぼ倍になるのではないか」と。国内ナフサの価格(1kL当たり)、1月~3月は6万5700円。4月~6月はまだ確定していないですが、柳本さんの予想では12万円ほどになるのではとのことです。
高く仕入れた原料メーカーは、原料を高く売る。加工メーカーも防水材を高く売る。すると、一部買えないという商社・施工店が現れます。
加工メーカーの販売価格(価格転嫁済み)で買えるのが大手中心で、中小に回りにくい傾向にあり、総量は足りていても在庫の偏りも目詰まりの要因の一つになっているそうです。
出荷再開と今後の課題は?
今後の見通しと課題について、リフォーム会社社長・メーカー団体理事の方に話を聞いたところ、見通しについては「7月ごろには情報整理も落ち着き出荷再開できるのでは」とのことでした。
そして、課題については「3月に買い占めした業者は手元に防水加工材の一部が残る可能性がある。防水加工材の使用期限が切れ、転売などで安く出回り建設現場で使われるおそれがある」ということです。
1日も早い、中東情勢解決を願います。
