「お願いだから、働いてください」……資産1億円を達成した48歳会社員。意気揚々の“FIRE宣言”に妻が凍りついた「まさかの本音」
「会社に縛られず、自由に生きたい」――。そう考え、資産形成に励みFIREを目指す人が増えています。ですが、十分な資産を築けば、それだけで幸せなリタイア生活が始まるとは限りません。今回の事例の江藤さんも、そうでした。FIREが可能になる目標額を超え、上機嫌で妻に報告したものの、返ってきたのは「まさかの言葉」だったのです。
資産1億円達成で「会社辞める」宣言も、妻のまさかの反応
「とうとう資産1億円を超えたよ。俺、会社辞めるから」
江藤将大さん(仮名・48歳)は、資産管理アプリを妻の亜希さん(仮名・45歳)に見せながら、意気揚々と伝えました。
将大さんは、独身時代から“FIRE”を目指していました。「Financial Independence, Retire Early」の略で、資産運用などによって生活費をまかない、早期リタイアする生き方です。
コロナ禍以降、将大さんは投資に本格的に取り組むように。米国株や国内株、投資信託。夫婦は別財布で、家賃や水道光熱費、通信費は将大さん。食材費や日用品は亜希さんと、担当を分けていました。
将大さんは、毎月一定額を積み立て、ボーナスもできる限り投資へ回す生活をしていました。子どもはおらず、教育費の負担はありません。そして、ついに金融資産は約1億円まで増えたのです。
「5%運用だと、税金を考えても年400万円くらいになる。でも、正直平均で8%ぐらいは見込めるんじゃないかな。そしたら手取り600万円以上。質素にやれば、亜希も仕事しないで大丈夫だ。最高だろ?」
毎日満員電車に乗り、ストレスの多い会社に通い続ける生活から抜け出す。そして、妻だってゆっくりできる。まさに“夢の実現”のはずでした。ですが、亜希さんの反応は将大さんの想像とは違いました。眉を顰め、笑顔はありません。
「あなた、前から早期退職したいとか言ってたけど……あれ、本気だったの?」
FIREを拒む「一番大きな理由」
ーー投資って絶対じゃないよね。暴落したらどうするの?
ーー年収400万円の可能性もあるってこと? それで本当にやっていけるのかな。
ーー病気したら? あなたの厚生年金だってなくなっちゃうのよね?
亜希さんにとって、夫の勤労収入、そして会社員として得られる社会保障がなくなることには不安しかありませんでした。そしてもう一つ、FIREを拒む「一番大きな理由」があったのです。
「言いづらいけど……正直、あなたと1日中ずっと一緒は、厳しい」
パートがない日、夫が会社へ行った後の静かな時間に動画を見たり、コーヒーを飲んだり、飼い猫と昼寝をしたりする時間。それこそが、自分にとって大切な息抜きだといいます。
「私にも仕事をしないでいいって言ってくれるのは、ありがたいよ。でも、週7日ずっと一緒は、あなただってきつくなると思うよ。コロナ禍のとき、少しそういう生活したじゃない。喧嘩することが多かったよね」
自分は“いい未来”を提案している。ゆるぎなくそう思っていた将大さんにとって、衝撃の告白だったといいます。
妻は「仕事を続けてほしい、私も続ける」「もし、仕事を辞めるなら、外で作業部屋を借りてほしい」そして、極めつけに「ずっと家にいるなら……私は無理かもしれない」と続けました。離婚の可能性――その言葉こそ口にはしなかったものの、将大さんには十分伝わりました。
FIREが“お金だけ”では成立しない理由
FIREというと、「運用益をベースに会社に縛られない自由な生活ができる」というイメージで語られがちです。ですが実際には、“お金”だけで成立するものではありません。特に夫婦の場合、「生活リズム」と「距離感」の問題があります。
会社勤めをしている間、夫婦には自然な物理的距離があります。平日の昼間は別々に過ごし、それぞれの世界を持つ。だからこそ、適度なバランスが保たれているケースも少なくありません。
また、フルFIREで勤労収入がゼロになれば、たとえ運用益で生活する想定でも、節約への意識は強くなります。「家で過ごそう」「外食は減らそう」――2人で家ばかりにいることで、互いがストレスになることも、想像に難くありません。
もちろん夫婦で価値観が一致し、心地よい距離感を保ちながら暮らしているケースもあります。ただ、自由になるためのFIREが、パートナーにとっては「自由を失う話」に聞こえることもあるわけです。
亜希さんの反応を通じて、初めてその現実に気づかされた将大さん。今、彼は悩みながらも会社員生活を続けていると言います。
「だって、僕が家にいると嫌だっていうんですから……。辞めたって1日中外をぶらつくことになります。それでも、妻は僕と別れたいわけじゃない。『65歳になったら、ずっと家にいるのは構わない』っていうんですよ(笑)。結局、それまでは会社員を続けることになるかもしれません」
