有名医師を襲ったのは、突然の「尿閉」だった――。実は大多数の人が尿の悩みを抱えているが、受診する人はごく僅か。尿トラブルに立ち向かうために、その原因と対策を知ろう。

【写真】この記事の写真を見る(2枚)

 突然の出来事だった。

 昨年9月6日、精神科医の和田秀樹氏は、石川県加賀市内で開かれたイベントに出席した。午後10時頃、懇親会を終えてホテルの部屋へ戻って一息ついたときのことだった。トイレへ行くと、

〈おしっこが出ない……〉

 脂汗を浮かべながら「うん、うん」と何度も下半身に力を入れていきんでどうにかおしっこを出そうとするのだが、やはり出ない。

 尿意と格闘し始めて15分程度経った頃だろうか。今度は激しい息苦しさやヒューヒューと喘息の発作にまで見舞われた。慌ててフロントへ連絡し、病院へ救急搬送。緊急施術で尿道にカテーテルを入れ、さらに利尿剤の点滴で一命をとりとめた。尿を出せなくなる尿閉をきっかけに急性心不全や心臓喘息を併発したのだった。


和田医師が壮絶体験を明かした

ここ数年抱えていた尿トラブル

 危機一髪の体験を和田氏が振り返る。

「危うく死ぬところでした。入院から2日後に仕事があったので、尿道にカテーテルを入れたまま無理をいって退院させてもらいました。ところが、カテーテルを入れたままの生活というのは、予想以上に下腹部の違和感が大きかった。原因だった前立腺肥大の手術を終えるまでの約1カ月半の間、本当につらい生活を送らなければなりませんでした」

 現在65歳の和田氏は、ここ数年尿トラブルを抱えていたという。

「頻尿は7、8年前ぐらいからあった。一番困るのは、尿意を感じてからおしっこを我慢できる時間が非常に短くなったことです。周囲にトイレがないと、これはたまらないということで、3年ほど前から尿パッドを使っていました。夜間頻尿もあるので2、3日に1回は睡眠薬をのんでいました。尿トラブルがあれば、放置せずちゃんと検査しておいた方が良いでしょう」

 和田氏ほどの激しい発作にまでは至っていなくても、夜におしっこで何度も起きてしまったり、尿漏れで下着を濡らしてしまったりと、尿トラブルで悩む人は少なくない。

約8割が排尿の悩みあり

 日本排尿機能学会が20〜99歳の男女6210人を対象に行った調査(2023年)によれば、排尿に関する何らかの症状がある人は、20歳以上で77.9%、40歳以上では82.5%に上る。「四谷メディカルキューブ」(東京都千代田区)泌尿器科部長の阿南剛医師が説明する。

「人間は生きる上で食事だけでなく、排尿も欠かせません。尿トラブルは、私たちのQOL(生活の質)に大きな支障をきたしてしまう深刻な問題なのです」

 尿トラブルで悩む人の割合は年齢とともに増え、少なくとも1つの症状に悩む人は、日本国内で8000万人以上いるとみられる。一方で、尿トラブルで病院へ足を運ぶ人はわずか4.9%にとどまる。

 つまり、多くの人は中高年になれば尿にまつわる悩みを抱えているにも関わらず、誰にも相談できずにその悩みを1人で抱え込んでいるということだ。

「週刊文春」は今回、尿の専門家を取材し、症状のメカニズムや対策を聞いた。

《この続きでは専門家が症状のメカニズムや「体操」「排尿日誌」などの対策法を詳しく解説している。自分の状態が分かるチェックシートも付いた記事全文は現在配信中の「週刊文春 電子版」および4月30日(木)発売の「週刊文春」で読むことできる》

(「週刊文春」編集部/週刊文春 2026年5月7日・14日号)