「警察は今後ヤクザに手を抜く」「やっと春が来た」山口組が内部向け機関紙に“ヤクザ復活論”を掲載 「ゴルフ、野球観戦もろくにできずいじめられた」の恨み節も
山口組の機関紙「山口組新報」最新号が警察関係者の間で物議を醸している。〈警察は今後ヤクザに対して手を抜く〉〈春が来た〉などと、警察の取り締まりが緩和されてヤクザが”復活”していくかのような楽観的観測が書かれているからだ。はたしてその見通しは正しいのか――。
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【写真】〈デブな俺 息吸うだけで 汗をかき〉。日本“最怖”暴力団山口組の「社内報」に載っていた「ほのぼの川柳」
捜査員たちも読んでいる
「山口組新報」は司忍6代目体制下の2013年に創刊された。配下の組員に配布される、いわば“社内報”のような機関紙である。元警視庁マル暴刑事で防犯会社「Private Police」代表の西見高次氏も現役時代、組関係者から入手して読んでいたという。

「組織内の人事情報なども載っており、捜査のヒントになるからです」(西見氏)
デイリー新潮が入手した3月1日号はタブロイド版8ページ。一面には題字の下に山口組の「綱領」と当年度の組指針が掲げられ、「巻頭言」として幹部の挨拶文が載っている。全国の組員から寄せられた、俳句、短歌、川柳が特集された、コワモテ集団からは想像もつかない、ほのぼのとしたページもある。
「私が現役時代読んでいた頃と作りは全く変わっていませんね。おそらく内部に、カタギの頃、出版社に勤務していたとか、こうした作業が得意な組関係者がいるのはないでしょうか」(同)
関係者の間で問題視されているのは〈識者が語る〉というタイトルのコラム。ただし、識者の名前は掲載されておらず執筆者は不明である。
代紋を背景にカタギにシノギをかけるのは基本的パターン
コラムはヤクザ衰退の歴史を振り返るところから始まる。
〈警視庁の統計によるとヤクザ人口は平成18年以降減り続けています。当時、構成員、準構成員合わせ8万5千人いた人口は、令和6年末には遂に2万人を割り込み1万8千8百人と言われています〉
そして、衰退の〈原因〉として暴対法や暴排条例を挙げる。
〈ヤクザになったら警察から目をつけられ、マンションは借りられない、銀行口座は作れない等、人権が無いですからね〉
〈当時警察庁の幹部が暴対法の狙いとして「カタギに手を出すなということです」と言っていたのが印象的ですね。博打やノミ行為だけで食っていけるのなら民間の経済行為に首を突っ込まなくても済むのかも知れないけれど、代紋を背景にカタギにシノギをかけるのは仕事の基本的パターンですから全てやめるという訳にもいきませんね〉
〈暴排条例が制定されることになった経緯は九州における民間テロの多発です。民間人を射殺したり、手榴弾を投げ込んだりして市民の強い反感を買いました。暴力団を無くすには警察だけに任せてはいけない。市民が暴力団と対決すべき義務を負うべきだと言う考えで書かれています〉
読み進めていくうちにどうしても気になるのは、随所に見受けられる“識者”らしからぬ言い回しだ。“恨み節”と取れる文言も多い。
ヤクザはいいようにイジメられた
〈警察は曲解した法解釈のもと常軌を逸する法の運用をしています。ゴルフ場でプレーして詐欺とか野球を観戦して建造物侵入とかETCカードで高速道路を利用したら詐欺とか常識では考えられない解釈と運用です〉
〈もはや警察にとってヤクザを逮捕するのは赤子の手をひねるようなものです。裁判所も警察の行き過ぎを止めようともしません〉
〈ヤクザはいいようにイジメられて、構成員は激減しました〉
しかし後半から徐々にトーンが変わり、“楽観論”へと傾いていく。
〈遂にはもうこのあたりでいいだろうと言わんばかりに警視庁は組織犯罪対策部を廃止しました。組織犯罪対策部とは、2003年ヤクザ人口が9万人近くいた時代に設置された暴力団専従部門です。ここに人員を割く必要が無くなってしまったのです〉
〈それよりも昨今は新たな組織犯罪トクリュウが台頭しており被害規模も年間2千億円を超えています。組織犯罪対策部を廃止した警視庁もトクリュウ対策本部を立ち上げ人員をそちらに回しました。ヤクザは手を抜いていいと言うことですね〉
〈警察は新たな組織犯罪トクリュウの登場によって、改めて公然と活動するヤクザがいかに利便性を警察に提供していたか再確認していると思います。地下に潜られたら厄介だということですね〉
春が近くまできているようです
そして、次のように“希望的観測”を述べる。
〈ヤクザにとって厳しい状況が続いてきましたが、私はそろそろ底を打ったと感じています。最近のヤクザ人口推移を見ると中国地方がまず底を打ちましたね。指定暴力団池田組、浅野組、合田一家、侠道会は前年に比べ構成員の減少はなく横ばいです。そして、共政会が18年ぶりに組員数を延ばしています〉
〈警察も今後ヤクザに対しては手を抜くでしょう。トクリュウを最優先にしているからでもあり、公然とした日本ヤクザの存在を容認しているからです。また、ヤクザ側も学習するところがあったと思われるからです〉
締めの一文は、
〈ヤクザにとっては長い冬の時代でしたが、やっと春が近くまできているようです〉
特定抗争指定団体が解除されない焦りか
前出の西見氏は「事実誤認が多く、識者が書いたものとは到底思えない」と苦笑する。
「そもそも警察はヤクザの存在を容認などしていません。警視庁が組織犯罪対策部を解体し、刑事部の傘下に編入させる組織変更を行ったのは、カタギとヤクザの垣根を無くすことで捜査をしやすくするためです。警察は背後でトクリュウをヤクザが操っていると見ているのです。警視庁は今年1月、住吉会の二次団体『幸平一家』の壊滅を目指す特別対策本部を設置しましたがこれも異例のこと。徹底して暴力団を反社とみなして弱体化させる構えです。山口組には特定抗争指定団体が一向に解除されない焦りがあるのでしょう」
昨年4月、山口組幹部が兵庫県警本部を訪れ「今後は一切のもめ事を起こさない」とする宣誓書を提出。2015年に始まった分裂抗争は山口組の圧倒的勝利に終わったが、今も神戸山口組、絆会は存在し、三つ巴の状態は続き、特定抗争指定団は解除されていない。
「特定抗争指定を受けると、警戒区域内での組員5人以上での集合や組事務所への立ち入りを禁じられ、ろくに活動もできない。本部としては早く解除して欲しくて仕方ないのです。こうした楽観論を傘下組員に読ませることで、”もう少しの辛抱だ、頑張れ”と鼓舞したいのではないか」(同)
山口組の願いと違って、今後もヤクザには厳しい「冬の時代」が続きそうだ。
デイリー新潮編集部
