【藤 和彦】コロナ禍で医療品を買い占めレアアースは出し渋り…米・財務長官が中国を「信頼できない」と非難した納得の理由

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4月16日中国の第1四半期実質GDP成長率が発表された。結果は予想を上回る前年比5.0%の成長だった。

しかし、前編記事『60兆円規模の投資がムダ金に…稼働率は3割程度しかない中国国家戦略「データセンター建設」の厳しい実情』で見てきたように、内需は不調で生産や輸出のみが拡大しているというアンバランスな状況は変わっていない。そして、かねてから不調である不動産やイラン情勢の影響で好調だった輸出に新たな問題が起ころうとしていた。

ゴミが散乱……

中国の住環境も悪化の一途を辿っている感がある。

香港メディアの香港01は12日、「中国各地でマンション管理企業の撤退が相次ぎ、ゴミの散乱や防犯機能の喪失など深刻な住環境の悪化が広がっている」と報じた。それによれば、2024年から昨年にかけて大手管理企業上位50社による物件管理の自主撤退率が前年比37%上昇したという。

撤退の主原因は管理費の滞納である。

住民が管理費の支払いを渋る理由は、不動産価格の下落と家計の困窮だ。不動産価格の上昇期には問題とならなかった管理費だが、資産価値が目減りしている現在、耐えがたい支出になってしまったのだ。

人件費の上昇など、管理企業のコスト上昇も事態を悪化させている。

管理企業が撤退すれば、ゴミが散乱するなど住環境が悪化するのは当然のこと。このため、マンション価格がさらに下落し、25%も下落したケースも出てきているほどだ。

ベッセント「信頼できない」

海外に目を転じると、イラン情勢が米国との関係に暗い影を投げかけている。

筆者が注目したのは、中国との貿易協議の責任者であるベッセント財務長官の発言だ。

ベッセント氏は14日、「中国は過去に3度、信頼できない国際的パートナーだった」と異例の批判を行った。1度目は新型コロナウイルス禍に医療製品を買い占めたこと、2度目はレアアース問題であり、3度目はホルムズ海峡の封鎖で生じた世界的な原油の供給不足を緩和するどころか、原油の備蓄を積み増していることだ。

ベッセント氏は3つ目の問題を中国と協議していることを認めた。

ベッセント氏は翌15日にも「イランとの取引の疑いがある中国の2銀行に制裁の用意がある旨の書簡を送った」ことを明らかにした。

中国への不信は安全保障分野でも同様だ。

イランへの武器供与を中国は否定してきたが、その矢先に新たな疑惑が浮上している。

フィナンシャル・タイムズは15日、「イランが中国の偵察衛星をひそかに入手し、中東各地の米軍基地を標的とする能力を獲得した」と報じた。

マラッカ海峡を巡るせめぎあい

中国も米国への反発を強めている。

中国政府は14日、米軍がイラン湾岸への船舶の出入りを封鎖する措置を開始したことを非難した。イラン産原油の輸入(日量約150万バレル、総輸入の約13%)が途絶えるからだ。サウジアラビア産原油の輸入も急減しており、中国経済にとって大打撃だ。

「米国の封鎖がマラッカ海峡を巡る中国の不安を再燃させている」との指摘もある。

インドネシア、マレーシア、シンガポールに挟まれたマラッカ海峡は、最も狭い部分はわずか2.7キロメートルで、ホルムズ海峡の10分の1足らずの幅だ。にもかかわらず、世界貿易の約4割が同海峡を通過し、中国経済にとっても生命線だ。

このため、中国指導部の間では20年以上前から「マラッカ・ジレンマ(米軍にマラッカ海峡を封鎖されるという弱点)」の危惧が認識されていたが、ここにきて一気に現実味を増した形だ。

5月に首脳会談を控える習近平国家主席にとってさぞや頭の痛い問題だろう。

日本にとって厄介な存在となった隣国の動向について、今後も高い関心を持って注視すべきだ。

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