井上さんの息子が通う中学校の近くにあるカラオケ。大量の落書きやステッカーのせいで、まるで廃墟のようだ

写真拡大

学級崩壊という言葉では片づけられない事態が公立校で起こっている。ヨーグルトが飛ぶ。教師が生徒になめられる。修学旅行すら危うい……。この異変を察知した家庭は、早々に私立へと流れ、逃げ場のない家庭だけが荒れた教育環境に取り残されていく。崩壊末期状態である公立校で、いま何が起きているのか。
◆教育現場を襲う異常事態の数々

文科省の最新調査で、小中学校の不登校は約35万人、暴力行為も約12万件と、いずれも過去最多を記録した。追い打ちをかけるように、公立学校では教員の負担が膨らみ、精神疾患による休職者も7000人超の高止まり。こうした教育現場の崩壊は、着実に信じがたい異常事態を招いている。

実際、筆者の暮らす大阪府内でも、その深刻さをうかがわせる出来事が相次いでいる。昨年、中学生が小学生の首を絞め、海に突き落とす、壮絶ないじめ動画が流出するほど極めて深刻な状態にある。公立中学に中1の息子を通わせる母親・井上真紀さん(仮名・41歳)も、そんな崩れゆく学校現場に強い不安を募らせている一人だ。

「入学した頃は元気よく登校してたんですが、一ヶ月もせんうちに暗い顔をするようになって……。理由を聞いたら、『ヨーグルトが、飛んで来るんやもん』って言うから、最初は何のことかわかりませんでしたわ」

子どもの話によると、給食時間には、食べ物が教室中を飛び交うというのだ。

「幼稚園の話とちゃいますよ。中1の子どもたちが食べ物を投げて遊ぶんですって。特に、ヨーグルトは頭とかにベチャっとなりますやん? それを見て悪ガキ連中がひっくり返って笑うとか。先生もお手上げ状態らしいです」

にわかには信じられないが、その一件以来、教室には<ヨーグルトを投げて遊んではいけません>という注意書きが張り出されるようになったとか。また、この学校では、とりわけ中1の学級崩壊がひどく、その混乱はついに上級生にまで波及していると、井上さんは打ち明ける。

「上の学年に通わせてるお友達のママから聞いたんですけど、先生から『トラブルのもとになるから、中1の校舎には入らないように』って、注意されたんやそうです。上級生を守るための苦肉の策やって言うてたらしいですけど」

◆修学旅行が近所の公園に?

実際、この学年は周辺エリアでも群を抜く凶暴さで、他の学校から“良からぬ依頼”が届くというのだ。

「近所の子ども達に聞いたことなんですけど、依頼を受けて相手をボコボコにするヒットマンみたいなこともしてるらしいんですよ。子ども同士のしょうもない揉め事が起こると、『あの学校のあいつをやってくれ!』と依頼が届くと出動ですよ。学校終わりに待ち伏せして、ボッコボコ。反抗できないようにすると聞きました」

これほど崩壊が進んだ学年を立て直すことはできるのか? 井上さんは先生の“ある言葉”を聞いて以来、その希望も捨ててしまったという。

「校外学習の時に近くの緑地公園でレクリエーションをしたそうです。案の定、勝手に走り回る子もおるし、後ろから突き飛ばしてケガをさせた子もおるし。その時に先生が『修学旅行も、この公園にせなアカンかもしれん。ホテルなんか、とても宿泊させられへん……』って、ポロッと言うたのを聞いた生徒がいたんです。もう先生もあきらめてるんでしょうね」

こうした現実を前に逃げられる家庭は私立へ向かい、逃げられない家庭は荒れた現場に取り残されていると井上さんは言う。今や教育格差は、静かに拡大しているのだ。

◆教師への侮辱と土下座の強要

このような異変は、この学校だけの特殊な事情ではない。大阪府内にある公立学校のあちこちで、同じような事態が広がり始めているという。中学校で音楽教師を担当する宮守恭子さん(仮名・32歳)は、もはや改善の余地はないと半ばあきらめてしまったと話す。その思いを決定づけたのが、彼女に対して行われた、ある仕打ちだと打ち明ける。