大阪の公立校で多発する学級崩壊。職員室での土下座強要、「いじめの証拠」を握りつぶされることも…“異常事態”に歯止めがかからない実態
「お祭りが盛んなエリアにある学校なので、その時期になると、男子たちはずっとお祭りの練習みたいなことをやってるんです。授業時間になっても、まだやってたので注意すると、『先生も参加してや!』って、掃除用のホウキ2本を私の股に差し込んで、神輿みたいにワッショイ、ワッショイって担がれて……。中3の男子でしたから、力付くでは止められないしね。屈辱的な経験でした」
宮守さんによると、こうした悪ふざけは、まだ序の口にすぎないとか。むしろ深刻なのは、保護者を含んだ問題に発展した時だという。
◆いじめ動画を見た担任教師は…
こうして対応を続けている教師は、まだマトモと言える。指導に悩み、精神的に追い詰められた末、犯罪にも似た行為に出る教師もいるのだ。前出の井上さんは、自身の体験を交えながら、さらに耳を疑う話を明かしてくれた。
「いじめっ子が、大人しい男の子をボコボコに殴って服を破いたり、地面に叩きつけたりしたことがあったらしいんです。それを、ウチの子どもがスマホで撮影して、担任の先生に報告したら……『プライバシー侵害になるから、早く消しなさい!』って、逆に叱られたって。そんな先生じゃなかったのに、もう面倒を起こすのは嫌なのかなと思って悲しくなりました」
ここまで紹介した学校現場の混乱は、いずれも大阪府内の公立学校で起きていたものだ。教育行政に携わる関係者、田中和也氏(仮名・48歳)は、「大阪は所得格差が大きく、もともと問題が生じやすい地域です。それに加えて教育改革に伴う教員の負担増や、講師・非正規教員に頼らざるを得ない状況が重なり、現場の余裕が失われ、一部の学校では荒れが深刻化しているとみられます」と眉をひそめる。
◆管理教育が招く、負の連鎖
その一方で、教育ジャーナリストのおおたとしまさ氏は「荒れた学校」の原因は、「遊びの不足」と指摘する。
「教育関係者と話をすると、本来であれば幼児期に経験し、学んでおくべきことを学齢期になっても引きずっているのではないかという指摘が出ます。例えば、砂場でお友達と意見の衝突や行き違いを経験する中で、トラブルを解決したり、喧嘩をしてもどこまでなら許されるのかを学んだりします。一方で、学校現場では『トラブルを防ぐ』というプレッシャーが強いあまり、教員は心の余裕を失ってしまい、結果として管理教育的な体制が強くなる。そうした過剰な管理体制によって、子どもの自発性は削がれ、かえって問題行動に走ることもあります」
「私立より公立が荒れやすい」という見方についても、「慎重に考えるべき」と、おおた氏はこう解説する。
「公立にしろ私立にしろ、学校が荒れる原因は一つではありません。それを家庭環境のせいや、偏差値の問題にしてしまうのは短絡的です。貧困やひとり親家庭の子どもを勝手に『問題を抱えやすい』とみなすのは偏見ですし、『偏差値の低い学校は荒れる』という発想も、結局は差別的なまなざしだと思います」
原因は単純化できなくても、子どもも教師もここまで追い詰められている現実は重い。いま本当に必要なのは荒れた生徒への場当たり的な指導ではなく、崩壊を食い止める教育体制そのものかもしれない。
<取材・文/橋本未来>
【教育ジャーナリスト・おおたとしまさ氏】
男性の育児や、子育て夫婦のパートナーシップ、受験など幅広いジャンルで活躍。著書に『中学受験「必笑法」』(中公新書ラクレ)など
【橋本未来】
主に関西圏で広告関係やマガジン系の仕事をしながら、映像の企画・構成なども手掛ける。芸人さんやちょっと変わった経営者さんなどの話を聞くのがライフワーク Twitter:@h_mirai1987
