『孤独のグルメ』15年、松重豊さんが語る舞台裏「撮影中はむしろ痩せていく」「しょっちゅう逃げ出したい」
人気ドラマ『孤独のグルメ』(テレビ東京系)のシーズン11が、4月からスタートした。
輸入雑貨商を営む「井之頭五郎」が、仕事の合間に立ち寄った飲食店で食事を楽しむ漫画(久住昌之原作/谷口ジロー作画)を原作とするドラマで、2012年に深夜枠でひっそり始まり、今年で15年目を迎えた。
現在は東アジアでも人気が広がり、昨年は映画も公開された『孤独のグルメ』。五郎を演じる松重豊さんが4月16日、日本外国特派員協会(東京・丸の内)で会見に登壇し、ドラマの歩みや今後の展望について語った。(弁護士ドットコムニュース編集部・猪谷千香)
●「大した反響も得られずに終わると思っていた」
冒頭、東アジアで人気を得ている理由を問われた松重さんは、こう振り返った。
「このドラマは15年前、テレビ東京の深夜枠で本当にひっそりと始まりました。
大した反響も得られずに終わってしまうんだろうと思ったところ、徐々に口コミで広がって、楽しみにしている方が増えていったという感覚があります。
おいしい料理が出てくるようなドラマがアジアの中でも珍しかったことや、淡々とその食事に向き合うという、そこに特化したドラマが新鮮に映ったりして、興味を持って見ていただく方が、東アジア全体に広まったんじゃないかなと思います」
●撮影の料理は「完食してます」
会見では、劇中での豪快な食べっぷりに「料理はすべて食べているのか」「どうやったらあれだけ食べて体型維持ができるのか」といった舞台裏への質問も出た。
松重さんは「撮影は順番通りにドキュメンタリーのように撮影しています。全部きれいに食べきっています」と説明。編集で調整する一般的なドラマとは異なることを明らかにした。
さらに食事量については「撮影日の前夜から量をセーブし、撮影が終わって帰ってからもそんなに食べられるわけではないので、3日間のトータルカロリーは普段よりも少なくなります。撮影中はだんだん痩せていきます」と語り、会場からは驚きの声が上がった。
●謎の多い「井之頭五郎」の仕事
また、ドラマは物価高の影響も受けているという。
「インフレが大変だなと。とにかくその飲食にかかる費用が、3、4年前に比べて1.5倍か、それ以上の水準になってきています。
井之頭五郎は個人事業主ですし、ドラマを見てもそんなにお金を稼いでいるような仕事をしているとは思えない。この人が夕飯に4000、5000円かけられるのかなっていう不安はありますね」
また、五郎について「真面目に働いているように見えるが、どういうバックグラウンドなのか」という質問も出た。
松重さんも「井之頭五郎は本当にどういう生計を立てているのか非常に謎なんです」と苦笑する。
「先週放送された回では、電気屋のおじさんから頼まれた孫のおもちゃを1つ買っただけなんですね。そのマージンだけで果たして夕食が食べられるのか。たまに大きな仕事を取ってきて、なんとかなってるのかなって想像するしかないですけどね」
●「しょっちゅう放り投げて逃げ出したい」
長期シリーズとなった本作について、弁護士ドットコムニュース記者が「やめたいと思ったことはないのか」と質問したところ、松重さんは率直な思いを明かした。
「しょっちゅう、放り投げて逃げ出したいなと思う時はあります。
15年続ける中でスタッフは入れ替わり、今は初期から残っているのは僕と技術チーフの2人だけです。だからこそ、自分が責任を持って作品を支えなければいけないと感じていて、それが映画化の経緯にもつながっています。
一方で、この作品は若いスタッフの成長の場でもある。僕も年齢的にどこまで食べられるかわからないので、次の世代に引き継ぐ道筋も作っていきたい。持続可能な形で続けていきたいと考えています」
また「もしハリウッドが英語版をつくるとしたら、五郎役はどの俳優に演じてほしいか?」との問いには、原作のイメージから、俳優のニコラス・ケイジさんの名前を挙げた。
●「失われた30年、僕ら世代の責任も大きい」
松重さんは「食は物語」とも語る。
「ご飯を食べるだけのドラマなんですけども、そこに登場するお店は、どういう人が、どういう経緯でこの味にたどり着いたのか、みたいなことを想像していくことによって、味のおいしさが確実に上がってくと僕は思ってます」
そうした物語を伝えることが、俳優としての役割だという。松重さんは、日本の現状についても厳しい一面を指摘したうえで、矜持を示した。
「“失われた30年”は、僕ら世代の責任も大きいと思っています。
海外で仕事をすると、日本は経済面でアジアに後れを取っていると実感する場面もある。 ただ、日本のスタッフはどんな環境でも全力で結果を出そうとする。その姿勢は30年変わっていないと思います。
そうした強みは、スポーツやエンタメの可能性として世界にも伝わるはずです。一方で、現場の環境はまだ十分とは言えない。僕たちの世代が声を上げて、引き上げていく必要があると感じています」
