めでたいでんしゃ、存続危機の四国連絡、たま駅長…和歌山市から伸びる“ディープな”路線をたどる

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“鉄っちゃんアナ”としても親しまれる鉄道通のフリーアナウンサー・羽川英樹さんのラジトピコラム「羽川英樹の出発進行!」。今回、羽川アナがレポートするのは、和歌山市から伸びる、JR西日本と南海電鉄の支線、そして、ローカル鉄道です。

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 紀州・和歌山の玄関口には、JR西日本と南海電鉄の鉄道ターミナルがあります。市内中心部の東側にあるのがJR『和歌山』駅。そして、西側にあるのが南海『和歌山市』駅です。今回は両駅から発着する本線のメイン列車ではなく、“ディープな”味わいを持つ支線やローカル鉄道と、それらの列車たちにスポットを当ててみました。

 まずは、南海『和歌山市』から。ここにはかつては高島屋(※「高」=はしごだか)もありましたが、2014年8月末で閉店。現在は複合施設のキーノ和歌山、カンデオホテルズ南海和歌山、蔵書50万冊を誇る和歌山市民図書館が同居しています。同駅では、特急「サザン」難波(なんば)行などが走る本線(南海線)がメインとなりますが、それ以外にも2つの路線が発着しています。

 その1つが、5種類のカラフルな「めでたいでんしゃ」が人気の、加太線(愛称:加太さかな線)です。『和歌山市』を出て、上りと下りでフォルムの違う紀ノ川橋梁を渡り、日本製鉄などの工場群を過ぎ、関西のサーフィンの聖地・磯ノ浦を経て、終点『加太』までは25分の列車旅です。

『加太』は古くから港町として栄え、かつては淡路島や四国への交通の要所だったところ。駅周辺には人形供養で有名な淡嶋神社があり、加太港からは戦時中の廃墟や砲台跡が残る友ヶ島へ船が結んでいます。

 一方、南海『和歌山市』から発着するもうひとつの路線が、和歌山港線です。かつては途中に3駅ありましたが、今は次の駅が終点の『和歌山港』になり、単線でわずか5分の旅となります。2002年まではもう一駅先の「水軒」まで伸びていました。この路線は、徳島行の南海フェリーに連絡するためのもので、船のダイヤに合わせ1日13往復が運行され、難波からの直通の特急「サザン」も一日3往復が設定されています。

 港へは駅から連絡橋でつながっており、フェリーは徳島までを約2時間で結びます。ところが、先日、南海フェリーの親会社である南海電鉄が、2028年3月末をもってフェリー事業から撤退すると発表しました。そのため、この和歌山港線の存続もとても気になるところです。

 さて、この南海『和歌山市』からは約3キロメートル離れたJR『和歌山』まで、JRの電車が折り返し運転を行っています。これは紀勢本線の一部になりますが、基本1時間に1本しか走っていないのが残念。途中に『紀和』という小さな駅が存在しますが、ここはかつて「和歌山」を名乗り、大変栄えていた場所だったようです。また、かつては難波発の南海電車が『和歌山市』からこの路線を経由して、紀勢本線の国鉄「白浜口」まで乗り入れていた時代もありました。

 JR『和歌山』は駅前に百貨店・ホテル・商業施設が集まり、この駅からは特急「くろしお」や紀州路快速がメインに走っています。

 そんなJR『和歌山』を共同使用するローカル鉄道が、和歌山電鐵。一番端っこの9番乗り場から発着しています。全長約14キロメートルの路線は、赤字だった南海貴志川線を岡山の両備グループ(岡山電気軌道)が引き継ぎ、ちょうど今年、2026年4月1日に開業20周年を迎えました。ねこの「たま駅長」で一躍有名になったことでもおなじみです。

 あの水戸岡鋭治さんが手掛けた、「たま電車」「いちご電車」「チャギントン電車」など、楽しさいっぱいの6種類の車両が走っています。

 終点『貴志』まで32分。ここの駅舎はネコの顔をイメージにした檜皮葺(ひわだぶき)の屋根を持つ、ユニークなもの。そして現在は「よんたま」駅長(マネージャー駅長)が乗客を温かく出迎えてくれます(※水・木曜は駅長候補生の「ろくたま」が業務を担当)。

 趣のある“ディープな”路線が集まる、和歌山市内の中心部。観光路線の要素も兼ね備える南海加太線、廃線の危機も迫る南海和歌山港線、南海とJRの駅を結ぶ紀勢本線の一部、そして今年20周年を迎えた和歌山電鐵……。今回、時間の関係で取材できなかったJR和歌山線(和歌山〜五条〜王寺)も加えれば、ここではとてもボリュームのある紀州の鉄旅が楽しめそうです。(羽川英樹)