インフラ危機を招く「硫酸による侵食」とは? 下水道管に穴が開き大事故につながる可能性

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日本はこのまま崩れ去ってしまうのか? 道路、鉄道、水道、インフラ、橋……なぜ全国各地で次々に事故が起きるのか? お金も人も足りない……打つ手はあるのか?

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(本記事は、岩城一郎『日本のインフラ危機』の一部を抜粋・編集しています)

化学的侵食

基本アルカリ性であるコンクリートは酸(特に硫酸)や硫酸塩(硫酸ナトリウムや硫酸マグネシウムなど)と容易に反応し、コンクリート中の水和物が別の物質に変わったり、膨張したりして劣化が生じることになります。これを「化学的侵食」と呼びます。

【劣化の特徴】

ではどのような場所でこうした劣化が生じるのでしょうか? 一つにはこうした硫酸や硫酸塩などを扱っているプラントの場内にあるコンクリート構造物が挙げられますが、ごく一部のレアなケースでしょう。

もう少し馴染みのある場所として、温泉に行くとよく卵の腐ったような臭いがすると感じられると思いますが、これは温泉中の硫黄の臭いであり、そうしたところでは硫酸や硫酸塩による劣化が進行する恐れがあります。さらにもっと身近な存在として下水道施設が挙げられます。

下水中にはさまざまな成分が含まれています。硫黄もあれば、細菌も含まれている。下水管中では硫化水素が発生したり硫酸へと変化したりして、それらの働きや膨張圧によりコンクリートがはがれる現象(侵食)が始まります(図表2-5)。

その結果、コンクリート製の下水道管の厚さが徐々に薄くなってしまいます。八潮における道路陥没事故の根本的な原因もコンクリート製の下水道管が硫酸による侵食を受け、徐々に薄くなっていき、最終的には穴が開いてそこに大量の土砂が流れ込んだためとされています。

下水道管の延長は約50万キロメートル、しかもそのほとんどが地中に埋まっているため、点検も容易ではありません。これからは目に見える構造物だけでなく、地中に埋まっている構造物の状態まで把握する必要があるのです。

【対策】

ではどのように対策すればよいのでしょうか? 残念ながらアルカリ性のコンクリートが酸に弱いのは宿命で、コンクリートそのもので抵抗するには限界があります。

そこで、下水道管の内側を酸に強い樹脂などで覆うなどの措置が取られています。この工事も狭い下水道管内では人力により施工することが難しいため、ロボットなどを使うこともあります。

さらに、「日本はこのまま崩れ去ってしまうのか…意外と気づかない「インフラ危機」本当の実態」」では、いま大問題として迫っているインフラ老朽化問題をひきつづき見ていく。

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