「嫌よ!ここから離れたくない」妻の涙が止まらない…〈住宅ローン4,200万円〉夢のマイホーム購入から7年。郵便受けに投函された「一通の通知」に42歳夫が下した決断
住宅価格の上昇や低金利の影響もあり、「今のうちに買っておくべきではないか」という空気は、いまもなお根強くあります。周囲でマイホームを手にする人が増えれば、その焦りはさらに現実味を帯びていくでしょう。しかし、その“タイミング”に背中を押されるまま決断してしまうと、思わぬ落とし穴にはまることも……。事例から見ていきましょう。
「買うなら今!」マイホーム購入を決断したワケ
「“なんとかなるだろう”なんて、あまりに楽観的でした」
そう振り返るのは、都内近郊に暮らす会社員・高橋雄一さん(仮名・42歳)。7年前、高橋さん一家は郊外に新築マンション(5,200万円)を購入。当時の年収は約580万円。妻はパート勤務で年収150万円ほどでした。
家の購入にこだわっていたのは、どちらかというと妻の方でした。「マイホーム=幸せ」という意識が根強く、周囲の友人が続々購入に踏み切っていることに焦りもあったといいます。住宅価格がじわじわ上がり始めている頃でもあり、最終的には夫婦で「買うなら今」と決断しました。
貯金と親からの援助で頭金1,000万円を入れ、4,200万円の住宅ローンを組みました。月々の返済は約13万円。管理費や修繕積立金は月2万円ほどで、住居費は合計15万円前後でした。
「今の家賃12万円と比べても、少しの上乗せだから問題ない。固定資産税はボーナスでカバーできる。収入もそのうち上がるだろう……なんとかなる」と判断したのです。
しかし、残念ながら、その見通しは完全に外れることになります。
「今月だけ」のはずが止まらない
変化のきっかけは、家族が増えたことでした。家を買って2年後に次女が生まれ、子どもが2人に。「広めの家を買っておいてよかった」と喜んだ一方で、食費などの生活費や教育費は想定以上に膨らみました。
さらに、妻は次女の体調不良で仕事を休みがちに。会社から直接辞めろと言われたわけではありませんが、居心地の悪さは否めません。気に病んだ妻は、次女の健康面が安定するまで専業主婦でいたいと懇願したのです。
「僕の給料も思ったように上がらず、妻の収入がなくなるのは痛手でした。ですが、ダメということもできません。選択肢がなかった」
しかし、金銭的にはすぐに厳しい状況に陥りました。家を購入する際に頭金で貯金を使ったため、余分なお金はありません。そんな状況で、家計管理を担う由佳さんが頼ったのが、クレジットカードのキャッシングとリボ払いでした。
「今月だけ」「ボーナスで返すから」と数万円を補填。しかしボーナスは家電の買い換えや慶弔費などで消え、残高は減らないまま繰越し。足りなければまたカードを使う――そんな状態が続きました。
気づけばカードは複数枚に増え、返済しても元本が減らない状況に。最終的に、給料が入る→住宅ローンが引き落とされる→残りで生活→足りない分をカードで補填と、家計は完全な「自転車操業」に陥るようになっていました。
「なんだこれ」…夫が知った真実
転機はカード会社からの督促でした。郵便受けに届いていたハガキを見つけた雄一さんは、「リボ払いやキャッシングをしているのか?」と驚愕します。
妻は、ここで初めて家計が回っていないことを告白しました。すべてのカード残高を合計すると、その額、約280万円。
「嘘だろ……」
雄一さんは、思わず絶句。実は、修繕積立金と管理費の値上げで、住宅関連費はいまや月18万円近くになっていました。この固定費の高さを何とかしない限り、借金地獄からは抜け出せない。そう判断した雄一さんは、すぐに家の売却を決断しました。
家を手放して取り戻したもの
「嫌よ! せっかく買ったのに……」
当初、妻は強く反対しましたが、最終的には受け入れるしかありませんでした。幸いにも不動産価格は上昇しており、売却によって住宅ローンは完済。カードの負債も整理することができました。
現在は賃貸マンションに住み替え。以前よりコンパクトな暮らしになりましたが、節約も徹底したことで家計には余裕が戻り、「お金の不安がない生活」を取り戻しつつあるといいます。
家が資産ではなく「重荷」に変わるとき
全国宅地建物取引業協会連合会が発表した「2025住宅居住白書」では、「あなたは『持ち家派』ですか?『賃貸派』ですか?」という問いに対して、こんな調査結果が出ています。
・持ち家派(マンション・集合住宅):16.9%
・持ち家派(一戸建て):46.1%
・賃貸派(マンション・集合住宅):17.7%
・賃貸派(一戸建て):2.5%
・どちらともいえない/あてはまるものはない:16.8%
持ち家派(マンション・集合住宅と一戸建ての合計)が63.0%。一方の賃貸派は20.2%(同合計)。持ち家派のほうが圧倒的に多いという結果です。
持ち家の理由1位は、「家賃を払い続けることが無駄に思えるから(51.0%)」。確かに、住宅ローンを完済すれば家が自分の物になる。そういう意味では、マイホームは魅力的な選択です。
しかし、それは家計に余裕があってこそ成り立つものです。高橋家のように、毎月引き落とされる住宅ローンを優先すると、他の支出で帳尻を合わせるしかない。そして、クレジットカードやリボ払いなどに依存し、気づいたときには取り返しのつかない金額になっている――。これでは、家計が破綻して当然です。
こうしたリスクを避けるため、家を買うときには世帯構成や収入の変化、修繕積立金や管理費などの値上げも織り込み、シミュレーションをすることが欠かせません。自分たちだけで難しければ、FPなどのプロを頼ることも一考です。
「返せるかどうか」ではなく、「余裕を持って払い続けられるか」という視点を欠いたとき、家は資産ではなく、生活を圧迫する重荷へと変わってしまいます。
“なんとかなる”という曖昧な根拠ではなく、慎重に決断することが必要です。
