詩人・和合亮一 ″言葉は心の糧になる″ 熊本地震に寄せた渾身の5編 あれから10年 今、読み返す
"言葉は心の糧になる"
2016年5月、詩人・和合亮一さん(57)がRKK熊本放送へ5つの詩を寄せてくれました。
福島県の高校で国語教諭を務める和合亮一さんは、2011年の東日本大震災直後から連作詩『詩の礫』を発表し続けるなど、国際的に高い評価を得る詩人です。
熊本地震の発生から1か月後、和合さんは「ようやく、熊本のみなさんと分かち合える言葉の輪郭が見えてきた」として詩を紡ぎ出し、そして、こうも話してくれました。
「言葉そのものは役に立たないかも知れない。でも、震災を経験した福島県民だからこそ分かること、それは"言葉は心の糧になる"」
あれから10年、言葉のチカラ、改めてその5つの詩をご紹介します。
「大きな手に」
「大きな手に」 和合亮一
ある日 瓦礫が積み上がったたくさんのかけらの山から きみは助けられた 大きな手にしっかりと抱えられて たくさんの大人たちがきみの無事に涙した 生きていてくれた 助かってくれて良かった ありがとう きみが生まれたばかりの熊本に 巨大な地の震えが起きた 揺れはまだおさまらない 人々は必死に耐えている 理由はただひとつだ きみを守っていくためだ ひとつしかない故郷の山河で子どもたちを育てていくためだ やがて新しい両足で立って 光る空と季節を見あげるだろう きみは熊本の命だ きみは熊本の大地だ
「一歩」
「一歩」 和合亮一
一杯の水に 一個のおむすびに 一枚の毛布に 優しい一言に 一切れのパンに 結んだ一本の指に 一枚の紙皿に 一日一日に 悲しさ一つ 悔しさ一つ 生きるという決意を一つ 涙を拭いて見つめている 熊本の空の一つの雲を
「余震よ」
「余震よ」 和合亮一
余震よ その手を止めてはどうか あなたが震えるたびに人々は途方に暮れる 何をそんなに動かしているのだ もう良いではないか 余震よ その手を止めてはどうか もう人々は眠りたい 指を握り合って確かめ合いたい 子どもの髪を静かに撫でてあげたい その手は熊本の大地を守って来た だから人々は待っている 優しいあなたの手のぬくもりを あなたはずっと雄大な阿蘇の山を手のひらにのせてきた 熊本の街や村や城を暮らしを愛を だから祈る 震わすその手を止めて下さい 全ての悲しみを両手で包みこんでください 人々を守ってください
熊本城
「熊本城」 和合亮一
人々の心にいつもある 名城こそは熊本にある どんなことがあっても城は毅然と立つ 人々も負けずに熊本に立つ
阿蘇山に
「阿蘇山に」 和合亮一
これからも熊本で生きていく 故郷で生きていく 大地で生きていく 空を見あげて生きていく 指をつないで生きていく 家族を守って生きていく ときには涙を拭いて 分け合い生きていく 手をはなさず生きていく 肩をなでて生きていく ときには目を閉じて 生きるとは 震災の意味とは 誇りとは 祈りとは 阿蘇の山よ そびえていてください これからも 熊本よ 私たちはこれからをあきらめない これからも生きていく これからを生きていく
