佐々木朗希

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 アメリカの新聞社・ニューヨーク・ポストの創刊は1801年だという。当時の日本は江戸時代の寛政13年と享和元年にあたり、将軍は第11代の徳川家斉だった。ニューヨーク・ポストは保守系の日刊タブロイド紙として今も大きな存在感を発揮しており、辛らつな記事が多いことで知られる。そのニューヨーク・ポストの電子版は現地時間の4月5日、「Dodgers’ Roki Sasaki has lost his best pitch - and maybe his identity」との記事を配信した。(全2回の第1回)

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 見出しを日本語に翻訳すると「ドジャース佐々木朗希は決め球を失い、おそらく佐々木らしいピッチングも喪失」といった感じになるだろうか。

佐々木朗希

 現地時間の5日、ドジャース佐々木朗希はナショナルズ戦に先発。1対0でリードしていた3回に逆転2ランを被弾し、さらに4回にも3ランを浴びるなどして6失点。散々な投球内容だった。

 試合はドジャースの打撃陣が躍動して8対6で勝利。佐々木は敗戦投手になることだけは免れたが、日米のドジャースファンからは失望の声が漏れた。

 佐々木の記事を執筆したのはディラン・ヘルナンデス記者。ロサンゼルス・タイムズでドジャースの番記者として18年のキャリアを積み、現在はニューヨーク・ポストの姉妹紙であるカルフォルニア・ポストでシニア・スポーツ・リポーターとして健筆を振るっている。

 ニューヨークポストの公式サイトにはヘルナンデス記者のコーナーがあり、ドジャースの関連記事がずらりと並ぶ。そんなヘルナンデス記者の佐々木に対する評価は、極めて辛らつなものだ。

 ドジャースのデーブ・ロバーツ監督は試合後の会見で佐々木を擁護した。「5回まで投げたことは大きい」、「トータルでは良い投球」、「現時点では上向きの流れにある」──という具合だ。

捕手も苦言

 だがヘルナンデス記者は「今回の投球内容が『進歩』の表現に値するのなら、それは前回の登板が今回以上に悪かったというに過ぎない」と皮肉たっぷりに反論。直球の球速は150キロ台中盤に落ち、佐々木の代名詞と言えるフォークはコントロールが定まっていないと指摘し、以下のように批判した。

《圧倒的な速球と決め球のフォークを失った佐々木に、何が残るのか。ストレートとスライダーの投手として、どれほどの力を発揮できるのか》

 佐々木らしさを失った佐々木に価値があるのか、とヘルナンデス記者は痛烈に問いかけたと言える。

 ヘルナンデス記者の記事は、彼の“野球観”に基づいたコラムではない。綿密な取材に基づいた記事だ。その証拠にナショナルズ戦で佐々木の女房役を務めた捕手のダルトン・ラッシングにインタビューを行い、彼の率直な感想を伝えている。

 ラッシングは佐々木のフォークが「安定しない」と振り返り、「ストライクが取れないと、相手は毎回見送るようになる」と問題提起した。コントロールに苦しむ佐々木に対し、相手打線は余裕の姿勢で「見」に徹していると指摘したわけだ。

 佐々木が4回に浴びた3ランは、カウント0-2から投げたフォークが真ん中に入り、それを弾き返された。

成長が必要

「どこに投げたかったのか?」という質問にラッシングは「ワンバウンドさせるつもりだった。芝生に叩きつけてもよかったくらいだ」と佐々木の失投を指摘。「ミスは起きる」と擁護しながらも、「大事なのは成長で、そこから学んでほしい。特にボール球に手を出さない打者相手なら、0-2では攻めきるべき」と注文をつけた。

 一方の佐々木だが、記者団からホームランを打たれたことについて質問されると、「ラッシングのリード通り投げた」と答えた。これに一部のメディアが「責任転嫁ではないのか」と反応している。

 前田幸長氏はロッテ、中日、巨人の3球団で投手として活躍。先発、中継ぎ、クローザーの全てを経験した。佐々木にとってロッテの先輩投手にあたる。

 さらに前田氏は2008年には渡米してレンジャーズとマイナー契約を結んだ。3Aオクラホマで36試合に登板したため、アメリカの野球事情にも詳しい。

 前田氏はまず、佐々木にとって今季の初登板初先発となった3月31日のガーディアンズ戦に注目する。この試合で佐々木は4回を4安打1失点、4三振2四球で敗戦投手となった。ポイントは三振の数だ。

「大前提として、私たちはどんなイメージを渡米する前の佐々木投手に抱いていたでしょうか。例えば2022年4月のロッテ対オリックス戦です。この試合に佐々木投手は先発し、完全試合を達成しました。しかも1試合奪三振数の日本タイ記録となる19奪三振や、世界記録となる13者連続奪三振という圧巻のピッチングだったのです」

三振を取れない佐々木

 前田氏は「佐々木投手の魅力と言えば160キロ台の剛速球と、『ストレートより早い』とも言われた高速フォークで、相手打線に三振の山を築かせるところにあったはずです」と言う。

「ところがドジャーズに移籍してからの佐々木投手の速球は150キロ台ですし、フォークの切れ味も失われてしまっています。彼のピッチャーとしての魅力も失われてしまったことは間違いありませんし、勝敗や投球内容はさておき、何よりも三振を取れないピッチャーになってしまっています。これにがっかりしている日米のファンは多いでしょう」

 なぜ佐々木は三振を取れないのか。前田氏はコントロールが定まらないため、三振どころか四球を連発している事実を指摘する。

 第2回【いまの佐々木朗希は「巨人の戸郷と同じ状態」との指摘も…“極度の制球難”の原因は「自分でもどう投げていいのか分からない」悪循環にあるのではと元ロッテのエース】では、「佐々木も原因を把握していない」制球難についてお伝えする──。

デイリー新潮編集部