「不法滞在の外国人は必要悪」「イメージは悪くない」 農家が明かすホンネ 茨城県で「不法就労を通報すると1万円」制度がスタートへ
「1万円程度の報奨金が支払われる」
茨城県は今年度から、外国人の不法就労対策として、非正規滞在など不法就労の外国人を雇う事業所を通報した県民に報奨金を支払う通報報奨金制度を導入する。2月の発表以降、「差別を助長する」と反発する人もいるが、「週刊新潮」が現地で取材すると、地元の人たちの“複雑な胸中”が浮かび上がってきた。
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【写真を見る】最新の人口データを基に作成した地図 濃い赤で示されるのが特に「外国人比率の高い」エリアである
外国人差別を助長するのではないか、といった新制度への批判に対し、4月2日の定例会見で大井川和彦知事(62)は、
「違法行為の是正は行政の基本責務。不法就労のまん延は外国人の適正な雇用秩序を破壊する。外国人排斥とは全く違う」

と導入の正当性を強調した。茨城県庁によれば、
「これから専用サイトを立ち上げて情報を募り、県側が事業者をヒアリングするなどして、まずは不法就労の有無を確認します。不法就労の恐れがあると判断した場合にのみ、警察に情報提供し、逮捕などに至れば通報者に1万円程度の報奨金が支払われる仕組みです。その原資として、今年度当初予算案に20万円を計上しました」(県外国人適正雇用推進室)
「正規の技能実習生を雇うとなると……」
地元紙記者が言う。
「不法就労者のうち、7割に当たる2463人を農業従事者が占めています。県内の20代の農業従事者に限れば“2人に1人が外国人”とされ、その分、不法就労者も多い。“不法外国人の集積地”といったイメージの払拭に向け、大井川知事は以前から神経を尖らせていました」
「首都圏の台所」と呼ばれる農業王国・茨城の中でも、野菜の農業産出額が全国1位を誇るのが、サツマイモやメロン、イチゴの生産地として知られる鉾田市だ。不法就労が横行している背景について、同市で小松菜などを栽培している市村正義さんが語る。
「正規の技能実習生を雇うとなると、まず渡航費や申請費などで30万〜35万円ほどかかります。実際に雇用すれば1人につき月約25万円の給料に加え、別途、管理団体に毎月約3万円を払う必要がある。安くはなく、仕事のない農閑期も含めて通年で雇わなければならないので、使い勝手が悪い制度と感じている農家は多い」
念のために言い添えておけば、当然ながら市村さんは不法就労者を雇用していない。1年を通して栽培可能な小松菜ならば、通年での必要人員を計算できるという面がある。しかしサツマイモや大根など農繁期のある野菜だと事情は違ってくる。
「“フホー”は必要悪ともいえる存在」
イチゴ農園を経営する男性が明かすには、
「大人数の実習生を雇うほどの余裕はありません。かといって外国人がいないと収穫期に人手が足りなくなる。農家にとって“フホー(不法滞在の外国人)”は必要悪ともいえる存在です。しかも雇うのは簡単。農繁期になると、彼らのほうから〈つくば〉や〈土浦〉ナンバーの車で畑に乗り付け、われわれに“人手要る?”などと声をかけてくるのです」
不法滞在外国人に払う日給は1万円。仮に1カ月間雇えば1人30万円になるが、通年で考えれば破格の安さで労働力を確保できる、と話す。
しかし一方で、県内では外国人犯罪の摘発数が増えているという問題もある。直近5年間を見た場合、全国では摘発数が20年前と比べて4割減っているのに茨城では逆に4割増加しているのだ。
「実効性については甚だ疑問」
こうした実情を総合的に踏まえ、ある鉾田市議は、
「汚名返上のため、知事が通報制度を立ち上げたのは理解できます。ただし1万円程度をもらって喜ぶ人がどれだけいるのか。実効性については甚だ疑問だと言わざるを得ません」
とした上で、本音をこう明かす。
「新制度が機能しないと考えるのは、報奨金の額がどうのこうのという理由だけではありません。不法滞在の外国人も実習生も見た目に大きな違いはなく、一般市民が“フホー”かどうかを見分けるのはまず不可能です」
4月9日発売の「週刊新潮」では、賛否が渦巻く茨城県の「1万円通報制度」や、台頭する中国人農家について、詳しい現地レポートを掲載する。
「週刊新潮」2026年4月16日号 掲載
