ブレイク「宇多田ヒカル」ものまねへの思い ミラクルひかるが絶やさないように願うもの
第1回【「俵孝太郎」に始まり「トシちゃん」で目覚めた… ミラクルひかるが「ものまね人生」を語る】のつづき
ものまねタレントのミラクルひかる(45)を語るとき、宇多田ヒカルの名は外せない。宇多田がデビューした1998年の翌年に上京したミラクルは、美容師見習いをやっていた頃から宇多田のものまねを、往来で披露していた。あの誰もが絶賛するものまねは、いかにしてできあがったのか。
(全2回の第2回)
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カセットテープで近づけた宇多田の声
美容師見習い時代に、客引きのために表参道の路上で、宇多田の曲をものまねで歌っていたという。美容師をやめて一時地元に帰っていた頃も、「宇多田」を完成させるべく、練習を続けていた。

「そこで宇多田さんを試せたのは良かったですね。美容師を辞めたのは精神的にボロボロになっていたからなんですが、地元に帰ったときに、宇多田さんのものまねを何とか完成させてやろうと。完成させることで精神を保ったというか。完成させないと自分がおかしくなってしまいそうだったので、毎日毎日練習していましたね」
バイトもしながら、その合間を利用して、宇多田ものまねの歌をカセットテープに録音。聴きたいところをすぐ巻き戻せるように、録音時間の短い10分テープを使い、擦り切れるほど聞いて徐々に近づけていった。親の影響で、子供のころから聴いていたのは洋楽で、19歳頃にはエリカ・バドゥやジャミロクワイらの音楽にハマった。日本のアーティストで初めてファンになったのが宇多田だったという。
「まあ、もともと顔は似てたと思います。(宇多田は)私より年下で、高校の後輩から『すごい似てるアーティストが出てきましたね』と連絡をもらって、そこから聴くようになって。それまで日本人のアーティストでそんなに興味を持った人がいなかったんですよね」
2007年には「HEY!HEY!HEY! MUSIC CHAMP」(フジテレビ系)で宇多田本人と共演し、「traveling」を一緒に歌った。宇多田本人からも「似すぎ」と評されるほどだったが、ミラクルは「緊張しすぎて覚えてないですね。重みがありすぎて」と振り返る。
「ものまね紅白歌合戦」でも絶賛
25歳になる直前には「爆笑そっくりものまね紅白歌合戦スペシャル」(フジテレビ系)に初出演した。最初に披露したのは「First Love」。その後の出演でも「Automatic」「Can You Keep A Secret?」「SAKURAドロップス」「traveling」と宇多田のものまねが続き、2010年頃までは大半が宇多田のものまねでの出演だった。
それによってミラクルのアイデンティティも確立されていたが、2011年からは浅野温子、新田恵利、YOU、JUJU、UAらのものまねを「ものまね紅白歌合戦」で披露し、次第に本領を発揮してきた感がある。
「宇多田さんをやってた2〜3年で、自分の“貫通力”を発揮したというか。それ以外のネタは、こう言うのもどうかと思うんですけれど、プラスアルファなんですよ。宇多田さんを完成させるのには2年かかりましたけど、『ものまね紅白』に出ようとしたら、早くネタを作らないと出られないんです。(宇多田のものまねを完成させたことで)パパっとものまねのコツをつかんだというか。もともと1個のネタに時間がかかるタイプだったんですけど、表現の訓練ができたので。自分でゼロから考えるのは大変で、さらにそこから訓練して、自分の癖を消して、というようにやっていたら20年経ったわけですよね。ものまねは人によって研究の仕方も違うし、年齢によって聞こえ方も変わってくるので表現の仕方も変わります。奥が深いですよね」
いろんな人のものまねに挑戦してきたが、難しさはないのか。
「難しいですが、無理だと思うと絶対に無理なんです。でもできると思えばどこかに突破口がある。私が一番嫌いなのは、『この人は個性がないから(ものまねするのは)無理でしょ』って言われることなんです。そういう言葉には、『お前が決めてんじゃねぇよ!』と思っちゃいますね。やるのは私なんだから。長澤まさみさんやったときもそうだし。だからどのものまねが1番かは、宇多田さんは別格として、順位付けはないんです。自分の中では全部1番。それは聞くお客さんが決めること」
ものまねネタのあれこれ
どれが1番かは別として、自身で好きなものまねはある。宇多田以外を聞くと、研ナオコだという。鼻にテープを貼った”テープ芸”を最初に披露した清水アキラから、こだわりのテープを受け継いだという。
笠置シヅ子の「東京ブギウギ」は、NHK朝の連続テレビ小説「ブギウギ」よりはるか前、2013年秋の「ものまね紅白歌合戦」で歌った。
「ああいうネタは、プロデューサーにノーと言われればテレビではできないわけですよ。たまたまあの時は70代のプロデューサーだったんですが、『お、いいね〜』と言ってもらえて。最初はまじめに表現するものまねの“枠”でやらせてもらっていましたからね。長年、『宇多田以外やるな』と言われてきましたけどね(苦笑)。ふざけた感じのものまねができるようになったのは、私の中では最近ですよ」
ゲスト出演するタレントの絡みで、プロデューサーのオーダーによる「案件」と呼ばれるものまねを披露することもある。「ものまね紅白歌合戦」で何度か披露した新田恵利の「冬のオペラグラス」も最初は案件だった。
「私、おニャン子クラブの詳しいことは知らなかったんですよ。ジャニーズだったら分かるんですけど、女の子だったんで、興味がそっちに行ってなかった。でも、そのネタの目線をくれてありがとうと思いました。怖いもので、2時間で完成したんです。2年かけてできた宇多田さんのものまねを『似てねぇよ』といった大プロデューサーが『お前の人生で一番似てるよ』って言って。まあ、私は時間をかけたもののほうが評価されると信じてますけどね」
ミラクルひかるのものまね論
最近は、いかに似せるかが主流となっているものまね界で、一部の芸人を除くと、いわゆる「ふざけたものまね」の数は減少していると言えるだろう。
「ものまねされる人が嫌な思いをして、本当に怒り出したら、私たちは仕事ができなくなる。若い世代はそういう(ふざける)ものまねはしたくないから、しないんです。私も若い頃はそうでした。今はふざけたものまねをさせてもらえるようになっていますが、若い人の中でふざけるものまねをやりたい人は、とうにいなくなってますね」
ルッキズムなどもあり、人のルックスや喋り方をいじって笑いを取る時代でなくなっていることは確かだ。
「ただ、私はぎりぎりの線をついて、ふざけるものまねの灯を絶やさないようにしようと思います。何かつらいことを抱えてる人が、それを見て元気になってほしい。強い人の癖などをものまねして、弱い人に笑ってもらう。有名人のものまねをできることは幸せな社会ですしね」
これからのミラクルのものまねは
今夏、声が出ずに仕事ができない状況におちいった。ものまねタレントの荒牧陽子に紹介された病院を受診したところ、声帯にかさぶた状のものができていたという。涙を流しながら鼻うがいをするなどして、2週間程度で治癒したが、喉の大切さを思い知らされた。
「アスリートのような肉体を酷使する仕事とは別物と思っていましたが、ものまね芸人にとって喉は消耗品だと改めて気付かされましたね。いろんな声色で喉のさまざまな部分を使うので、意外に長持ちするんですけどね」
2023年にひとつの目標だった出産を経験。現状、掲げている目標は何もないという。
「目標がないってこんなにつまんないんですかね(苦笑)。まあそれでも、やりたいネタのメモは溜まっていっていますからね。世に蠢く変な人たちのものまねをする。それが今考えている使命ですかね(笑)」
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第1回【「俵孝太郎」に始まり「トシちゃん」で目覚めた… ミラクルひかるが「ものまね人生」を語る】では、ものまねに目覚めた幼少期から、美容師で精神的にボロボロになった暗黒時代、芸能界デビューに至るまでを語っている。
デイリー新潮編集部
