「遅刻横行」「新入生は練習禁止」…かつての神村学園を変えた小田監督が語った指揮官の矜持【2026年春のセンバツ 監督突撃インタビュー】
小田大介監督(神村学園/43歳)
25日は初戦で優勝候補の一角である横浜(神奈川)を倒した神村学園(鹿児島)が智弁学園(奈良)と対戦する。チームを率いる小田監督は2013年7月に就任。当初は「子どもたちの遅刻は当たり前だった」と話す同監督を直撃した。
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──初戦で強敵の横浜を破りました。
「息つく暇もない試合展開でした。ただ、DHを使ったおかげで、先発の龍頭(3年)が力を発揮してくれた。打席に入ると、どうしてもマウンドのことがおろそかになりやすいですから」
──小田監督が就任した当初の野球部は、雰囲気が緩かったそうですね。
「就任前から野球部関係の方から『こんな感じのチームです』と言われ、えっ? と驚きました。実際に練習に遅刻する子もいて、部員も『これが当たり前なんで』という感じだったんです。それでいて、新入生は入部してしばらくはボール拾いなどの雑用ばかりで、練習禁止なんてルールもあった。すぐに『1年生も練習しろ!』と言いましたよ」
──どのようにチームを強化していったのですか?
「僕は2つの『目』を大事にしています。ひとつは『目標』。甲子園に出たいとか優勝したいとか、プロ野球選手になりたい、などですね。これはしっかり設定しなければいけない。そして『目的』です。野球をする最大の目的は人間形成、そのために必要なのが日常生活をおろそかにしないことです。長嶋茂雄さんが以前、『野球とは人生そのもの』と話していたことがあった。僕も若い時は『何のことだよ』と思っていましたが、色々と本を読んだり学んだりすると、『野球は日常生活が出るスポーツ』と気付いたんです。グラウンドは日常生活を映す鏡。監督の目は誤魔化せても、プレーは誤魔化せない」
──具体的にどういうことですか?
「野球は直感が大事じゃないですか。例えば、風向きが変わったことに気付けば、守備位置を変えられる。相手の普段とは違う動作に気付いたら、何かサインが出ているのでは、仕掛けてくるのではとピーンときて、警戒もできる。こうしたことは日常生活で五感を大事にし、養ってこそ磨かれる。だから日ごろから当たり前のことを当たり前にやる。(帽子の横の刺繍を見せて)ここにも凡事徹底って書いてあるでしょ? これが就任当初から貫いている僕の信念です。まあ、理屈で説明するのは難しいですが……」
──以前、一軍の練習試合中、二軍の選手たちを説教していたこともあったそうですね。
「そういえば、そんな記憶もありますね。誰かに何かを伝えることは、言うタイミングも大事なんです。その時、その場でなくては意味がないこともある。たとえ試合中でも、です。でも、その時は一軍をほったらかしにしていたわけじゃありませんよ。試合も大事なので、そっちも見ながら『お前、何やってんだ!』と声を飛ばして、二軍のこっちも注意しつつ……。そんな感じだったのを覚えていますね」
──それでも中には「野球さえ上手ければ日常生活なんて……」という子もいませんか?
「いますけど、それで社会に出て一番困るのは自分です。卒業して5年10年経って、『監督が言っていたのはこれか』と気付いてくれたら、それでもいい。それが僕の仕事でもある。もちろん、今気付くのが一番ですけど、僕だって学生時代は日常生活の大切さなどは理解していませんでしたからね」
──厳しい監督と言われませんか?
「(通りがかった部員に)おい、監督厳しいか?」
部員「はい、愛のある厳しさだと思います」
「よう言うわ(笑)。できた回答やなあ。いい回答ありがとう(笑)。でも、実際厳しいと思いますよ。誰でもそう言うと思います。当たり前のことを当たり前にやらないことには厳しくします」
──練習時間も相当長いのでは?
「午後3時過ぎから、3時間くらいですね。それから食事、点呼、掃除。夜の8時過ぎから9時半くらいまで夜間の課題練習をします」
──課題練習とは。
「自分で自分の今やらなくてはいけないことを探し出し、その練習をする。だから全員、練習内容は違います。僕やコーチは基本、あれをやれと指示はしません。自分で自分をコーチングし、課題を与えることが大切なんです。重要なのは自主性と主体性。自主性とは『誰かに言われてから、自分で考えること』で、主体性は『誰かに言われなくても、自分で考えてやること』です。中には楽なことや、自分がしたい練習をする子もいます。でも、それは自分勝手。厳しく指導してくれる人が減った現代だからこそ、自分で考えて動き、自分で自分に厳しくする必要がある」
──見当違いの練習をする子にはどう対応するのですか?
「例えば明らかに守備が課題なのに打撃練習をする子には『なんでその練習をしているの?』と聞きます。向こうも色々と理由を言ってきますが、『でも、今日も守備ができなかったよな?』と。そうやってある程度は誘導し、また1週間ほど黙って様子を見ます」
(聞き手=阿川大/日刊ゲンダイ)
