【政界】歴史的勝利を収めた高市早苗首相 「重い責任」を背負う中で求められる覚悟と手腕
もうひとつの争点封じは外国人政策だ。国内の在留外国人は2025年6月末時点で約396万人となり、日本の総人口の3%を占める。外国人労働者数も約257万人(25年10月末)で、過去最多を記録。25年の訪日外国人旅行者数は約4268万人となり、初めて4000万人を突破した。
各地で外国人との摩擦も起き、国民の中に漠然とした不安が広がりつつある。先の参院選では「日本人ファースト」を掲げ、不法滞在の取り締まり強化などを訴えた参政党が躍進した。自民党支持層の一部が参政党支持に流れたとされ、自民党にとって今回の衆院選でも、その流れが止まらなければダメージは大きかったはずだ。
そのため、衆院選公示を目前に控えた1月23日、政府は外国人政策を検討する関係閣僚会議で、今後の基本方針を決定した。土地取得規制のルールを設け、在留管理を厳格化することなどで、国民と外国人が「共に繁栄する社会」を目指すとした。外国人が日本語や社会慣習を学ぶプログラムや、就学前の子供たちに日本語学習の機会を設ける共生策も盛り込んだ。
参政党は衆院選で労働力不足に関して「安易に外国人に委ねるべきではない」などと外国人政策の見直しを訴えた。日本保守党なども「移民」問題の是正を主張した。だが、政府・与党が外国人政策を打ち出していることから、大きな争点にはならなかった。
そうして争点を封じた高市は「高市早苗が首相でよいのかどうかを主権者たる国民の皆様に決めていただく」として日本のリーダー選びの選挙戦に持ち込んだ。野党の関係者は「首相のポジティブワードは相当練られていた。前向きなワードを繰り出す女性リーダーだと国民は受け止めたはずだ」と振り返った。
カギを握る国民会議
そうして圧勝した高市は、封印した重要政策の具体化を急ぐことになる。
2年間に限った食料品消費税ゼロは26年度中の実現を目指して関連法案を今秋の臨時国会にも提出する構えだ。ただ、衆院選公約で消費税減税を掲げなかったチームみらいが11議席を獲得したことは、財源があいまいなまま減税して大丈夫なのかという国民の「受け皿」になったといえる。
自民党内にも反対論は根強くあり、今後、財政規律を重視する財務省とともに巻き返してくる可能性がある。
そうした中で、カギを握るのが、政府や与野党、有識者で構成する「国民会議」だ。近く設置され、5兆円規模になる消費税減税の財源論などを協議する。
これまで高市は財源について「特例公債(赤字国債)発行に頼ることはしない」と明言し、「補助金や租税特別措置の見直し、税外収入などにより財源を確保した上で、できるだけ早く実現できるように知恵を絞る」としてきた。
また、国民会議では実現に向け、レジ設定の変更や会計システムの改修といった事業者負担の在り方や、店内飲食は10%のままとなることから外食業界への影響といったことも検討される。
さらに、高市は「〝本丸〟は給付付き税額控除。食料品消費税率ゼロから給付付き税額控除への移行を見据え、検討を進める」と語っており、中低所得者の負担軽減や格差是正に向けた給付付き税額控除の議論も行われる。
国民会議でそうした課題をクリアさせ、実行に移すことができなければ、財政規律に対する信頼が失墜し、さらなる金利や物価の高騰を招きかねない。議論を主導する高市のリーダーシップが問われることになる。
消費税減税や外国人政策だけではない。高市は「国論を二分するような大胆な政策や改革に果敢に挑戦していくために国民の信任が必要だ」と訴え、26年度予算の年度内成立を先送りしてまで世論の後押しを得ようとした政策の実現にも意欲を見せる。
