物価高で50代夫が経営するラーメン店が傾き始めた。外資系アパレルでバリバリ働く40代妻の奮闘でそれまでは月8万円の貯金ができたが、一気に赤字家計に転落。小学生の子供2人と夫を食わせなければと知恵を絞った妻がFPの横山光昭さんの助言を得て実践した効果てきめんな節約術とは――。

■家事育児のみならず家計も妻のワンオペ

今回ご紹介するケースは、夫婦で完全別財布、それもほぼ妻のお財布で一家をきりもりしている、4人家族の例です。

ご相談に見えたのは、家計の9割以上をまかなっている会社員・金森啓子さん(仮名・43歳)。外資系アパレルのマネージャー職でバリバリ働く、小学生の子2人(長男12歳・長女10歳)を育てる母です。

啓子さんの夫・守夫さん(仮名・55歳)は、こだわりのスープと麺が売りのラーメン店を経営する個人事業主。週6日は深夜まで自身の店で働き、ほぼ自宅にいない生活のため、水道光熱費や食費、日用品などの生活費は、基本的に啓子さんが出しています。夫婦で折半するのは賃貸マンションの家賃のみ(一人9万円、合計18万円)。4人暮らしとはいえ、母子3人暮らしに近いのが実態です。

写真=iStock.com/Quentin Tournier
※写真はイメージです - 写真=iStock.com/Quentin Tournier

少し前までは、こうしたやり方でも家計は好調でした。啓子さんは月の手取りが49万円と高く、さらに夫の事業の売り上げに応じて娯楽費や貯蓄用に5万円〜10万円程度の入金があったため、月の支出は50万円を超えながらも家計は黒字をキープ。月3万〜8万円程度の貯蓄ができており、相談時の貯蓄額は約1000万円でした。

ところが――。

「ここ数年の物価高で、夫のラーメン店の経費負担が重くなり、経営がどんどん苦しくなってきたそうです。それで家に入れてくれるお金は家賃9万円だけになり、家計は毎月2万円以上の赤字に転落してしまいました。今は貯蓄ができないどころか、毎月2万円を定期預金から取り崩しています」

こう、打ち明けてくれた啓子さん。

「今後、夫の事業が上向きになる保証もないので、夫からの入金はないものとして家計管理をしたい。その目安として、どの費目をどのくらい下げたらよいか、教えていただけませんか?」と、相談に来られたのです。

■「有機栽培」「こだわり」中心の食費は月14万円超

そこで家計内訳を拝見すると、「無駄遣いはしていないはず」とおっしゃるものの、ある費目が突出して高くなっていました。

月14万2000円の食費です。昨今の物価高を鑑みても、小学生2人のお子さんとほぼ3人で14万円超は、多いほうです。

聞くと、外食はほとんどしておらず、基本的に自炊。一般的には外食より自炊の方が節約できますが、啓子さんの家計は例外でした。というのも、食材一つ一つがやや高めなのです。

啓子さんは有機栽培の食材宅配を利用しており、例えば食パンは、スーパーで買えば1斤200円程度のものを、1斤500円程度のこだわり食パンをチョイス。子供のおやつも、100円台の菓子パンやスナック菓子ではなく、数百円のドライフルーツや果物、ナッツなどを買っています。容易なことではありませんが、食への思いを変えることができれば、食費は2分の1には抑えられるはずです。

昨今の物価上昇も見逃せません。ここ数年で、消費者物価指数は上昇を続け、総務省による2025年10月の消費者物価指数は、2020年を100とすると2025年9月は112(変動の大きい生鮮食品を除く総合)にUP。中でも、チョコレートは前年比50.9%、米類は前年比49.2%、鶏卵は前年比15.2%、コーヒー豆にいたっては前年比64.1%です。体感値として、ここ数年で物価は2割増しになったといってもいいでしょう。

「今まで4000円の買い物で済んでいたのが今では6000〜7000円になった感覚」という声もよく聞かれます。当然ながら、今までと同じ使い方をして赤字に転落した家計を目にする機会は急激に増えました。啓子さんの家計もその一つ。夫からの入金が激減した状態で、メリハリをつけず全てにおいて「ちょっとお高め」のものを買っていればなおのこと、赤字は加速します。

■食費は予算を決め、献立をつくる

赤字の要因が見えてきたところで、改善目標を定めました。啓子さんの収入(月49万円)だけで黒字化すべく、まず食費予算を「9万円」に設定。5万円以上も食費を削ることはできるのか? 長年の食へのこだわりを簡単に捨てることができるのか? 啓子さんは不安な面持ちでしたが、結論として、予算9万円への大幅カットは実現しました。

そのために啓子さんが取り組んだことは、以下の通り。

・一週間で固定メニューを決めてルーティーン化

9万円を4週で割ると、週の予算は2万2500円です。その中に調味料やお米、必要に迫られた外食も入りますから、意外と予算は厳しめ。そこで、例えば月曜日のメインは肉料理、火曜日は魚料理、水曜日はカレー、木曜日は丼、週末は残りものでお鍋やチャーハン、というように一週間のメニューを固定化し、1週間で最低限必要な食材を一定に。

すると、「今日は特売だから」と無計画に食材を買ってしまい、結果、予算オーバーということを防ぐことができます。また、「予算>こだわり」と優先順位をつけることで、食材へのこだわりもメリハリをつけられるようになったそうです。

・食材は八百屋を活用

食材は宅配業者の利用を止めて、庶民的なスーパーや八百屋を活用。

「最寄り駅の近くにあった八百屋さんに入ってみたら、新鮮でいい野菜がいっぱい。それも安価で、時にはかぶの葉などの端切れ野菜を無料で放出していることもあるんですよ」と嬉しそうに報告してくれました。

・ふるさと納税の返礼品は必需品に限定

ふるさと納税の返礼品は、ブランド和牛などの「あるといいもの」ではなく、お米など「ないと絶対に困るもの」に絞りました。

以上を実践し、週の予算が残れば、プラスαで食べたいものやちょっとお高めのものを買って、節約のモチベーションを維持。「キャベツや白菜が先週より100円ずつ高かった」などの価格変動があれば、他の買いたいものは諦める。すると、少しずつうまく回るようになったと話してくれました。

■日用品はアマゾン「あとで買う」機能を活用

衣類や美容品は、4万円から2万円へと支出を削減しました。

「例えばメイク用品は、これまでデパ地下の化粧品を買っていたけれど、韓国コスメならその半値以下でクオリティの高いモノが買えることが分かりました。八百屋の新鮮野菜と同じで、視野を広げていくと、安くてもいいものの存在に気づけるようになりました」(啓子さん)

日用品に関しては、Amazonで買う時は、カートに商品を入れた後、「あとで買う」設定に変更。

一晩、二晩寝かせておいて、カートに入れたことを忘れているようなら「今すぐ買う必要はない」と判断し、買わない。「クールダウン」期間をおくことで衝動買いが減り、月の日用品の支出は2万5000円から1万5000円に減り、1万円をカットできました。

写真=iStock.com/leminuit
※写真はイメージです - 写真=iStock.com/leminuit

総じて、51万1000円だった支出が42万4000円になり、8万7000円もの支出削減が実現。アフターの収支差額は、2万1000円の赤字から、6万6000円の黒字になり、夫が住宅費(折半で1人9万円)以外の生活費を入れなくても生活できるようになったのです。

今、総支出額が下がり約42万円に落ちついていますが、さらに40万円へと下げることを目指しています。そうすると、収支の差額が9万円になり、夫から折半家賃9万円の入金が叶わなくなっても収支はトントンに。極端に言えば、夫がいなくても完全に自活できる家計に整います。

■大黒柱も先細りになる可能性

ただ、啓子さんの勤務先も経営が思わしくなく年々ボーナスが減少していると伺いました。収入を増やせないなら、支出をさらに削るか、投資をして資産を増やすことを検討すべき。前者は実践済みなので、1000万円ほどある貯蓄の中から、生活防衛資金(月の支出42万4000円×7.5カ月分=318万円)を除いた約700万円から、毎月10万円ずつ積み立て投資をしていくのもいいでしょう。むしろインフレが進む今だからこそ、積極的に運用したいものです。

■万一に備えて財布の共有も視野に

啓子さんには、もう一つ重大な課題があります。

これまでパートナーの自営業と家計は完全に切り離したいという考えから、結婚以来「夫婦完全別財布」を貫いていました。既述の通り、住居費だけ折半にするルールは設けましたが、生活費の入金は前提になっていません。

「プラスが出たら還元してくれるとうれしい。でも、マイナスの時は家の貯金に手を出さないで。それさえ守ってくれればお好きにどうぞ。私が稼いでくるから」というスタンスです。啓子さん夫婦は円満のようですが、それはお互い干渉せず、好きなことをしているのも大きな要因なのでしょう。

ただ、啓子さんの収入一本柱では、リスクが高すぎます。万一、啓子さんが働けなくなったら。また、今後夫の事業が倒産して借金だけが残った場合、「家計とは関係ないから」と放っておくことはできるのでしょうか。

万一の時に危機を乗り越えられるよう、今から少しずつ家計をオープンにして、力を合わせられる態勢を整えてほしいと思います。

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横山 光昭(よこやま・みつあき)
家計再生コンサルタント、株式会社マイエフピー代表
お金の使い方そのものを改善する独自の家計再生プログラムで、家計の確実な再生をめざし、個別の相談・指導に高い評価を受けている。これまでの相談件数は2万6000件を突破。書籍・雑誌への執筆、講演も多数。著書は90万部を超える『はじめての人のための3000円投資生活』(アスコム)や『年収200万円からの貯金生活宣言』(ディスカヴァー・トゥエンティワン)を代表作とし、著作は171冊、累計380万部となる。
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桜田 容子ライター
明治学院大学法学部を卒業後、男性向け週刊誌、女性向け週刊誌などで取材執筆活動を続け、気付けばライター歴十数年目に突入。にもかかわらず、外見は全然ライターっぽく見られない。趣味はエアロビとロックンロールと花見など。
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(家計再生コンサルタント、株式会社マイエフピー代表 横山 光昭、ライター 桜田 容子)