『冬のさ春のね』細田佳央太が“恋愛”の難しさの象徴に “終わり”から知る大事なこと
2月11日に放送された『冬のなんかさ、春のなんかね』(日本テレビ系)第5話。久々に冒頭シーンからゆきお(成田凌)が登場し、文菜(杉咲花)と2人でピクニックを楽しむ様子が描かれたのだが、そんな“現在”の時間軸は冒頭とラストだけ。
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物語の大半は、またしても文菜の過去――前回のエピソードでは小説家になるきっかけとなった二胡(胗俊太郎)との出会いと別れが描かれていたが、今回はそれよりも1年前、文菜が大学3年生だった時代へと遡ることとなる。
そこで登場する、すなわち現在の文菜がふと思い出すことになるのは、大学の同級生であった佃(細田佳央太)のこと。休講の教室に呼び出されての告白、佃が文菜に好意を抱くきっかけがちょっとした勘違いだったこと(ちなみにその時文菜が読んでいたのは、後に彼女と曖昧な関係になる山田の作品だった)。友人のエンちゃん(野内まる)に悩みを相談したり、告白の返事を保留にしたままデートを重ねたり、そうした大学生らしい穏やかな恋愛模様が描かれていく。物語運びの方法論としては前回とほぼ同じはずなのだが、見え方、というか根底にある何かが確実に異なっている(それは演出が前回までの山下敦弘から今泉力哉に戻ったからだけではないだろう)。
それはやはり、文菜の恋愛に対する姿勢の違いであろう。現在の時間軸においては“人を好きになる”ということへの疑問を抱き、思案をめぐらせつづけている彼女が、この時点ではまだ、限りなく恋愛というものに対して、ある種の憧れに近いものを持っていることが、学食での真樹(志田彩良)との会話から窺える。そう考えると、第3話で高校時代の恋愛の終わりが回想を用いることなく“思い出話”として触れられたこと、時間軸としては今回よりも後の話が第4話で回想として描かれたことの理由がなんとなく見えてくる。
加えて、前回の二胡との関係の回想は出会い・付き合い始める日・別れの日だけが淡々とよみがえってきていたのに対し、今回の佃との関係は期間が短いなりにもっと些細な、コンビニでのやり取りなど彼との日常のディテールにも触れられている。そして付き合いはじめてまもない動物園デートで佃があくびをしていたこと、文菜の手作りのお弁当を食べた佃が涙を浮かべたこと。相手の挙動や感情を当時の文菜は確かに見て記憶している。二胡と別れる日のライブハウスで文菜がほんのりと涙ぐんだこととはまるで対照的に映る。
こうした点から考えるに、この佃との恋愛が、現在の文菜の恋愛に対する模索の入口となったことは間違いないのだろう。彼女自身にとってターニングポイントといえる恋愛。平穏で安心感のある関係のなかに生じる、ほんの些細な綻び。佃に象徴される“優しさ”と、わがままで相手に迷惑をかけざるを得ない“恋愛”とのミスマッチ。それが現在の文菜のそばにいる“優しさ”=ゆきおに重ねられた時、またしても(第2話での椅子のくだりに続いて)2人の関係がそう遠くなく終わってしまうことを予感させる。いずれにせよ、佃のあくびの真相も然り、多くの大事なことというのは終わりを迎えてから初めて知るものなのである。
(文=久保田和馬)
